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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
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不急の物品を購入したもの


(29)−(37) 不急の物品を購入したもの

(昭和27年度) (組織)保安庁 (項)警察予備隊費

(組織)保安庁 (項)保安庁

 保安庁における物資器材の調達にあたっては、その規格、仕様、数量等は技術担当各課で決定し、その調達要求によって調達担当部局が価格の算定、契約購入の処理を実施することとなっているが、その結果をみると、不急と認められるものを購入した事例が見受けられる。不急品の購入についてのおもな原因は、保安隊には米国軍に範を採った編成装備表があり、部隊の要員、装備器材は右装備表の定数に従って充足し、さらに、その定数を耐用年限数で除した数を毎年更新補充分として調達することとしているが、部隊の現況または実際の必要度等をは握しないでただ右定数表だけによって数量を決定している傾向があり、結局、実情に遊離して購入が行われることがあるものと認められる。購入関係の直接の責任は調達担当部局にあるが、要求された品目・数量等についての必要度、緩急度等をは握するためには全国各部隊にわたっての在庫状況、実際の耐久力、操作要員の教育進行度、施設の整備状況等が当然考慮されなくてはならないのであるが、これらの点については、制度上からも、また、実際上からも要求各課において常時十分検討することができる立場にあるのであるから、その間の連絡を密にし、予算消化を考慮に入れて不急のものを購入するような弊に陥らないように適正な予算執行が望ましい。
 ことに、貯蔵設備倉庫等は一般にきわめて不完全で、電池類のような減耗品はもとより器材類にあっても長期保管は相当困難を伴うと認められるものもあり、また、車両建設機械類にあっては屋外に保管している状況であるから余剰品の購入には十分注意の要がある。

(部隊の実際の編成状況と無関係に有線作業車を購入したもの)

(29)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年12月、いすゞ自動車株式会社に2 トン有線作業車「JV−17−MTQ」6両(単価2,972,000円)を17,832,000円で製作させて購入したものがあるが、実際に編成されている部隊の必要定数は既に充足されており、また、予備分も保有していたのであるから購入の必要がなかったものと認められる。
 本件有線作業車についてはその保有定数を方面通信大隊および通信構成大隊(各大隊3個中隊編成)の分を1個中隊9両として各27両、ほかに通信運用大隊4両、予備2両計60両として27年度までに全数量を購入契約し、その更新分として前記のように6両を新たに購入したものであるが、通信構成大隊の分については、実際の編成は3個中隊でなく2個中隊であるから18両で足り、所要総数は51両となり、購入済の60両に対し9両の余剰が生ずる結果となっている。
 したがって、更新用として5両または6両を要するとしてもなお余裕があるのに、実際の編成状況を考慮しないで単に保有数60両について更新分6両を要するものとして本件購入を行なったのは当を得ない。

(工具の用途を確認しないで必要のないものを購入したもの)

(30)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年3月、東京通信工材株式会社から拡声装置「GR−3−A GR−3−B」のリレー調整用に使用するため調整工具「JTE−37」700組(弾条調整器ほか10点単価7,450円)を5,215,000円で購入したものがあるが、拡声装置の購入計画はなく、結局使用されないまま保管されている。
 右は、編成装備表に基き、調整工具「JTE−38」を購入する意図であったが、その仕様書を入手することができず、単に拡声装置のリレー調整に使用するものであると誤解し、その代用工具として前記のものを購入したというのであるが、拡声装置は編成装備表定数になく、したがってその購入計画もないものであって、本件調整工具だけを購入する必要はなかったものである。

(内容品の重複した有線作業車塔載用工具セットを購入したもの。)

(31)  保安庁第一幕僚監部で、昭和29年1月、株式会社京三製作所に有線作業車(2 トン)塔載用として組合せ部品60組(単価587,756円)を35,265,360円で製作させて購入したものがあるが、購入にあたり内容品の検討が不十分であったため内容部品の約半数(約720万円分)が既に購入済の右有線作業車付属の有線工具「JTE−87A」の内容部品と重複した結果となっている。
 本件塔載用組合せ部品は、編成装備定数に基く通信部隊用有線作業車に1組ずつを塔載し、通信線の架設撤収作業に使用するものとして購入したものであるが、右有線作業車の塔載工具としては、同じ用途に供する目的で先に28年12月株式会社大道製作所から68組(単価169,900円)を11,553,200円で購入した有線工具「JTE−87A」が各車両に付属品として備え付けられており、その内容部品を本件購入品と対比すると、半田付セット「JTE−26」ほか25品目約720万円のものは全く同一規格のものであって、右車両の塔載用としては重複購入となっている。

(更新用として必要のない絡車を購入したもの)

(32)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年10月、株式会社京三製作所から通信線巻取用絡車「JDR−4」128個(単価5,280円)を675,840円で更新用として購入したものがあるが、その保有数量等からみて購入の必要はなかったものである。
 本件絡車は、通信線「JW−110B」、「JW−130」の巻取用に使用するものであるが、右通信線は在庫限りとして新規購入はしないこととし、既に同年8月から別規格の絡車を使用する通信線の「JWD−1/TT」の購入を開始しているばかりでなく、通信線「JW−110B」、「JW−130」に対する絡車の装備定数は27年度に購入済で、通信線より絡車の耐用命数が長い状況からみても更新用として更に購入する必要はなかったものと認められる。
 現に、29年8月立川通信補給処には前年度購入分も含めて282個が在庫となっている。

(部隊の使用状況と無関係に対空布板を購入したもの)

(33)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年11月、東洋ゴム工業株式会社に対空布板「JAP−50」1,927枚を12,429,150円で製作させて購入したものがあるが、本品の使用状況からみてその調達数量は過大に失しているものと認められる。
 本品は、野外において対空信号用として使用されるもので、11万名編成における定数は4,787枚でうち4,656枚は27年度までに購入されており、28年度においてはその定数の不足分131枚と28年度更新分898枚および29年度更新分898枚を合わせて計1,927枚を購入したものであるが、本品を使用する訓練の実施に関しては、その要綱を29年8月本院会計実地検査当時起案している状況にすぎないものであって、実際部隊においてひん繁に訓練用として使用しているものでもない実情からみれば、少なくとも29年度更新分(5,792,100円相当額)までも含めて購入する必要はなかったものと認められる。
 なお、右対空布板については7万5000名の編成当時から既に部隊の整備定数を超過して調達していた関係もあり、本院において注意を促しておいたところである。

(減耗する乾電池を年度末に一時に大量購入したもの)

(34)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年1月および2月、東京電気化学工業株式会社ほか3会社から、3月末保安隊通信補給しょうおよび各地区補給しょう納めとして積層乾電池「JBA−38」50,000個を52,000,000円で購入しているが、乾電池のような減耗性のあるものを一時に大量購入したため自然減耗による多額の損失をきたしているばかりでなく、使用不能となっているものも少なくない。
 右乾電池は、軽無線機「JSCR−536」の電源に使用するため購入したものであるが、製造後3箇月で75%、6箇月で56%に自然減耗するものであって、このように減耗率の高いものの購入にあたっては、特に慎重にその数量を決定すべきものであるのに、所要量の計算資料も十分整わないまま年度末に予算消化を急ぎ、6箇月分の予定で50,000個を調達したものであるが、その後の実績からみると、ほぼ1箇年分の所要量に相当するものであって、有効期間の経過後もなお相当多量のものを保有することとなり、この結果、同年10月、通信補給しょうだけについてみても在庫全数量5,998個のうち3,030個(3,151,200円相当額)が使用不能となっている。このうち2,808個は納入業者に無償で交換させたが、その後12月に至り在庫量1,776個のうち1,648個(1,713,920円相当額)のものは廃案処分するに至っている。

(使用者の員数と無関係に歯科治療セット等を購入したもの)

(35)  保安庁第一幕僚監部で、昭和29年2月、ホマレ貿易株式会社に野外歯科治療セット16組を2,996,800円で、また、28年8月から29年1月までの間に、藤本医療産業株式会社に救急歯科医療のう52個を464,710円でそれぞれ製作させて購入したものがあるが、購入にあたり、これを使用すべき医官の定員等を考慮した適正保有量について十分の検討をすることなく編成装備表の定数をそのまま購入に移したため、多量の不急品を保有する結果となっている。

(1) 本件歯科治療セットは、出動等の場合歯科医官が歯科治療に使用する資材類を1セットにまとめたもので歯科医官1名に1セットを装備するものであり、歯科医官の定員が56名であるところからすればそのセットの定数は56組で足りるのに、医官の定員と本品装備定数との不一致に注意することなく米国軍から示された装備定数をそのまま採って96組とし、既に27年度までに100組を購入済であり、また、本件器材はその目的用途からみても平素はまず使用することなく減耗はないのに、更に16組を更新分として購入したのは当を得ない。

(2) 本件救急歯科医療のうは出勤等の場合歯科班員1名が1個を使用するもので、歯科班員の定員が120名であるところからすれば本医療のうの定数は120個で足りるのに、前例の医療セット同様その定数を歯科班員数と一致しない192個とし、27年度までに180個を購入済であるのに、更に28年度中にこれらの更新等を理由として前記52個を464,710円で購入したものであるが、本品も常時はその消耗はまず考えられないから更に購入する必要はなかったものである。

(設置すべき建物も定まっていないのに馬力測定装置だけを購入したもの)

(36)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年3月、東西交易株式会社ほか1会社から航空発動機用の馬力測定装置を6,650,000円で購入し、現品は8月および10月保安隊武器学校に納入されたが、設置建物も定まっていないまま購入したため、29年10月末に至るもなおこん包のまま保管されている。

(設置すべき火器修理工場が定まらないのに一部の器具類だけを購入したもの)

(37)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年3月、山勝工業株式会社から、鍜造熱処理器具1組を1,800,000円で購入し、現品は6月武器補給しょうに納入されたが、関係設備も整わず、設置箇所も定まらないまま購入したため、29年8月末に至るもなおこん包のまま保管されている。
 右は、武器修理用として、武器補給しょうの火器修理工場で使用するものとして購入したものであるが、その内容品は、レバーシャー、切断機、折曲機、曲ロール機、火床用電動送風機等板金作業向のものであって、このような設備を要する程度の火器類の修理の実施のためには、鍜造炉等熱処理関係設備および工作機械類等相当の設備を要するものである。しかるに、本件購入当時これらの設備器材はほとんど調達されておらず、火器修理工場は全く整備されていない状況であり、その設置箇所も定まっていなかったのであるから、特に本件物品だけを急ぎ購入する要はなかったものと認められる。