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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
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物資器材の検収当を得ないもの


(46)−(47) 物資器材の検収当を得ないもの

(昭和27年度)(組織)保安庁 (項)警察予備隊費

(組織)保安庁 (項)保安庁

 保安庁における物資器材等の調達は、おおむねその数量が多く、その検収は抜取検査を例としているが、そのうちには当該物資の組成材料の成分検査はほとんど実施されていないため仕様書の規格に比べてきわめて粗悪なものを検収しているものがあり、また、従来実施している方法では不良品発見の可能性が乏しく、結果的にもきわめて低い確率を示しているものがある。当局においても本院の注意によりこれが改善について検討中であるとの報告に接してはいるが、次のとおり、科学的な検査が困難なものとは認められないもの、また、大量の不良品を繰返し検収しており、この間当局者においてその方法等につき検討すべき余地が十分あったと認められるものなどがあって遣憾である。

(粗悪な火工品を再度にわたり購入したもの)

(46)  保安庁第一幕僚監部で、日平産業株式会社から発射照明筒1型第1次分15,000個(昭和27年6月契約)、第2次分10,000個(28年3月契約)、および発煙手りゆう弾1型10,000個(28年3月契約)をそれぞれ製作させて購入し、総額14,906,160円(うち27年度支払分6,865,440円)を支出したものがあるが、納入品に対する検査方法が適切を欠き納入後不良品を多数発見したのに改善の策を講じなかったため、粗悪なものが再度にわたり納入され著しく不経済な事態となっている。

(1) 本件発射照明筒1型第1次分15,000個は、27年7月から9月までの間に収納して各部隊に配布したものであるが、28年1月から3月までの間に現品に光薬不点火等平均62%の高率な不良品があることが判明し、実用に供することができないため残品を回収し、10,600個を国の負担で同会社に改修させその代価として2,915,180円を支払ったものである。
 このように多量の不良品を生じたおもな原因は、薬品が主として水分により化学変化をきたしたためと認められるが、その検収方法をみると次のような欠陥がある。

(ア) 納入品500個を1ロットとしてそのうちから抜取検査を行なっているが、当局が採用している方法では確率上不良率10%のロットはほとんど全部が合格となり、不良率20%のロットでも10回中5回は合格することとなり、ゆるやかに過ぎるため不良品が見のがされる可能性が多大である。

(イ) 検収時に素材の吸湿度および外筒の気密度の検査を実施していない。
 しかるに、第2次発注にあたっても前回とほとんど同様の仕様で発注し、前回の納入品に不良品が多数発見された日平産業株式会社を加えた3会社を指名して再び同会社が落札したものであり、その検収にあたっては前回と全く同様の方法で実施したものであるが、28年6月から7月までの間に検収のうえ各部隊に配布した第2次分10,000個は、29年5月から6月までの間の各部隊の一斉検査の際、平均45%の不良率を示し、29年8月から9月までの間に松戸駐とん部隊ほか2箇所で本院会計実地検査の際、各部隊保管中のものから33個を抽出して検査した結果では平均不良率91%となっている。

(2) 発煙手りゆう弾1型は、28年7月に収納して各部隊に配布したが、その後各部隊で行なった定期検査の成績をみると、28年9月から10月までの間に実施した結果は発煙不能等不良率平均34%となっており、29年5月から6月までの間に実施した結果は不良率平均44%となっている。また、29年8月から9月までの間に、松戸駐とん部隊ほか2箇所で本院会計実地検査の際各部隊保管中のものから各21個抽出して検査した結果はほとんど全部が不良の状況である。本品についても、その検収方法に前記(1)と同様の欠陥が指摘される。

(毛布の混毛率が著しく低いもの)

(47)  保安庁第一幕僚監部で、昭和29年2月、藤井毛織株式会社から毛布30,000枚を47,700,000円で購入したものがあるが、納入された現品は仕様書と著しく相違している。
 本件毛布の検収は、担当者を工場に出張させ、完成品30,000枚の中から450枚を抽出して検査をしたとしているが、その実際は、単に外観検査だけであって組成、染色堅ろう度等については、うち1枚だけについて判定したにすぎず、また、緯糸毛分含有率については、業者が試片について財団法人毛製品検査協会関西検査所から交付を受けて提出した検査成績書を信頼しているが、納入された現品は、注意して検収すれば品質が規格に適合しないことが判明すべき程度のものである。しかして、同年8月、需品補給処における本院会計実地検査の際、本院および防衛庁が任意抽出した試料について立会実施した化学試験の結果によると、仕様書によれば毛布の緯糸紡毛糸は毛分80%以上(うち羊毛30%以上、化炭反毛50%以内)、スフ20%以内と定められているのに、緯糸の毛分は60%に及ばない状況であり、その後関西地区補給処在庫の同品について防衛庁が試験した結果も同様60%以下となっている。