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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第4 大蔵省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 物件

旧軍用財産の整理が著しく遅延しているもの


(95)−(98) 旧軍用財産の整理が著しく遅延しているもの

 旧軍用財産で、終戦後大蔵省が引き継いだものは膨大な数量に達し、その管理処分に当った大蔵省および管下の各財務局はこれが整理の促進に努力してきたところであるが、従来処分に重点を置き、管理についてはまだ十分でなかったと認められる。
 本院は、国有財産台帳等による内訳明細と現品との対照を実施するほか、更に国有財産台帳の記載漏れ等国有財産法上の処理未済の有無等について検査した結果、台帳に記載されていないもの、使用料の徴収決定等適宜の処置が長期にわたって講ぜられていないもの、または借受人等によってほしいままに処分されてそのままとなっているものなどの事例を指摘してその善処を促した。その事項数は22、求償未済額12,833,052円、使用料の徴収決定未済額6,311,083円で、そのうちには本院の注意により損害の求償、使用料の徴収等の処置を講じ、実効を期待することができると認められるものもあるが、物件の所在不明に加えて借受人等が行方不明となっているものもあって、善後処理の見込が乏しいものも少なくない状況であり、旧軍用財産の管理についてはなお一段の努力を要するものと認められる。
 いま、本院会計実地検査の結果判明したおもなものをあげると次のとおりである。

(95)  関東財務局横浜財務部で、昭和21年1月から横須賀市所在元横須賀海軍施設部吉井変電所の施設(土地1,499坪、建物80坪、機械177個)を東京電力株式会社(元関東配電株式会社)に使用させているが、29年2月本院会計実地検査の際の調査によると、右のうち機械の使用料において26年5月から29年3月までの分約135万円が徴収決定未済となっているばかりでなく、前記施設に接続する電力地下線の旧工作学校線2,672メートル、旧通信学校線1,625メートルおよび旧下浦線1,085メートル計5,382メートルは国有財産台帳に記載されておらず、また、同会社が前記施設と同時に使用を開始しているのに、当初から29年3月までの使用料約156万円が徴収決定未済となっていたので注意したところ、電力地下線については3月台帳の記載を了し、また、使用料は7月機械に対する28年度までの分1,352,582円、電力地下線に対する27年度までの分1,201,570円を弁償金として徴収決定し、9月末までに1,201,570円を収納した。

(96)  関東財務局横浜財務部で、旧海軍が神奈川県山北町所在の江戸川化学工業株式会社山北工場内に設置した過酸化水素製造装置の一部を終戦後引続き同会社に使用させているが、長期にわたって適宜の処置も講じないで放置し、20年8月から29年3月までの使用料約82万円が徴収決定未済となっているばかりでなく、国有財産台帳には右装置の一部分にすぎない真空ポンプ、圧縮機、排風機等が個々の機械器具として記載されているにすぎず、また、右装置の付属品のうち約20点(当局者の時価評価額約480万円)が破損し、または原因不明の亡失等をきたしているのに損害の求償もしていなかったので注意したところ、29年10月および11月台帳の記載を了したが、11月末現在まだ使用料の徴収決定および損害額求償の処置が執られていない。

(97)  関東財務局千葉財務部で、昭和21年7月以降千葉栄養食工業株式会社に千葉市所在元千葉陸軍兵器補給廠の土地3,241坪、建物649坪(25年4月以降は土地4,794坪、建物883坪)を使用させ、27年7月その使用認可を取り消したものがあるが、その後においても朝日産業株式会社が、次いで昭和食品工業株式会社が無断で使用して現在に至っているのに適宜の処置も講じないで放置し、26年度以降28年度までの使用料約65万円も29年11月末現在まだ徴収決定されていない。

(98)  中国財務局呉出張所で、呉市所在元第十一海軍航空廠所属の高圧ガス容器1,890個および工具類84個等を昭和21年4月から26年10月まで株式会社播磨造船所呉船渠に、同月以降は呉酸素株式会社に使用させているが、これらの物件は国有財産台帳にも記載されていないし、また、使用当初から29年3月までの使用料が徴収決定未済となっていたので注意したところ、同年6月台帳の記載を了し、9月前記期間の使用料として2,769,837円を徴収決定したが、同月末現在まだ収納されていない。