ページトップ
  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第6 厚生省

(厚生保険特別会計)


(厚生保険特別会計)

 昭和28年度の健康勘定における収納済歳入額は、324億1千6百余万円で、これは厚生保険特別会計法施行令(昭和19年勅令第470号)の改正により、28年度に限り保険料の年度所属区分を改めて11箇月分としたことなどのために歳入予算額より減少している。これに対し、支出済歳出額は316億2千2百余万円であって差引7億9千3百余万円の剰余となっているが、当年度中に保険給付費財源に不足をきたしたため積立金から10億円を受け入れているので、これを考慮すれば約2億6百余万円の赤字となる。このような赤字となった事由をみると、政府管掌健康保険経済は収入面において標準報酬の固定化と賃金上昇の鈍化とにより収入減をきたし、また支出面において受診率の上昇、療養の給付期間の延長、入院料等の引上げ、抗生物質療法の採用等により診療報酬の支払が著しく増加したことによるものである。
 既往年度の収納未済額が健康勘定で12億8千9百余万円、年金勘定で8億8千7百余万円の多額に上っており、保険給付についても別項に記載したとおり給付の適正を欠いている事例(926)があるから、適切な対策が望ましい。

不当事項

その他

(926)  保険給付の適正を欠いたもの

(健康勘定) (款)雑収入 (項)雑収入

(同) (項)保険給付費

 政府管掌健康保険事業において、近年結核性疾患等長期にわたる疾病に対する療養の給付が著しく増大しつつあるすう勢にかんがみ、被保険者等に対する保険給付の状況につき、国立北海道第二療養所ほか56箇所(注1) の国立療養所等(全国の保険医等約9万のうち、保険者の指定した3,649施設の一部である。)に入所した7,214名について実地に調査をしたところ、昭和24年12月から29年10月までの間に給付された保険給付のうち適正を欠くと認められるものが左のとおり101件8,183,730円あった。


(ア)

事業主との間に実質上の使用関係がないものに療養の給付等をしたもの

50

5,877,731
(イ) 法定の給付期間をこえて療養の給付をしたもの 27 1,291,347
(ウ) 資格喪失前継続して6箇月以上被保険者資格がなかったものに継続療養の給付をしたもの 4 382,777
(エ) 正当な被扶養者でない者に家族療養費の給付をしたもの 3 143,394
(オ) 被扶養者を被保険者として療養の給付をしたもの 4 185,037
(カ) 報酬を受けているものなどに傷病手当金等を支給したもの 13 303,444

 右のような事態を生じたのは、主として都道府県保険課等(前記の各件は、北海道ほか15都府県(注2) で発生したものである。)で、被保険者資格取得届を受理する際におけるその適否の確認、法定支払機関より回付された診療報酬請求明細書の調査および被保険者が資格を喪失した際の被保険者証の回収等が十分に行われなかったことに起因するものと認められ、29年5月から施行された健康保険法(大正11年法律第70号)第21条の2の規定どおり被保険者資格取得の際における確認の励行や長期疾患に対する給付記録票の作成による不正受給の早期発見等保険給付の適正を期する処置は今後も十分に施行することが望まれるところである。
 なお、北海道ほか9県(注3) で、25年5月から29年5月までの間に、結核性疾患にり病した被保険者に対して支払った保険給付費のうち相当の時日の経過後労働省で業務上の原因によるけい肺症であると認定した結果、労働者災害補償保険による休業および療養補償費が発病年月日にそ及して支払われたため回収を要すると認められるものが傷病手当金474,484円、療養の給付費404,618円計879,102円ある。

(注1)  国立北海道第二、小樽、函館、旭川、陸中、西多賀、栃木、足利、宇都宮、佐倉、松戸、東京、村山、中野、横浜、新潟、有明、松本、愛知、八事、豊橋、京都、大阪、福岡、赤江各療養所、国立療養所習志野、柏、清瀬、王子、屋形原、田川新生、久留米、石垣原各病院、国立療養所大日向荘、千城園、大府荘、梅森光風園、志段味荘、大阪厚生園、貝塚千石荘、福岡厚生園、福寿園、国立鳴子、大蔵、世田谷、東京第一、東京第二、立川、横須賀、豊橋、名古屋、小倉、筑紫、別府各病院、仙台市立病院、仙台赤十字病院、福岡県立朝倉病院

(注2)  北海道、岩手、宮城、栃木、群馬各県、東京都、神奈川、新潟、長野、愛知各県、京都、大阪両府、鳥取、福岡、大分、宮崎各県

(注3)  北海道、秋田、山形、福島、茨城、愛知、岡山、福岡、長崎、大分各県