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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第7 農林省|
  • (食糧管理特別会計)|
  • 不当事項|
  • 役務

小麦粉の加工および運送にあたり処置当を得ないもの


(1863) 小麦粉の加工および運送にあたり処置当を得ないもの

(項)食糧管理費

 食糧庁で、麦製品価格抑制用として多量の小麦粉を委託加工させ、大半を高価な海上輸送により緊急運送を行なったが、加工および運送計画が当を得なかったため大部分が滞貸となり、その運送賃9千9百万余円および長期保管の結果正常売渡価格から値引した1億5千9百余万円が不経済となっている。

 右小麦粉は、昭和28年産米の作柄不良に伴う冷害地の米穀不足や大消費地の食糧価格の値上りに備えるため消費地等に麦製品を備蓄する必要があるとして、28年11月から29年1月までの間に、福岡、熊本、佐賀、兵庫等10食糧事務所で小麦粉39,433トン(普通粉29,643トン、強力粉9,790トン)を加工のうえ加工地に貯蔵させた10,476トンを除き28,957トンの小麦粉については、緊急運送を要するものとしておおむね28年12月および29年1月に、その大部分を高価な海上輸送により東京都(21,997トン)、北海道(3,000トン)、東北4県(3,960トン)に運送したものであるが、その売渡状況をみると、4月から10月までの間に4,899トンを学童給食用に売り渡したほかは、4月6,400トンを1袋当り普通粉990円、強力粉1,100円の予定価格で入札したが全く落札せず、結局、5月から10月までに29,038トンを平均1袋当り普通粉119円、強力粉133円総額1億5千9百余万円値引して売り渡し、10月末現在なお5,445トンが在庫となっている。

 しかし、小麦粉の市場価格は、食糧庁調査によっても28年4月以降10月ごろまで1袋990円から1,020円程度で、特に価格抑制のため食糧庁が品いたみを生じやすい小麦粉を多量に手持ちする必要があったとは認められない。また、28年産米の作柄不良により食糧事情が安定を欠くおそれがあったとしても、28年10月食糧庁手持の小麦は63万トンをこえる多量に上っており、他方、全国の製粉能力は当時月産製品で約32万トンであるのに対し、需要は月平均約16万トンであって相当の需要増を見込んでもその能力には余裕があったのであるから取急ぎ11月になって大量の小麦粉を加工させて保有する必要があったものとは認められず、また、仮に製品による価格操作が必要であったとしても、逐次加工すれば足りたものである。しかるに、一時に大部分を品質の劣る普通粉として大量に加工し、これを緊急輸送の要があるとして九州から高価な海上輸送により運搬し、結局、29年5月以後まで製品として保管し、品いたみなどにより多額の損失を受けて売り渡さなければならなくなったものである。