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  • 昭和28年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第7 農林省|
  • (食糧管理特別会計)|
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  • 役務

運送賃の支払にあたり処置当を得ないもの


(1864) 運送賃の支払にあたり処置当を得ないもの

(項)食糧管理費

 食糧庁で、昭和28年度中、輸入食糧委託運送契約により日綿実業株式会社ほか33会社(以下「取扱業者」という。)に横浜ほか22港に到着した輸入食糧4,010,428トンを委託運送させ、その運送賃として5,147,217,345円を支出しているが、本院において右のうち2,057,010トンの運送賃2,653,403,856円につき調査したところ、そのうち沿岸荷役料、はしけ回そう料、他港回そうのはしけおよび機帆船回そう料合計828,107,047円について、食糧庁支払額から1億3千7百余万円に上る多額が取扱業者により差し引かれ、実務の全部を行なった運送人に支払われている。

 本件委託運送は、同庁が、取扱業者から輸入港本船船側渡で購入した輸入食糧の陸揚げ、倉入れ、回そう等のいわゆる輸入港業務および輸送業務に関し、別にこれと委託運送契約を締結して本船から機帆船またははしけで同一港または他港に陸揚げし、袋詰、検査等を行い沿岸指定倉庫または貸車戸前まで運送させているもので、その運送賃については、作業種類に応じ運輸省公示に基く料金のあるはしけ回そう料、沿岸荷役料、倉庫荷役料等はその定額を支払い、また、公示に基く料金のない他港への回そう料金等は契約で実費精算により支払うこととし、総額5,147,217,345円を支払ったものであるが、取扱業者は受託業務を自ら行う資格がないため、港湾運送事業法(昭和26年法律第161号)による登録業者である運送人にその実務の全部を行わせたものである。

 しかして、本院において外国食糧を輸入する21港における取扱業者の運送人に対する支払の実情を食糧庁を通じ取扱業者から報告を徴したところ、左に例示のとおり

年月 取扱業者 運送人 項目 数量 食糧庁支払額(A) 取扱業者支払額(B) 差額(C) C/A
年月         トン  
28,12
29,2
横浜 第一物産株式会社ほか1会社 相模運輸株式会社ほか9会社 はしけ回そう料 19,188 7,725,577 5,155,095

2,570,482

0.33
28,6
〃9
日綿実業株式会社ほか1会社 小川運輸株式会社ほか1会社 機帆船回そう料等 3,600 2,054,156 1,455,074 599,082 0.29
〃12 名古屋 東洋棉花株式会社 伊勢湾海運株式会社 はしけ回そう料 8,423 4,655,083 3,469,520 1,185,563 0.25
〃4 大阪 三菱商事株式会社 辰己倉庫株式会社ほか3会社 沿岸荷役料 8,433 2,310,337 1,652,032 658,305 0.28
29,1 神戸 伊藤忠商事株式会社 三井倉庫株式会社 はしけ回そう料等 8,786 2,994,853 2,366,628 628,225 0.20
28,11 門司 白洋貿易株式会社 下関倉庫株式会社ほか1会社 沿岸荷役料 2,993 1,459,826 902,728 557,098 0.38

前記食糧庁支払額2,653,403,856円のうち公示に基く料金により支払った沿岸荷役料、はしけ回そう料、実費支払によった他港回そうのはしけおよび機帆船回そう料合計828,107,047円については、取扱業者の報告によっても、食糧庁支払額からその38%も差し引き運送人に支払っているものがあり、全部についてみると、沿岸荷役料については393,324,989円から平均1割6分減額して328,499,297円を、はしけ回送料については404,202,003円から平均1割6分減額して338,341,123円を支払い、また、他港回そうのはしけおよび機帆船回そう料については30,580,054円から平均2割減額して24,191,201円を支払い、結局、取扱業者は1億3千7百余万円に上る多額を差し引き運送人に支払ったものである。

 しかし、本件は、特に委託運送契約として業務を委託していること、港湾運送事業法による登録を受けたものでなければ港湾運送業務を行うことができないため受託業務の全部をあげて運送人に行わせていることなどからみて、取扱業者は食糧庁に代り事務処理を行うものと認められ、したがって、公示に基く料金のある作業料金については取扱業者は同庁支払額の全額を運送人に支払うべきものであるのに、食糧庁においてはその相当部分が差し引かれ運送人に支払われているにかかわらず、これを放置し、また、実費精算により支払ったこととしている他港回そう料は、取扱業者が実際に運送人に支払った金額と大差ある額を請求したのに対し、十分の調査を行うことなくこれを適正な実費とみなしその請求全額を支払い、結局、同庁支払額と大差ある金額が運送人に支払われる結果となったのはその処置当を得たものとは認められない。