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  • 昭和28年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項

日本国有鉄道


第2 日本国有鉄道

(事業損益について)

 日本国有鉄道の昭和28年度決算についてみると、営業損益は3億1千3百余万円の利益、営業外損益は1億2千2百余万円の利益で計4億3千6百余円が当期純利益となっている。
 これを前年度の営業損失20億8千9百余万円(純損失16億5千3百余万円)に比べると、営業損益において24億3百余万円(純損益において20億8千9百余万円)の収益増となっている。この原因は、旅客、貨物いずれも輸送量が前年度に比べて4%程度を増加したことおよび28年1月、2月および29年2月に運賃改正が実施されたことにより、旅客運輸において15%、貨物運輸において16%の増収となったため事業収支においては338億4千余万円増加したのに対し、一方、事業費においては給与改訂による増加、利子債務取扱諸費および減価償却費等の増加等で314億3千7百余万円の増加にとどまった結果によるものである。
 各事業別の損益状況をみると、鉄道部門36億4千6百余万円、船舶部門8億1百余万円がそれぞれ利益となっていて、自動車部門は41億3千4百余万円に上る損失を招いている。

(連絡運輸収入および貨物後払運賃の回収状況について)

 連絡運輸収入および貨物後払運賃の28年度末現在における滞納額(貨物後払運賃については1件100万円以上のもの)は、左のとおりそれぞれ4億5千4百余万円および8億2千2百余万円に上っている。

連絡運輸収入滞納額内訳

滞納期間 28年度末滞納額 同滞納者数 27年度末滞納額
3箇月未満
284,908,836

42

290,069,765
3箇月以上6箇月未満 94,540,438 21 115,415,478
6箇月以上1年未満 47,375,056 14 37,783,779
1年以上 27,358,252 6 7,092,558
454,182,582 83 450,361,580

貨物後払運賃滞納額内訳

滞納期間 28年度末滞納額 同滞納者数 27年度末滞納額
3箇月未満
562,432,316

89

763,375,693
3箇月以上6箇月未満 39,687,636 7 47,951,210
6箇月以上1年未満 140,096,372 19 76,880,890
1年以上 80,673,656 5 84,655,841
822,889,980 120 972,863,634

備考 前表の滞納者数は、2以上の遅滞期間区分に重複計上となっているものがあり、実数は連絡運輸収入43名、貨物後払運賃103名である。

 これら未収金の回収については、昭和27年度決算検査報告においてその徴収処置の緩慢な点を指摘したところであるが、28年度の回収状況をみても特にその実績が向上したとは認めがたく、むしろ6箇月以上の長期滞納額は増加の傾向を示していて、将来における回収不能の因子を増大している。
 経済界の不況の現況にかんがみ、不良債権の累積を防止するため、相手方ならびに社会各般に相当の影響を及ぼすことは免かれないとしても、この際滞納者に対し一段と強力な回収処置を講じ、新規未納金発生の抑制と長期滞納分の納入促進を図るべきである。

(工事の進ちょく状況について)

 日本国有鉄道の28年度工事経費の各四半期別の工事予算示達額(A・F・E)および債務負担済額をみると、工事予算示達額は第1・四半期241億8千8百余万円(43%)、第2・四半期217億1千8百余万円(39%)、第3・四半期76億9千4百余万円(14%)、第4・四半期24億2千5百余万円(4%)計560億2千6百余万円であるのに対し、債務負担済額は第1・四半期85億4百余万円(15%)、第2・四半期116億6千2百余万円(21%)、第3・四半期158億3千9百余万円(28%)、第4・四半期199億9千1百余万円(36%)計559億9千7百余万円という状況であって、工事予算は前半期に82%のものが示達されたが、債務負担済額は36%にすぎず、また、第4・四半期だけで36%のものが債務負担されている。
 このように工事を年度末に片寄って施行することは毎年の例であって、この結果、工事のふくそうによる粗雑な工事の施工がみられるほか、工事要員管理のうえでも不経済となっている事例があるが、この共通的な原因として(ア)工事予算の示達遅延、(イ)現場設計の遅延、(ウ)資材調達の遅延等があげられる。
 なお、建設工事で数年にまたがるものの施行にあたっては、工事の経済的施行を目的として、工事契約に関する覚書により実質的に継続費予算によって施行すると同様の効果が得られるとしているが、形式はあくまで単年度予算であって、各年度の工事予算示達時期、契約時期によって工事の進ちょくに影響を及ぼす場合が考えられるばかりでなく、予算の都合で既計画の工事を中止したり、細々と施行したりしなければならなくなって覚書によって期待する工事の経済的施行の目的を達することができない事態に陥るので、こうした工事については継続費によって施行することが望ましい。

(災害応急工事の請負契約について)

 災害応急工事については、災害の直後鉄道管理局長または保線区長がとりあえず業者に復旧工事を請け負わせ、事後において予定価格を積算し、おおむねその価格どおりにその業者と当初から随意契約をしたこととしているが、本院会計実地検査の際その予定価格の内容を検討すると、非常災害の場合の緊急工事であり、平常時の価額に比べて割高となる事情を考慮しても工事人夫の歩掛り、単価、材料費、運搬費等が高率高額に当っていると認められるものがある。
 このような工事では正当支払額をあらかじめ算定することは困難であり、工事請負人が実際に要した通常の経費は支払わなければならないと認められるが、予定価格が事後に積算されたものであるにかかわらず、業者が実際に要した人夫、材料、役務等の実態が全くは握されていなかったり、たまたまこれらの記録があっても請負人の申出によって記録の数字を修正して増額支払をするほどその信ぴょう性について自信のないものであったりして、請負人が実際に要した経費を判断する資料のない場合が多い。
 よって、災害応急工事の施行にあたっては、とりあえず概算契約とし、工事の施行状況をできるだけよく監督して人夫の出づら、搬入資材の品名、数量、運行日誌等の記録を整備し、事後においてこれらを基準として精算する立前とすれば工事の緊急施行を阻害することなく、かつ、個々の場合に適応した契約を締結することができるものと認められる。

(工事施行に関する部局間の連絡について)

 日本国有鉄道各局所で、28年度中に施行した各種工事のうち、実施部局相互の間または実施部局と本庁との間の連絡不十分のため工事施行の緩急の序を誤り、そのため工事の手もどりをきたしたりあるいは不急の施設を新設したりして不経済な結果を招いていると認められる事例があるが、窮屈な工事予算を使用するのであるから、関連工事の施行にあたって関係部局間の連絡を密にして施行の順序、時期等について一段と慎重な考慮を払う必要がある。

(資材の過大調達について)

 28年度末現在における貯蔵品の残高は166億7千2百余万円で、前年度末の176億余万円に比べて9億2千7百余万円を減少しており、その回転率を一般用品(石炭と車両を除く貯蔵品)についてみると、前年度の3.45が28年度は4.10となっていて一般的には向上しているが、その内容に立ち入ってみると、全品目が平均して適正な保有量を示しているものではなく、当年度購入物品についてみても、なお実情に即しない過大調達のため期末に相当多量の過剰品をもち越しているものがある。
 たとえば、関東地方資材部管内の汐留、横浜、隅田3用品庫の28年度末第1貯蔵品残高についてみると、同年度中の購入および保管転換受物品のうち、年度内払出実績に比べて100%以上の残高を保有しているものが513品目79,785,189円、50%以上100%未満の残高を保有しているものが135品目14,746,016円に上り、また、関西地方資材部管内の大阪、安治川口、放出、神戸4用品庫の第1貯蔵品残高についてみても、同じく100%以上の残高を保有しているものが971品目71,768,802円、50%以上100%未満の残高を保有しているものが353品目40,560,398円に達している。
 このような過剰品の保有は、主として在庫数量や既往年度の実績等を考慮しない過大調達に起因するものと認められるが、これはひいては死過蔵品の累積となって円滑な資材需給および効率的な資金運用を阻害することともなるので、現行調達方式の運営にあたっては過剰品を発生させぬよう更に一段の工夫と努力とが望ましい。