日本国有鉄道関東地方資材部で、昭和28年度印刷製本費等の支払にあたり、担当職員が支払関係書類を偽造行使するなどして架空に支出したものが3,413,693円(うち27年度分662,100円、29年度分166,130円)ある。
右は、同部購買課予算係職員橋本某が、その担当していた印刷製本の発注または備品の修繕にあたり、契約の原議を改ざんしたり、支払関係書類を偽造または変造したりして支払いまたは支払ったように仮装してこれを領得したものであるが、この発生原因についてみるに、印刷製本および備品の修繕関係事務については、その契約から支払要求までの一切の事務を前記職員に担当させていたこと、当該納入物品の検収は全く行われていなかったこと、資材部の支払事務を扱う東京鉄道管理局の出納機関が支払内容の調査決定にあたり支払伝票と支払関係書類間の照合を怠っていたため金額等の不符合を見のがしたなど事務運営の欠陥によりけん制組織の効果が全然発揮されなかった結果と認められる。
本件については、29年9月本院会計実地検査の際これを指摘したところ、その後けん制組織については改善の処置を講じ、11月橋本某を免職とし、関係者に対し減給または戒告の処分を行なっており、前記架空に支出された3,413,693円については2,514,825円を回収したが残額はまだ回収されていない。
右のほか、印刷製本費の支払内容をみると、価格算定および物品検収についての資料がなく、結局、単価が契約原議の単価または従来の契約単価より過大となっていると認められる金額が1,956,011円、数量が使用箇所の要求よりも過大となっていると認められるものの金額が1,632,254円ある。