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  • 昭和28年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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  • 工事

電車線用張力自働調整装置新設工事を高価に請け負わせたもの


(2214) 電車線用張力自働調整装置新設工事を高価に請け負わせたもの

(款)改良費 (項)電化設備費

 日本国有鉄道名古屋電気工事事務所で、昭和28年5月、日本電設工業株式会社ほか2会社に浜松、稲沢間の電車線用張力自働調整装置の新設工事を総額47,170,000円で請け負わせているが、予定価格の積算が過大に失したため約740万円高価となっているものと認められる。

 右工事は、浜松、稲沢間を4区間に分けて電車線用滑車式張力自働調整装置343台を新設するものであるが、日本電設工業、八千代電設工業、新生電業の各株式会社を指名し、その予定価格を張力自働調整装置1台当り137,294円(刈谷、稲沢間137台分138,878円)総額47,771,842円(張力自働調整装置以外の工事費462,844円を含む。)査定額47,740,000円として競争入札に付し、これら3会社が落札したものである。しかして、張力自働調整装置についての右予定価格137,294円の内訳をみると、張力自動調整装置80,000円、労務費31,418円と見込んでいるが、次のとおりその積算が過大と認められる。

(1) 張力自働調整装置の価格の積算において、材料所要量を第五種鋳鉄(単価156円)88キログラム、板鋼(単価48円)56キログラム、山形鋼および棒鋼(単価48円)96キログラムとして算定しているが、大滑車の所要量を過大に誤算したなどのため所要量を過大に見込んだもので、第五種鋳鉄品54キログラム、板鋼37キログラム、山形鋼および棒鋼87.6キログラムで足り、また、湿式亜鉛メッキ作業量を264キログラム分(単価30円)と見込んでいるが、実際の重量は上述のとおり少量で足りるから、メッキ作業量は197キログラム分を計上すれば足り、また、第五種鋳鉄品の価格をキログラム当り156円と見込んでいるが、市場価格は130円程度と認められ、結局、製品1台当り10,964円を過大に積算した計算となり、したがって、1台当り価格は69,035円となり、これに10%の諸経費を加えても75,939円となる。

(2) 労務費については、所要人工を電工24人(単価550円)、人夫15人(単価356円)と見込み、これに役付手当1,349円、天候乗率5,966円(直接労務費に役付手当を合算したものの30%相当額)、危険手当5,562円(直接労務費の30%相当額)を加算し、31,418円として算定しているが、電工13人、人夫7人程度で足り、これに当局者の計算方式をそのまま適用して役付手当660円、天候乗率3,090円および危険手当2,892円を加算しても16,285円となる。

 現に、東京電気工事事務所で29年3月施行した蛇窪、大崎間および原宿、池袋間電車線用張力自働調整装置新設工事の予定価格の積算内訳によれば、滑車式張力自働調整装置については76,000円、労務費については役付手当および天候乗率を含め電工10.3人、人夫6.3人、自動車運転手0.3人として9,320円と計算し、これに活線手当(危険手当)電工、人夫のうち5.7人に対し1人当り40円を加算し9,548円と算定していて、本件労務費積算額の3分の1に満たない状況である。
 いま、仮に滑車式張力自働調整装置1台を75,939円、労務費を16,285円とし、当局者が計算した額によりその他の資材費を7,354円、諸役務費を937円、仮設経費を1,406円とし、これらに一般経費として23%(滑車式張力自働調整装置を含む資材費については10%)を加算すれば、114,534円となり、この343台分に当局者が積算したその他の工事費462,844円を加えた額は、39,748,259円となり、これを予定価格として採用すべきであったと認められ、この価格は本件請負価額に比べて約740万円低価に当るものである。