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  • 昭和28年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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  • 役務

石炭の荷役契約にあたり処置当を得ないもの


(2218) 石炭の荷役契約にあたり処置当を得ないもの

 日本国有鉄道資材局で、昭和28年度中、日本海陸運輸株式会社に対し、全国36箇所の港湾等における海送炭等の船積、陸揚、貨車積卸等の荷役を請け負わせ、その代金として総額669,006,369円を支払っているが、その契約にあたり処置当を得ないため不適正または過大な支払となっているものがある。 
 右は、公開競争契約によっているものではあるが、前記港湾等における年間延8百余万トンに上る荷役の一元的実施と、これに関連した配船計画、炭種別行先別積渡しおよび発送計画、荷役状況および貯炭状況の調査、出帆案内、積揚切協定等18項目の付帯業務を契約条件としていることから他に競争相手がなく、もっぱら前記会社の独占するところとなっている。
 しかして、契約価額は、港湾運送事業法(昭和26年法律第161号)および通運事業法(昭和24年法律第241号)に定められた料金により船積、陸揚、貨車積卸等に区分し、過年度の作業種別実績を基礎として総合計算によりトン当り実施料金を決定し、荷役量に応じた適正額を支払うこととなっているが、その契約にあたり適正を欠き過大な支払となっていると認められるものが次のとおりある。

(1) 国鉄川崎埠頭における陸揚炭166,924トンの支払荷役料28,463,144円は、船内荷役料100円に沿岸荷役料115円を加えた215円(船積石炭を一応水切りし、さらに、これを貯炭場に運ぶものとした料金)から機械荷役による割引額32円25および機械使用料24円44を控除した158円31に対し、さらに、強行(夜間および荒天)荷役料の割増料金22円95を加算してトン当り181円26を予定価格とし、この範囲内の上期171円、下期170円を契約単価としているが、機械による一貫荷役の場合は、船内荷役料と沿岸荷役料を合算して支払う必要はなく、船内荷役料と本船から貯炭場までの直送料金トン当り33円を支払えば足りることは、現に隣接地の三井川崎埠頭および東洋埠頭における機械荷役料の支払の例に徴しても明らかであり、また、このような長期大量貨物については、港湾作業料金表中の「長期かつ大量貨物については運輸大臣の承認を経て減額することができる。」との条項により基本料金の1割引相当額を実施料金とすることができることになっているから、いま、これにより予定単価を修正したとすれば103円35となり、総額において17,251,595円となる計算であり、これによって契約したとすれば、前記支払荷役料は約1120万円を節減することができたものである。

(2) 三井川崎埠頭における陸揚炭31,524トンの支払荷役料5,775,548円は、機械荷役料116円に夜間荒天荷役料63円80(夜間荒天荷役を全取扱量の79%とみている。)を加えた179円80を接岸荷役料とし、一方、はしけによる陸揚料298円72を前年度取扱トン数比(接岸荷役77%、はしけ荷役23%)によって計算した平均価格207円に貯炭場料10円を加算してトン当り217円を予定価格とし、この範囲内の上期185円、下期183円を契約単価としているが、夜間荒天荷役の割合は、隣接の国鉄川崎埠頭の28年度の例からみても全陸揚炭のおおむね30%程度で十分(入港船舶の荷役遅延等による滞船料の支払等不利な事例はない。)であったものと認められ、また、はしけによる陸揚は特殊な場合に限られ、23%の見積は妥当でなく、現に、28年度中の実績においても全陸揚炭の7%にすぎない現状であるから、いま、夜間荒天荷役の割合を30%、はしけ荷役の割合を10%とみて、これにより予定単価を修正したとすれば159円93となり、総額において5,041,633円となる計算であり、これによって契約したとすれば、前記陸揚荷役料は約70万円を節減することができたものである。

(3) 西戸崎港における船積炭291,046トンの支払荷役料43,921,618円は、中塊炭の沿岸荷役料115円に穴繰り10円20、距離増25円および夜間荒天割増料金5円63を加えたトン当り155円83を予定価格とし、この範囲内の上期152円、下期150円を契約単価としているが、同港における荷役炭は日本国有鉄道志免鉱業所採掘のもので例年粉炭の割合が多く、現に、28年度においても総荷役量291,046トンの40%に当る117,046トンは中塊炭よりも沿岸荷役料が低価である粉炭だけを船積した状況であって、荷役料については粉40%、その他を60%と見込むのが妥当であり、また、このような長期大量貨物については、港湾作業料金表中、基本料金の1割引相当額を実施料金とすることができることになっているから、いま、これにより沿岸荷役料粉炭90円、中塊炭115円および長期大量貨物に対する1割引相当額により予定単価を修正したとすれば130円84となり、総額において38,080,458円となる計算であり、これによって契約したとすれば、前記支払荷役料は約580万円を節減することができたものである。
 右のほか、

(1) 夜間荷役(荷役料はそれぞれの基本料金に対しおおむね23時までは50%、23時以降は100%の割増料金を加算することになっている。)は、27年度実績を勘案して、船積および接岸陸揚予定量3,693,000トンに対し全港湾平均で31%のものを予定価格に積算し、28年度の実績によれば年間総荷役量3,145,419トンに対し949,509トンで、その実施割合は約30%に当っているが、このような高額割増料金を必要とする夜間荷役は日本国有鉄道内部の需給計画および貯炭、配炭の実情からみても前記のように多量を実施する必要は認められないものであるから、この種荷役は厳に抑制する必要があると認められる。

(2) 酒田、新潟、新湊、名古屋、桜島、飾磨各港湾において、船から貨車に直積した35,162トンの支払荷役料9,465,829円は、港湾運送事業法による沿岸荷役料と通運事業法による貨車積料金とを合算したものを実施料金としているが、その作業は、荷役機械により汽船またははしけから直接貨車に積み込まれたものであるから、このような機械による一貫荷役については、特別料金を設定するかあるいは機械の性能を勘案した相当額の割引料金によるべきものと認められる。

(3) 鉄道事業炭の各港湾における陸揚、貨車積等の荷役作業の大部分は、荷役機械によって実施しているものであるが、単にそれぞれの基本料金の15%から50%までを減額して実施料金としていて合理的計算に乏しい。機械設備は日本国有鉄道の所有しているものが多いからか働人夫の実績等を勘案して合理的な割引料金を設定すべきものと認められる。