ページトップ
  • 昭和28年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項

日本電信電話公社


第3 日本電信電話公社

(事業損益について)

 日本電信電話公社の昭和28年度における損益は、営業損益において利益金81億5千1百余万円、営業外損益において損失金30億7千1百余万円となっていて、差引50億7千9百余万円の純益となっている。この額を27年度の純益43億5千8百余万円(電気通信事業特別会計と日本電信電話公社とを通じた額)と対比すると、7億2千余万円の増加となる。
 27年度における純益の過半は国際電信電話事業に負うものであったが、この事業が、28年4月国際電信電話株式会社に移行した後においてもなお利益が増加したのは、新たな料金値上げ等があったためである。
 いま、28年度の雑収入を除いた営業損益の結果を事業別にみると、電話事業においては、28年8月の料金の値上げおよび事業施設の増加に伴う市外通話度数、開通加入者数の激増等により収支率(収益に対する費用の割合)が27年度の85.4%から82%と向上し、この結果、この事業における利益金は153億7千7百余万円となっているのに対し、電信事業においては、その収支率は206.7%で、27年度に比べて10.2%悪くなっていて、100億4千1百余万円の損失となっている。電信事業の経営内容が料金値上げをしたにもかかわらず27年度よりも悪くなった原因は、この事業の特質上、総原価のうち労務費の占める割合が非常に高くなっているうえに、この面における合理化対策としての電報中継機械化がまだ軌道に乗っていないことなどによるものである。

(建設工事について)

 日本電信電話公社の28年度の建設勘定の予算額は644億3千9百余万円(前年度から繰越額102億4千7百余万円を含む。)、支出決定済額は605億8千7百余万円で、38億5千余万円を翌年度に繰り越し1百余万円を不用額としている。
 支出決定済額は前年度に対し94.3%増であるのに、繰越額は前年度に対し62.5%減となっており、進ちょく率は著しく良好であり、このように工事の進ちょくが改善されたのは、全般的にてみて電信電話拡充5箇年計画の初年度として工事実施の計画が年度当初からある程度確立されていたこと、ならびに昭和27年度決算検査報告において指摘した予算示達の平準化、工事命令の早期発令および工事要員のか働率の向上等の事項が著しく改善されたことに負うところが大きい。
 しかし、支出決定済額のうち未完成工事の工事費は129億1千6百余万円で21.3%を占め、前年度の未完成工事が85億8千7百余万円で支出決定済額に対し27.5%であったのに比べて比率的にはやや減少しているが、計数的には増加を示していて、そのうちには関東ほか4四電気通信局で電話局の新築工事等の施行にあたって年度末予算の消化のために1億5千余万円の前金払を行なったものや、翌年度当初には工事の着手の見込がないのに年度末において1億9千8百余万円の貯蔵品だけの買受決算を行なったものなどがある。このことは、本年度の工事進ちょく対策が重点的に予算の消化に置かれたことから、金額的には著しい進ちょくを示したものの、工程面においてはその進ちょくがなお不十分であったことを物語っている。
 関連工事のは行については、その性質が施設全体の効率性を著しく阻害するばかりでなく、ひいては事業収益に及ぼす影響も大きいものであるから、特に留意を要するものであって本年度における改善が期待されたが、なお依然としてその事例が多く、そのおもなものを述べると別項(2226、2227) に記載したとおりである。
 また、28年度建設工事は、5箇年計画の初年度として従来にない膨大な工事量を計画し施行したにもかかわらず、その進ちょくは相当良好な結果を示しているのであるが、工事の具体的実施にあたり、根斡となる5箇年計画が、その基礎であるべき発達調査の不備により修正を要し、このため28年度に施行した工事で再施行しなければならない部分、あるいは将来使用見込のない部分が見受けられ、量的な進歩と相まって質的向上が要望されるところである。

(電信電話拡充5箇年計画について)

 日本電信電話公社では、戦後大混乱に陥った電信電話を根本的に立て直すとともに、し烈な電話需要を充足するため、5箇年間に、電信においては全国27局の主要電報局の機械中継化を企図し、また、電話においては開通加入者70万名の新増設を目標とする電信電話拡充5箇年計画(総工事費2,772億円)を27年11月(最終案は28年10月)立案し、28年度を初年度として実施しているのであるが、その初年度における成果は、電報中継化にあっては、わずかに5箇年計画樹立前から着工していた金沢、松江両電報局を機械化したにすぎず、札幌、和歌山両電報局は局舎建築を完成しながら機械設備を施行していない状況であるが、電話にあっては、28年度の加入者開通予定186,000名分に対し、21万9千余名分を開通し、また、設備端子に対する加入者の収容状況も27年度の83.9%に対し85.1%と向上し、その成果は一応みるべきものがあると認められる。しかしながら、28年度末における収容余力は20万8千余端子もあり、これらは早急に販売して収益をあげるよう努力することが望ましい。
 また、東京電信電話管理局では、加入者端子設備工事あるいは線路工事が完成しておらず、また、前納を原則としている設備負担金等を収納していない早期に加入者開通工事だけを施行したため、加入申込の取消等により開通工事完成後これを撤去したものが923件ある。

(資材の調達管理および運用について)

 28年度末の貯蔵品の在庫量は101億5千9百余万円で、27年度末の在庫量118億8千3百余万円に比べて約17億円の減少となり、一方、年間の購入額は工作費を含めて407億36百余万円で、物品の使用局所において買受け決算したものは430億6千9百余万円となっており、決算額と購入額との差引額と年度末の在庫の対前年度減少額との差額約6億円は、新規に購入することなく在来の整理品または事業品を工事用物品として活用したものである。
 また、貯蔵品の回転率は27年度の2.00に対し28年度は4.57となっていて向上しているが、常備物品(施設用物品のうち工事現場直納の条件で買い入れ直ちに決算される物品を除き貯蔵品となるもの)だけの回転率は2.81となっており、必ずしも良好ではなく更に努力を要する。
 また、年度末の在庫量は前年度に比べて減少しているが、その内容を検討すると常備物品のうち約11億円は、工事中止、変更および要求数量の見込違い等により当局の制定による標準在庫量をこえて過剰に保有されているものであり、今後更にその活用を強度に推進することが望ましい。
 また、売もどし、撤去等により在庫となっている非常備物品は約11億円ある状況で、今後使用可否の判定を急ぎ、死退蔵物品の排除に努力することが望ましい。