農林漁業金融公庫(農林漁業資金融通特別会計から承継した分を含む。)が業務委託金融機関を通じて貸し付けた農林漁業資金のうちで、貸付けにあたり審査不十分と認められるものまたは貸付け後の管理不十分と認められるものが次のとおりある。
(1) 貸付けの効果があがっていないもの
〔1〕 農林中央金庫扱いで、昭和28年6月、千葉県農村工業株式会社に対し、製あめ製菓施設事業の資金として23,000,000円を貸し付けているが、右は、同年4月同会社の主たる出資者である千葉県販売購買農業協同組合連合会が既に運転資金援助を中止しており、6月末の財務諸表によると欠損金が7565万9千余円に上る状況であることからみても、審査の際同会社の実態が相当悪化していたことは明らかであったと認められるのに、これに対する十分な調査をしないまま貸し付けたところ、同会社は10月から工場を閉鎖している。
〔2〕 同金庫扱いで、27年12月および28年8月、大分県竹林協同組合に対し、竹まさ工場建設事業の資金として計11,000,000円を貸し付けているが、設備の主軸となる価額約32万円の竹材削り機(仕上げかんな)がか働しないため全工場が遊休状態に陥っているものがある。
右は、前記竹材削り機がこれまで我が国で類例のない機械であるのに、株式会社大分製鋼所で製作可能であるとの貸付先の申出を漫然信用して、本件機械購入資金のほかに建物新築および他の機械器具購入の資金等をも合わせて一括資金を交付したものであるが、このような場合には一応本件機械購入およびその試運転に必要な最少限度の資金を交付し、その結果をまつべきであったと認められる。
〔3〕 株式会社大分銀行扱いで、28年10月、日田市、合資会社石井材木店に対し、林道開発事業の資金として10,500,000円を貸し付けているが、林道開発資金の貸付けにあたっては、林道開発予定地の土地所有者の承諾書を徴していることを確認して貸し付けるのが通例の取扱であったのに、本件についてはその確認をしないで貸し付けたところ、林道開発予定地の使用を所有者が許さないため事業を着手後中止せざるを得なくなり、貸付金のうち、5,350,000円は受託金融機関に預金として留め置かれている。
(2) 受領済補助金相当額の繰上償還をさせていないもの
農林中央金庫扱いで、27年5月から28年12月までの間に、北海道河西郡更別村農業協同組合ほか47箇所に対し農業倉庫新設事業ほか51件の資金として303,710,000円を貸し付けているが、右は、別途国または地方公共団体等から補助金の交付を受けたときはこの補助金相当額を期日前に償還することを条件として貸し付けているのに、管理不十分なため既に補助金が交付済となってもその償還の処理を執らないままとなっているものが74,155,285円ある。
(3) 農林漁業金融公庫の業務方法書に規定する貸付の限度をこえているもの
農林中央金庫ほか3箇所扱いで、26年11月から29年2月までの間に、小樽市漁業協同組合ほか24箇所に製氷冷凍冷蔵施設新設事業ほか28件の資金として177,477,400円を貸し付けているが、このうち管理不十分なため借受人が当初申請どおりの工事を施行しなかったりまたは実際の工事費が申請額より少額で完成したなどのため公庫の業務方法書に規定する貸付けの限度額をこえる結果となっているものが34,781,013円ある。
(4) 貸付けの目的以外の資金に使用されているもの
農林中央金庫扱いで、27年2月から29年2月までの間に、北海道常呂郡佐呂間漁業協同組合ほか6箇所に対し荷さばき所復旧事業ほか8件の資金として50,072,600円を貸し付けているが、管理不十分なため貸付けの目的以外の工事の資金、運転資金等に使用されたものが27,583,592円ある。