国民金融公庫の昭和28年度中の新規貸付実行額は24万7千余件331億8千3百余万円に達し、また、回収総額は14万3千余件232億4千5百余万円で、差引年間貸付純増加額は99億3千8百余万円に上り、年度末貸付残高は53万5千余件307億3千6百余万円となっている。
しかして、年度末現在における6箇月以上元金延滞額は19万7千余件30億4百余万円(うち1年以上延滞の分17万9千余件25億9千2百余万円)で、年度末貸付残高に対し件数において36.9%(うち1年以上延滞の分33.5%)、金額で9.8%(うち1年以上延滞の分8.4%)の割合となっており、延滞件数の割合の多いのは、主として少額の更生資金貸付の延滞が多いことによるものである。
なお、同公庫の貸付金利は28年10月に従来の年1割2分(普通貸付および更生資金再貸付)および年9分(更生資金貸付)をそれぞれ年9分9厘6毛および年6分に引き下げたが、決算においては滞貸償却引当金4億6千1百余万円を繰り入れてなお4億6千余万円の利益をあげ、これを国に納付した。
また、同公庫が金融機関にその普通貸付業務を委託した額は29年3月末現在で10万余件78億6千3百余万円であって、このうち受託金融機関に回収不能の場合補償義務を負わせているもので元金の6箇月以上延滞しているものは7千余件4億2千6百余万円となっているが、公庫が金融機関と締結している代理業務契約には、受託金融機関は取扱いの委託を受けた普通貸付の貸付金が回収不能となったときは、公庫に対しその回収不能元金の半額に相当する金額を補償しなければならないと定めているのに、その補償をする時期について、単に「回収不能となったとき」とあるだけではっきりした期日を示していないため、このように払込期間または償還期限を著しく経過しているものがあってもまだ実際に補償をさせた例をみない状況である。右は、現在の契約を改めて補償をさせる時期を明確にし、受託金融機関の貸付金に対する回収意欲の向上と公庫自体の資金効率の向上とを図ることが望ましい。