中小企業金融公庫は、中小企業者の行う事業の振興に必要な長期資金であって一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的として昭和28年8月20日設立され、政府出資金130億円(国が商工組合中央金庫に貸し付けていた20億円を含む。)および資金運用部からの借入金20億円を原資として発足し、28年度中に日本開発銀行から中小企業者に対する貸付金債権103億6千余万円を承継した。28年度中の新規貸付実行額は設備資金103億7千1百余万円、運転資金1億7千3百余万円計105億4千5百余万円で、承継貸付金債権を合わせ、回収額7億2百余万円および償却額8千4百余万円を除いて年度末における貸付残高は設備資金1万5百余件197億7千余万円、運転資金4百余件23億4千7百余万円計11千余件221億1千7百余万円となっている。
本年度においては、一応2億4千5百余万円の利益をあげたが、これを全部貸倒準備金に繰り入れたため国に納付すべき利益金はなかった。
本院においては、29年3月から10月までの間に219件830,050,000円の貸付金について実地に調査をした結果、審査または管理が不十分なため貸付金が貸付けの目的外に使用されたと認められるものが43件82,235,450円あり、うち23件36,406,751円については是正の処置を済ませたが、なお是正を要するものが18件45,828,699円あり、公庫において繰上償還させるべく手続中である。このような事態の生じたのは、公庫発足後7箇月間に約112億円の貸付決定を行うこととなり、かつ、404店の金融機関の窓口約5,000を通じて貸付けを行なったため、受託金融機関の不慣れと公庫側の監査不十分によるもの認められるが、29年度になって受託金融機関の事務不慣れの点も逐次是正され、公庫側の監査体制も29年4月監査部を設置し、部長以下10人を配置して鋭意業務指導と監査に努めているので、前記のような欠陥は漸次是正されるものと認められる。