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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
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不急の物品を購入したもの


(12)−(18) 不急の物品を購入したもの

(昭和28年度) (組織)保安庁 (項)保安庁

(組織)防衛庁 (項)保安庁

 防衛庁における物資器材の調達は、従来、各幕僚監部がそれぞれ実施していたところ、昭和29年7月以降は、調達実施本部が新たに設置され、主要品については一元的に調達することとなり、各幕僚監部の決定した調達要求の規格、数量により価格の算定を行い購入の処理を実施しているが、その結果をみると、不急と認められるものを購入した事例が依然として少なくない。
 このような事態を生じたのは従来からも指摘しているとおり、部隊の現況なり実際の必要度なりを十分は握することなく、編成装備表の定数に従ってまたは単に予算に計上されているという理由だけで取急ぎ調達したことによるものと認められ、とくに米国軍からの供与器材が相当量に上った29年度からは、希望の品目、数量と実際の供与品のそれとが一致しなかったり、交付時期が明確に示されなかったなどの事情はあるとしても、これに対する国内調達の調整に努めなければならないのにその配慮が必ずしも十分ではなく、冬服の事例にみるように、結局、多量の退蔵品を保有することとなるなど不経済な事態を生じている。
 また、陸上自衛隊で相当の余剰品を保有しているのに、海上自衛隊や航空自衛隊で同種品を購入している事例が見受けられるが、装備品の調達について3幕僚監部間の適切な連絡調整が望ましい。
 なお、現在保有するものの数量は、在庫品、隊員貸与品を通じてすこぶる明確を欠いており、適確な整備をはかるためにすみやかにこれをは握する処置を講ずることが必要である。

 (不用の修理工具セットを購入したもの)

(12)  保安庁第一幕僚監部で、昭和28年3月、一般競争契約により株式会社泰和商会から編成装備表の定数に従って修理工具7号冷凍機用14組を1,101,800円で購入しているが、これを使用して修理する冷凍機については編成装備表に定めておらず、また、購入もされていないもので、修理の対象もないこのような工具を購入する要はなかったものであって、現に、本件工具の交付を受けた部隊ではこれをそのまま保管している状況である。

(車両装備の実情を検討しないまま不用のドーリーを購入したもの)

(13)  防衛庁調達実施本部で、陸上幕僚監部の要求により、昭和30年2月、随意契約により東急車両製造株式会社からドーリー「20TD」型4台を単価600,000円総額2,400,000円で購入しているが、部隊の車両装備の実情を十分検討しなかったため格別必要のないものを購入した結果となっている。
 本件車両は、仕様書によれば「20トンセミトレーラーを6トン6×6プライムーバーでけん引する際に連結し、フルトレーラーとして使用するもの」として製作させたもので、島松ほか4駐とん部隊に所属する野外整備中隊および施設補給中隊の装備数量の不足を充足するために購入したものである。
 しかし、20トンセミトレーラーは6トン6×6トラックトラクターによってけん引するのが原則であって、この場合は直接連結が可能であるが、前記両中隊はいずれも両車両を同数保有していてドーリーの必要は認められない。右は、従来の編成では前記両部隊はトラクターの配備がなくプライムーバーを使用しけん引していたもので、同車には連結装置がなく本品の必要があったが、その後定数が改訂され、トレーラーとトラックトラクターが同数となったので既に配備されていたものもその必要がなくなったもので、その間の事情を十分に検討すれば本件車両は購入する要がなかったものである。

(調達計画が適切でなかったため不急な冬服を購入したもの)

(14)  防衛庁調達実施本部で、陸上幕僚監部の要求により冬服70,000着を調達することとし、随意契約または指名競争契約により、昭和29年10月、日本毛織株式会社ほか8会社から冬服40,500着および29,500着分に相当する冬服生地71,390メートルを購入し、また、12月、東京屋被服株式会社ほか8会社に右生地の縫製を請け負わせ、総額286,122,750円を支払っているが、本件契約当時米国軍から大量の冬服生地等が援助物資として供与される事情にあったのであるから、さしあたり必要とした20,000着程度は別として計画数量70,000着全量の購入は差し控えるのが適当であったと認められる。
 右は、31年に既存の冬服135,000着分の耐用期限が到来するので、その更新に備えて、29年度においては70,000着を購入することとし、さしあたって30年1月から2月までの間に入隊予定の増員および欠員補充の隊員合計32,000名に貸与する分で手持品では不足する約2万着を含め取急ぎ前記のとおり購入したものである。 しかし、本件冬服発注前である29年8月には米国軍顧問団から約35万着分相当の生地等約70万着分が特定援助物品として交付される旨口頭で伝えられ、9月13日には非公式ではあったが同様趣旨の文書の交付を受けていたのであるから、その入手時期についてはなお交渉中であったとしても、さしあたり必要な20,000着にとどめ、それ以上の購入を差し控えるのが適切であったと認められる。
 なお、前記米国軍供与の生地等約70万着分が30年2月から5月までの間に交付され、30年11月現在その全量が需品、関西地区両補給処に保管されている状況である。

(不急な赤外線警報器を購入したもの)

(15)  保安庁第一幕僚監部および防衛庁調達実施本部で、昭和28、29両年度において、指名競争契約または随意契約により株式会社小糸製作所から赤外線警報器34台を左のとおり設置指導費を含めて18,928,000円で購入しているが、購入処置当を得ないため不経済なものとなっている。

契約年月 契約納期 購入数量 単価 総額
年月
28、11
年月
29、1

20

574,000

11,480,000
29、6 〃8 7 555,000 3,885,000
〃11 30、2 7 509,000 3,563,000
34 18,928,000
備考
ほかに27年度購入分が16台ある。

 本警報器は、弾薬庫の警戒に使用するものであるが、設置すべき弾薬庫の計画が具体的に確定しないうちに取急ぎ購入したため、その設置は購入時より相当遅れ、27年度から29年度までに購入した50台のうち30年9月までに29台が設置されたにすぎず、設置されたものも使用効果が薄く、27年度購入分3台、28年度購入分110台および29年度購入分8台は30年11月末にいたるもまだ設置されていないまま保管されている状況であり、また、30年5月までに設置された17台についてみると、事故が続出しほとんどその効果が認められなかったものである。
 このような事態を生じた原因は、弾薬庫の完成が遅れたことにもよるが、既に設置したものの使用上の欠陥を十分に検討したうえでその設置場所に適合するよう設計を補正し適時に購入すべきであるのに、これらを考慮しないで取急ぎ購入したためと認められる。

(高周波線輪を過大に購入したもの)

(16)  陸上自衛隊通信補給処で、昭和30年2月、随意契約により冨士測定器株式会社から車両無線機「JSCR−619」用高周波線輪1,200個(複合体)を単価5,000円総額6,000,000円で購入しているが、同種品の在庫状況、従来の補給実績の調査が十分でなかったため過大に購入したものと認められる。
 右高周波線輪は、単体線輪2本を組み立てたもので、車両無線機「JSCR−619」の同調器として同無線機1セットに6個使用されているものであるが、29年9月、修理補給用として調達計画の作成にあたり、米国軍の保有基準に従い前記無線機の装備定数1,195機に対する1年分必要数を1,200本と算定したところ、この算定によると複合体として600個となるのに誤って倍量に当る1,200個を購入したものである。しかし、購入当時における前記無線機の各部隊への配分済数は945機にすぎず、これを基礎として計算すると同線輪の必要保有数は前記基準によっても789個で足りる計算であり、さらに、同補給処には565個の在庫があったことおよび各部隊への補給実績も29年3月から30年1月までわずかに70個にすぎないことなどを考慮すれば、このように多量を取急ぎ購入する要はなかったものと認められ、現に、30年8月末における本件線輪の在庫数は1,548個の多きに上っている。

(4トンレッカーを陸上自衛隊が過剰に保有しているのに海上、航空両自衛隊用として新たに購入したもの)

(17)  防衛庁調達実施本部で、海上、航空両幕僚監部の要求により、昭和30年2月、随意契約により日野ヂーゼル販売株式会社から4トンレッカー8両を30,708,000円で購入しているが、陸上自衛隊においては本車両を定数以上に保有していたのであるから、これを充当すれば新たに購入する要はなかったものと認められる。
 右車両は、陸上自衛隊で保有している4トンレッカーと全く同一用途のものであるが、陸上自衛隊では28年度までに84両を保有し、その後、米国軍から45両を供与されており、110両の定数に10両の予備を加えてもなお9両の余剰分を保有していたのであるから、これを直ちに保管転換して活用することができたのに、この実情を調査しないで新たに購入したものである。

(無線機を陸上自衛隊が過剰に保有しているのに航空自衛隊用として新たに購入したもの)

(18)  防衛庁調達実施本部で、航空幕僚監部の要求により、昭和30年3月、随意契約により東洋通信機株式会社ほか1会社から中無線機「JSCR−193C」29台を44,080,000円で購入しているが、陸上自衛隊では右無線機に代えて使用することができる重無線機を定数以上に保有していたのであるから、これを充当すれば新たに購入する要はなかったものと認められる。
 右無線機は、陸上自衛隊の移動用無線機「JSCR−193」を模倣し、その送信周波数の安定度を増加するなど若干の変更を行い、固定局化をはかって本件「JSCR−193C」を購入したものであり、一方、陸上自衛隊においてはかねてからその装備としていた重無線機「JSCR−399」の追加供与方を米国軍に要望していたが、交付される時期の見通しが立たないとして、28年12月、右「JSCR−399」の改良型「JAN/GRC−26」35台を国内調達したが、発注後米国軍から「JSCR−399」を予想外に多量に供与されたため29年12月末におけるこの種無線機の保有数は両者を合わせて92台となり、その装備定数49台に対して43台の余剰分を保有していた実情であった(30年7月までにさらに16台の供与を受けている。)。

 このような状況を考慮すれば、右過剰品の活用をはかることが望ましく、また、当時航空自衛隊では陸上自衛隊から保管転換を受けた右重無線機3台そのままで東京、防府、築城3点間の固定通信を実施している状況からみてもその性能が不足するものとは認められず、もし、右重無線機が、当局のいうように移動用のものであって、固定用としては送信周波数の精度および送信出力の安定度が不足するものであれば、水昌発振子、抵抗器等少量の部分品を補足すれば容易にその目的を達することができたものであるから、右過剰品を陸上自衛隊から航空自衛隊へ保管転換してその活用をはかったとすれば、本件「JSCR−193C」は購入の要はなかったものである。
 いま、仮に「JSCR−399」を固定局として使用するため部品の補足および調整に1台当り約10万円計約290万円を要したとしても約4100万円は節減することができた計算である。