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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第2 総理府|
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用地の取得にあたり処置当を得ないと認められるもの


(29)−(31) 用地の取得にあたり処置当を得ないと認められるもの

(昭和28年度) (組織)保安庁 (項)保安庁施設費
(組織)防衛庁 (項)保安庁施設費

 防衛庁で、昭和29年度中に演習場、弾薬庫等の用地等を取得したものが島松演習場ほか1百余箇所総面積約3115万坪あり、その購入費として8億3百余万円、これに伴う離作等の補償費として14億9百余万円計22億1千2百余万円を支出している。右のうち然別演習場ほか17箇所1,384,642,866円(うち28年度分92,432,469円)について本院で会計実地検査を行なったところ、用地の取得を急ぐとして十分な現地調査も行わず適正な評価を行わないままに地元代表(主として市町村長)と総額について交渉して価額を決定したり、または所有者各人と個別的に交渉しているため、実際に比べ地目別の面積、立木の石数、農作物の収穫高等を過大に見積ったり、根拠のない金額を加算していたり、所有者間に著しく均衡を失しているものなど処置当を得ないと認められるものがあり、そのおもな事例をあげると次のとおりである。
 なお、これら用地取得についての調査、算定、契約等の事務は少数の職員にゆだねられている状況であるが、ひいて個人の主観的な見解によって価格が決定されるうらみがあり、改善を要するものと認められる。

(29)  保安隊第二地方建設部で、昭和29年3月および4月、然別演習場用地として2,521,374坪を北海道河東郡鹿追村千葉某ほか116名から購入し、保安隊第二管区総監部でその代理人鹿追村長に対し総額92,432,469円を支払っているものがあるが、立木および採草補償費の評価にあたり過大に算定したため、適正と認められる額との間に5181万余円の開差を生じている。
 右購入価額のうち立木補償費については、天然林立木44,985石のうち17,288石を用材とし石当り1,321円または1,601円の高価に評価しこの金額26,559,080円、残余の27,697石を薪材とし石当り200円から400円この金額8,204,800円、人工林立木10,553石を石当り1,100円この金額10,447,657円と算定しているが、30年5月本院会計実地検査の際の調査によると、天然林立木については全林地直径1寸から2寸程度のならが生成しているにすぎないからその材積44,985石は薪材として評価するのが適当であるばかりでなく、薪材の石当り単価も本用地が村の中心から20数キロメートルの距離にある点等を考慮すると200円程度が適当であると認められ、人工林立木については実地調査の結果によると総材積は2,337石程度にすぎないのに10,553石と計上しているものである。
 また、採草補償費は、坪当り26円とし面積1,327,323坪に対し総額34,510,398円と評価しているが、実地を調査するとほとんどくまざさ等が密生している状況で、本面積全域について採草補償を行うのは適当とは認められないばかりでなく、その評価額についても、本件用地を購入する直前まで部隊が使用していた時の補償費の算定にあたり鹿追村が提出した資料によると坪当りの年間純収益は1円程度にすぎないから、購入による補償額は保安庁で定めた補償基準要綱によると、これを年利8分で除した12円50程度となるものである。
 いま、仮にこれらの適当と認められる価格で計算すれば、本件補償額との間に5181万余円の開差を生ずる。

(30)  防衛庁札幌建設部旭川支部で、昭和29年11月および30年4月、旭川燃料弾薬庫および訓練場用地として購入した旭川市近文所在の土地684,267坪の土地代金および離作、採草補償費等として旭川市山崎某ほか40名の代理人旭川市長に90,457,101円を支払っているが、土地等の評価について確たる資料を持たないまま交渉して補償費を決定したため所有者間に著しく不均衡を生じている。
 本件購入土地のうち畑地332,490坪総額56,231,356円は坪当り103円から410円(反当り約3000万円から約12万円)となっているが、本件用地は、一帯に地味のやせた丘陵地帯であって、戦後開拓用地として売り渡されたものであり、評価においてこのような開差を生ずるものとは認められないのに、農作物の種類別作付面積等について確実な資料を持たず、所有者と個別的に交渉を行なったため当局の評価によるも坪当り30円または87円50(反当り9,000円または26,250円)の原野等を畑地として評価したり、反当り収入の多い作物の作付面積を増加修正したり、うち750坪の評価にあたって畑地価格の一部である離作料を年19,057円とすべきものを190,575円と誤算したため6年分について1,029,108円高価に積算したりしたためこのような開差を生じ、このほか大部分のものについて全然計算根拠のない金額を増減して差引き1,960,163円が加算されているため、所有者間において著しく均衡を失しているもので当を得ない。
 なお、本件契約において各人別の支払明細書は実際に支払われた額と異なるものをことさら作成していたものである。

(31)  防衛庁東京建設部で、昭和30年2月および4月、大日原演習場用地の一部として購入した土地255,272坪の土地代金および離作補償費等として新潟県北蒲原郡堀越村長峰某ほか101名の代表者三浦某ほか5名に59,221,327円を支出しているが、開墾途上の畑地を普通畑と同様に評価したため約351万円が過大な評価となっている。
 右購入土地について30年5月本院会計実地検査の際の調査によると、畑地214,503坪のうちには山間部の開墾地でまだ開墾の途上にあると認められるものが約3万坪あるのに、近傍の平たん地の普通畑と同様の農業所得があるものとして離作補償費を坪当り195円総額41,966,036円と算定しているのは妥当とは認められない。
 いま、仮に開墾途上にあるものについてその農業所得を普通畑の40%として離作補償費を計算すれば坪当り78円となり、約351万円の開差を生ずることとなる。