(組織)法務本省 (項)行刑施設費
京都刑務所で、昭和29年7月、指名競争契約により株式会社中島工業所にさく井および揚水工事を請け負わせ、9月深さを変更増加し、11月工事を完成して工事費1,782,800円を支払っているが、その工事計画において慎重を欠いたため、施行された工事は不経済なものとなっている。
同刑務所は、従来水道と浅井戸を併用していたが、浅井戸の水量が不足をきたすことがあるので、深井戸を設けて右不足量を補い、さらに、水道によっていた分もこれに切り替える意図で本件工事を計画したものであるが、その調査にあたっては単に約1キロメートルを隔てた鐘ヶ淵紡績株式会社山科工場が工業用水を得る目的でさく井した際の地層図を参考としただけで、300尺掘さくすれば目的水量6,000石が得られるものとして工事に着手し、300尺を掘さくした際、確実な根拠もないのに単なる想定によって所要水量が得られないものと見込み、さらに100尺を増掘することとし、追加工事費287,800円を加え工事を完成したものである。しかるに、工事完成後水量および水質を調査したところ、水量は所要量をはるかに上回る9,400石を得られたが、水質は鉄分、雑菌が含まれているため飲料水としては不適当と判定され、悪水を排除するとして電動装置を使用し排水していたが、30年10月にいたるも飲料水に使用されず、浅井戸の補充としてはもともと過大であり不経済な工事となっている。
右は、前記山科工場でさく井した際の地層図を参考としただけで、その水質を調査しないで漫然と飲料水まで切り替える計画を立て施行したばかりでなく、当初計画に予定した300尺を掘さくした際にも水量および水質の試験を行わないで追加工事を施行し、結局、多額の経費を投じながら目的を達せず不経済となっているものである。