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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第5 大蔵省

(一般会計)


(一般会計)

(租税について)

 昭和29年度以降、国税収入に関する経理は、その合理化と過誤納金の還付金等の支払に関する事務処理の円滑化をはかるため国税収納金整理資金に関する法律(昭和29年法律第36号)に基き国税収納金整理資金によって処理されることになったので、国税収納金等はすべてこの資金に受け入れられ、過誤納金の還付金等はこの資金から支払われることとなり、資金への受入金と資金からする支払金との差額が歳入額として表示されることになった。

 29年度における国税収納金整理資金への受入金の徴収決定済額は8543億2千7百余万円、収納済額は8075億4千4百余万円であって、その収納割合94.5%は前年度一般会計租税収入の収納割合とほぼ同率であり、収納未済額は363億3千2百余万円で、既往年度分を加えると1040億5千6百余万円に達している。なお、本資金から29年度一般会計歳入へ組み入れた額は7790億7千5百余万円、29年度交付税及び譲与税配付金特別会計歳入へ組み入れた額は100億2千7百余万円である。

 本年度の国税収納金整理資金(既往年度一般会計租税収入を含む。)に対する検査は主として所得税および法人税の賦課ならびに徴収上の処置等に重点を置いて実施したものであるが、課税資料の収集活用が不十分なため課税漏れを生じたり、不注意により法規の適用を誤って徴収過不足を生じたりしていたものが見受けられる。

 右のような事例については本院において毎年指摘しており、各税務官署でも改善の跡が認められる面があるが、なお課税の公平を失することのないよう税務官署間および署内相互の連絡を緊密にし、調査の万全をはかって徴税事務の一層適確な処理が望まれるところである。

(国有財産の管理および処分について)

 国有財産の管理および処分に関する検査は、旧軍用財産である機械器具等の管理処分、船舶共有持分の管理等に重点を置いて施行した。その結果は概要次のとおりである。

(1) 処分収入および利用収入

 全国10財務局の29年度における国有財産の処分収入および利用収入の徴収決定済額は69億7千6百余万円、これに対する収納未済額は8億9千9百余万円で徴収決定済額の12%余に当り、前年度の9%余に比べて高率となっており、既往年度分の収納未済額8億4千6百余万円を合わせると収納未済額は17億4千5百余万円に達する状況で、そのおもなものは国有財産の使用料5億8千2百余万円、船舶共有持分の一部償却額および金利5億3千1百余万円、土地および建物の売渡代3億1千4百余万円である。このように収納未済額の多いのは、債務者の資力不足がおもな原因と認められるが、使用料については徴収決定の処置が遅延したこともその一因と認められる。

 右のほか、29年度末までに徴収決定すべき旧軍用財産、物納財産等の使用料で、徴収処置を講じていなかったものが約6億800万円(うち29年度分約3億4600万円)に上っている。

(2) 普通財産の管理

 全国10財務局で管理している普通財産のうち旧軍用財産、物納財産および旧雑種財産については、使用料の徴収処置をとっていないもの、財産の現地調査をしていないものがあるなどその管理についてはなお一段の努力が望ましい。

 旧軍用財産の29年度末現在額は土地187,565,671坪、建物延5,412,910坪、機械器具1,359,172個等となっているが、調査不十分なため国有財産台帳に記載されていないもの、使用中の国有機械等を無断で処分されたものおよび一定の用途に使用することを指定して売り渡しながらその用途に供されず転売されているのに適宜の処置を講じていないものがある。また、使用料の徴収決定を長期にわたり遅延しているものが多数あり、正規の手続により毎年定期に徴収決定しているものについてはその未納分に対し延滞金を徴収することとなっているのに比べて著しく不均衡をきたしている状況である。

 物納財産の29年度末現在額は土地56,851,712坪、建物延571,196坪等となっているが、そのうち貸付手続をとらないで使用させ、使用料は売渡の際徴収する方針をとっているものが多いなどのため土地5,645,561坪、建物延472,243坪に対する22年度以降29年度末までの使用料約3億2400万円が徴収決定未済となっている状況である。

 旧雑種財産の29年度末現在額は土地94,087,017坪、建物延133,293坪等となっており、このうち土地87,065,942坪、建物延43,283坪等は未利用として整理されているが、大部分は現地調査がされていないで、そのうちには財産の所在が不明なものまたは付近住民等によって農耕等に使用されているのにそのままとなっているものがある。

 また、29年度末船舶共有持分は215隻分100億1千4百余万円で、29年度中に関東ほか3財務局が船主との共有契約の条項に基いて徴収決定した持分の償却額および金利の額は5億1千4百余万円であって、前年度の7億7千2百余万円に比べると2億5千8百余万円の減少となっている。船舶共有持分の管理については、共有契約違背事項の是正、防止等その取扱に慎重を期し改善の跡が認められるが、本院において共有船舶収支決算の審査に重点を置き検査を施行したところ、総益金を誤って決定していたものが相当にあり、この面についてはなお改善の要があると認められる。