旧軍用財産で、終戦後大蔵省が引き継いだものは膨大な数量に達し、その処分については大蔵省および管下の各財務局は処理促進に努力し改善の跡が認められるが、管理についてはなお不十分と認められる事例が少なくなく、現地等の調査を徹底し一段と管理の適正を期すべきものと認められる。
本院は、国有財産台帳等の記載内容を現地施設等について確認するとともに、各施設の内容を総合的に観察し、台帳の記載漏れ等国有財産法上の処理未済の有無等について検査した結果、台帳に記載されていないもの、使用させたまま長期にわたって適宜の処置が講ぜられていないものまたは借受人等によってほしいままに処分されているのにそのままとなっているものなどの事例を指摘してその善処を促した。そのおもなものをあげると次のとおりである。
(1) 電力線路について
(60) 関東財務局で、終戦後から引続き東京都昭島市所在元立川陸軍航空廠ほか67箇所の電力線路(延長約25万メートル)を東京電力株式会社(旧関東配電株式会社)に正規の手続もなく使用させていたので注意したところ、昭和30年9月価額14,189,960円で同会社に売り渡したが、売渡時までの使用料約500万円が9月末現在まだ徴収決定されていない。
(61) 北九州財務局長崎財務部佐世保出張所および大村出張所で、昭和20年11月ごろから26年10月ごろまでの間に、元佐世保海軍軍需部干尽燃料置場線ほか24線の電力線路(亘長約2万6千メートル)を九州電力株式会社(旧九州配電株式会社)に使用させ引続き現在にいたっているが、30年4月本院会計実地検査の際の調査によると、国有財産台帳に記載されていないばかりでなく、当初から30年3月までの使用料が徴収決定されていないので注意したところ、干尽燃料置場線ほか15線(亘長11,964メートル)については7月および8月国有財産台帳に記載を了し、その使用料1,183,119円を6月および8月徴収決定し、9月末までに891,308円を収納したが、残りの元川棚海軍工廠連絡配電線ほか8線(亘長約1万4千メートル)については、9月末現在まだその処置がとられていない。
(2) 機械について
(62) 東北財務局で、昭和27年4月以降吉武化学工業株式会社に宮城県柴田郡船岡町所在元第一海軍火薬廠所属の機械18個を使用させていたが、27年10月から28年3月までの使用料が徴収決定されていないばかりでなく、27年12月ごろ本件機械のうち9個がほしいままに共栄金属鉱業株式会社ほか3名に価額687,850円で処分されているのに、30年4月本院会計実地検査当時においてもこれに対する求償の処置がとられていなかったので注意したところ、7月右機械使用料26,878円および処分された機械に対する求償額898,450円を徴収決定し、うち6,500円を収納したが、残額は10月末現在まだ収納されていない。
(63) 東北財務局石巻出張所で、昭和24年10月以降万石化学工業株式会社(旧東北発電施設株式会社)に宮城県亘理郡亘理町所在元海軍艦政本部所属の機械95個を使用させていたが、25年4月以降の使用料が徴収決定されていないばかりでなく、その一部39個はほしいままに他に処分されているのに、30年4月本院会計実地検査当時においてもこれに対する求償の処置がとられていなかったので注意したところ、右機械の25年4月から28年8月までの使用料289,951円および処分された機械に対する求償額585,300円を30年7月までに徴収決定したが、9月末現在まだ収納されていない。
(64) 東海財務局で、昭和22年12月以降オレゴン工業株式会社(旧新興電気工業株式会社)に名古屋市所在元愛知時計電機株式会社明徳工場(官設民営工場)所属の工作機械3個を使用させていたが、24年4月から30年3月までの使用料308,237円が徴収決定されていないばかりでなく、右機械のうち2個(当局の評価による30年5月の時価383,200円)はほしいままに他に処分されているのに、30年9月末現在まだ求償の処置がとられていない。
(65) 中国財務局呉出張所で、昭和21年10月以降安芸冷蔵株式会社に呉市所在元第十一海軍航空廠所属の機械11個を保管させていたが、30年7月本院会計実地検査の際の調査によると、うち7個(当局の評価による30年3月の時価521,380円)はほしいままに他に処分されているのに、30年9月末現在まだ求償の処置がとられていない。また、保管中無断使用された2個分の使用料も徴収決定されていない。