昭和29年度収納済歳入額は65億6千1百余万円、支出済歳出額は1202億4千余万円で、これに対する検査は国立学校の収納済歳入額64億9千7百余万円、支出済歳出額297億2千4百余万円ならびに義務教育費国庫負担金708億2千8百余万円および公立諸学校等施設整備に対する国庫補助金等74億9千6百余万円に重点を置いて実施した。
国立学校の経理については、とくに現金の取扱に対する検査に重点を置いた結果、国の収入金を歳入に納付することなく保有し、また、振出小切手を適宜現金化するなどしてこれを国の負担とすべきでない経費にまで使用したものがあり、このほかにも、人件費の支払にあたり、予算を超過することを知りながら、流用承認を得ることなく他科目から相当多額を支出したり、正当でない科目で支弁したり、あるいは予算をこえて外国図書を納入させて未払金を生じたりしているものなどがある。このような経理を行なったのは予算の制をみだるもので、将来厳に戒しめる要がある。
義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基く義務教育費国庫負担金708億2千8百余万円のうち教職員給与費の国庫負担金(原則として都道府県支出額の2分の1)として都道府県に対し概算払した686億3百余万円については、支払実績により30年度で精算されるものであるが、30年10月末現在なお精算の処置がとられていないし、また、28年度において概算払した同給与費の国庫負担金603億7百余万円に対しては、29年度に精算して8億2千8百余万円を追加交付している。この精算額については、交付箇所において39%、金額において49%に当る北海道ほか17都府県その精算額299億6千3百余万円を実地に検査したが、その結果、実態の調査不十分等のため精算額が妥当と認められないものがあり、超過交付となるものが北海道ほか5都県で1704万余円、交付不足となるものが青森ほか9県で455万余円ある。
右は、義務教育費国庫負担金が前記法律に基く第1年度の交付分で、法律の解釈、運用等が十分に検討されないまま実施された過渡期の処理によるものとは認められるが、都道府県から提出される基礎資料調製の指導において不十分なものがあってその取扱が区々にわたり、かつ、その調査も行き届きかねて正当と認められない国庫負担額を決定精算するにいたったものと思料される。