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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第8 農林省

(国有林野事業特別会計)


(国有林野事業特別会計)

 昭和29年度決算額は、歳入473億5千5百余万円、歳出354億9千余万円で、前年度に比べ歳入において24億1千4百余万円、歳出において22億6千8百余万円を増加している。事業損益においては120億8千8百余万円の損失を生じているが、これは主として29年5月および9月の北海道における台風による立木の被害額166億4千5百余万円を特別損失として計理したことによるものである。

 しかして、直営生産および立木処分事業においては、立木で3259万余石を処分し、直営により素材1402万7千余石、製材13万4千余石等を生産して事業費102億7千3百余万円、造林事業においては、4万3千余ヘクタールの新植および38万4千余ヘクタールの保育等を行なって事業費44億5千8百余万円、林道事業においては、林道延長656キロメートルの新設等を行なって事業費55億6千6百余万円、治山事業においては、崩壊地等復旧災害防止林造成および保安林整備臨時措置法(昭和29年法律第84号)による民有保安林5万2千余町の買入等を実施して41億7千7百余万円を支出し、また、国有林野整備臨時措置法(昭和26年法律第247号)による林野の売渡は5万1千4百余町45億5千1百余万円になっている。

 本院においては、立木および林野加工品の処分、国有林野整備臨時措置法による林野の売渡および保安林整備臨時措置法による民有保安林の買入状況に検査の重点を置き、林野庁、旭川ほか10営林局および奥士別ほか38営林署について実地を検査した結果、国有林野または公有林野官行造林地の立木の売渡にあたり、現地の調査が不十分であったため材積を過少に見積ったり、運搬経費を過大に見込んだり、用材として評価すべきものを薪材として評価したり、または用途を指定して随意契約により売り渡した木材がその用途に使用されず他に転売されたものなどがある。また、国有林野整備臨時措置法による林野の処分にあたり、関係職員が買受町村の便宜をはかり売買契約締結前に国有林の立木を処分することを認めたり、立木の材積を故意に過少に見積ったと認められる事例があるほか、職員の不正行為により国に損害を与えたものがあるのは遺憾である。

 しかして、国有林野整備臨時措置法は30年3月限りその効力を失ったものであるが、26年6月同法が実施されて以来、同法による林野売渡総面積は13万8千余町に上っており、その約92%に当る12万8千余町を地元市町村に売り渡しているが、買受市町村のうちには財政の窮乏により買受後間もなく立木を売り払ったり、なかには林地まで転売しているものなど国有林野整備臨時措置法による売渡の趣旨に違背しているものがあるから、売渡後の管理経営については常に注意を払い、林野を適正に経営させるよう指導監督する要があるものと認められる。また、保安林整備臨時措置法により買い入れた保安林5万2千余町のうちには、砂防指定地および公有林野官行造林地がその約15%に当る8千余町あるが、この種保安林のうちには一般の民有保安林と異なり、砂防法(明治30年法律第29号)または公有林野官行造林法(大正9年法律第7号)の適用により国土保全の目的を達することができると認められるものもあるから、買入地の選定についてはとくに慎重を期することが望ましい。