(昭和28年度) (組織)工業技術院 (項)科学技術研究助成費
(組織)工業技術院 (項)科学技術研究助成費
工業技術院で、鉱工業等に関する技術の研究および工業化試験を奨励助長するため、その試験研究を行う者に対し工業化試験費補助金、鉱工業技術研究費補助金として624事項1,167,500,000円(うち昭和28年度分320事項599,700,000円)を交付しているが、このうち本院において17%に相当する105事項144,350,000円(うち28年度分71事項82,850,000円)について国庫補助金交付後における試験研究の実施状況および経理の内容を実地に調査したところ、国庫補助金交付対象の採択が適切でないもの、補助の対象となった試験研究を全く実施していないもの、国庫補助金の一部を補助目的外に使用しているものがあるなど遺憾な事例が少なくない。これらは内外科学技術の進歩発展あるいは経済情勢の変転に伴うやむを得ない事情の変更に基因する場合の少なくないことを考慮に入れても、なお、国庫補助金交付前における調査が不十分であったりまたは交付後における指導監督が適切でなかったことによるものが多いと認められ、国庫補助金交付前に補助の対象となる事項の実態について十分な調査を行い、交付後においてもその実施状況について実態のは握に努め、適切な指導監督を行うことが望ましい。
いま、そのおもな事例をあげると左のとおり8件6,822,770円あるが、本院の注意によりすべて返還させることとなった。
補助費目 | 交付先 | 補助対象 | 交付年月 | 国庫補助金交付済額 | 同上のうち返納を要する額 | 摘要 | |
年月 | 円 | 円 | |||||
(1981) | 工業化試験費補助金 | 名古屋市 松島某 |
電気熔融槽窯(直接通電式)による超硬質ガラス製造法の工業化試験 | 28.12 29.3 |
6,000,000 | 2,271,000 | 試験に要する機械装置費(6,236,000円)に使用することとして交付したものであるが、中途で試験を放棄し、国庫補助金のうち2,271,000円を営業費に流用している。 |
(1982) | 鉱工業技術研究費補助金 | 新日本化工株式会社 | 5キログラム仕込における1,000デニール以上の特殊ビスコース紡糸の研究 | 28.12 | 1,200,000 | 1,200,000 | 浸漬機等の購入費(1,790,000円)に使用することとして交付したものであるが、実際は購入の事実がない。 |
(1983) | 同 | 不二音響テレビジョン株式会社 | 金属導体を用いたプリント配線方式の研究 | 28.10 | 900,000 | 900,000 | インジェクション・モールディング・マシンの購入費(1,800,000円)に使用することとして交付したものであるが、実際は購入の事実が無く国庫補助金を未使用のまま保有していた。 |
(1984) | 同 | 日本耐蝕管工業株式会社 | ステンレス熔接管の精密仕上についての研究 | 29.3 | 600,000 | 600,000 | 研究に要する機械装置費(1,330,000円)に使用することとして交付したものであるが、実際は全く使用しないで国庫補助金を保有していた。 |
(1985) | 同 | 理化電機工業株式会社 | 磁気酸素分析計の研究 | 29.12 | 500,000 | 500,000 | 電子管式平衡型抵抗記録計等の購入費(950,000円)に使用することとして交付したものであるが、実際は購入の事実がなく国庫補助金を営業費に流用している。 |
(1986) | 同 | 理化電機工業株式会社 | パラジゥム電極によるPHの計測および自動制禦装置の研究 | 29.1 | 400,000 | 351,770 | パラジゥム電極用PH指示計等の購入費(780,000円)に使用することとして交付したものであるが、実際は購入の事実がなく、国庫補助金のうち351,770円を営業費に流用している。 |
(1987) | 同 | 株式会社横河電機製作所 | 特殊鋼熱処理用重油炉の計画製禦 | 28.12 | 500,000 | 500,000 | 研究に要する構築物、機械装置の新設費(1,761,450円)に使用することとして交付したものであるが、実際は試験を日本特殊銅株式会社にその負担で実施させ、国庫補助金は全く使用していない。 |
(1988) | 鉱工業技術研究費補助金 | 中外炉工業株式会社 | 浸炭にプロパンを用いる時の変成炉と浸炭炉の研究 | 30.3 | 500,000 | 500,000 | ガス浸炭炉、変成炉の製作費(1,450,000円)に使用することとして交付したものであるが、交付当時既に本研究については米国から技術が導入され研究の要がなくなっていたものである。 |
計 | 10,600,000 | 10,600,000 |