ページトップ
  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第10 運輸省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの


(1995)−(2023) 公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの

(組織)運輸本省 (項)港湾災害復旧事業費 ほか2科目

 地方公共団体が施行した港湾工事費6,579,952,090円に対する国庫負担金または国庫補助金(以下「国庫負担金」という。)3,748,206,373円の経理および工事施行状況について、本院において全国の工事現場1,551箇所のうち、福島県ほか29都府県の工事現場998箇所を実地に検査したところ、関係当局の指導監督の強化、事業主体の自覚によって不当事項は前年度に比べ相当減少してはいるが、なお、前年度と同様設計に対し工事の出来高が不足しているもの、設計が過大なもの、災害復旧とは認められない改良工事を施行しているものなどがあり、国庫負担金を除外すべきことの判明したものが石川県ほか20府県において除外すべき額1工事10万円以上のものをあげると52工事1千6百余万円に上っていて、これを事項別に分類して示すと次表のとおりである。 

類別
府県名
改良その他国庫負担の対象としてはならないもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの 事業主体が正当な自己負担をしていないもの
類別
府県名
工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの その他
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

石川県







1

345,706



1

219,494

2

565,200

石川県
福井〃

1 302,250







1 302,250 福井〃
静岡〃

1 1,117,035







1 1,117,035 静岡〃
愛知〃

1 157,130



1 129,409

2 286,539 愛知〃
三重〃

3 577,398







3 577,398 三重〃
京都府



1 199,768





1 199,768 京都府
大阪〃 1 113,760









1 113,760 大阪〃
和歌山県

1 612,927







1 612,927 和歌山県
鳥取〃 1 160,000 2 310,310

1 302,000



4 772,310 鳥取〃
島根〃

1 153,807 2 551,674 3 586,694



6 1,292,175 島根〃
広島〃





1 299,907



1 299,907 広島〃
山口〃

3 1,061,366

7 4,468,535

1 271,270 11 5,801,171 山口〃
徳島〃

1 208,164







1 208,164 徳島〃
香川〃

3 478,405

2 300,570



5 778,975 香川〃
愛媛〃





1 578,783



1 578,783 愛媛〃
福岡〃







1 129,600

1 129,600 福岡〃
佐賀〃

1 197,450







1 197,450 佐賀〃
長崎〃 1 238,112 1 244,200

1 1,181,390 2 333,419

5 1,997,121 長崎〃
熊本〃

1 226,560







1 226,560 熊本〃
大分〃





1 120,727 1 173,420

2 294,147 大分〃
鹿児島〃 1 138,684









1 138,684 鹿児島〃
合計 4 650,556 20 5,647,002 3 751,442 18 8,184,312 5 765,848 2 490,764 52 16,489,924   計

 この種不当事項については、従来検査報告において多数指摘したところであるが、本年度においても、市町村が施行した工事について全面的にその工事の実施状況と工事費精算額の当否を重点的に検査し、あわせて都府県が施行した工事についても検査した結果、市町村が施行した工事については、表面上は実施設計額と同程度の額で請け負わせ施行したこととして国庫負担金の交付を受けているが、実際はこれより低額に請け負わせて施行し、事業主体として法令上当然負担すべきものを負担しないで国庫負担金相当額あるいはこれを下回る金額で工事を施行し、国庫負担金に剰余を生じたこととなっているものもあり、このように実際上の工事費が不当に少額となったため、工事の出来高が不足したり、工事が粗雑となっている状況である。また、府県工事においては、監督検収が不十分なため出来高に不足をきたしているものまたは工事費の精算当を得ないものが見受けられたのは遺憾である。 

 なお、設計に対し工事の出来高が不足している場合に、返納または減額に代えて手直しまたは補強工事をするとしているもののうちには、現地の状況からみてさらに検討すれば現在の出来形でも間に合い、ことさら手直しまたは補強工事をしないでも済むと認められるものもあるので、このような場合は返納または減額させることが妥当と認められ、事後処理にあたっては適正を期するよう一層の配慮が望ましい。
 検査の結果明らかになった不当事項52工事のうち国庫負担金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第6のとおり29件13,038,610円になっており、そのうち代表的な事例を説明すると次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第6に掲記した番号を示す。)。

 〔1〕 熱海市が13,850,000円(国庫負担金10,013,550円)で施行した熱海港災害復旧は、防波堤屈曲部延長21メートルの被覆捨石633立米、同ならし633平米を施行したこととしているが、実際は被覆捨石249立米、同ならし249平米を施行したにすぎず、工事費1,545,000円(国庫負担金1,117,035円)が出来高不足となっている。(出来高不足)(1998)

 〔2〕 山口県大島郡橘町(旧日良居村)が4,670,000円(国庫負担金4,030,210円)で施行した日前港災害復旧は、防波堤延長20メートルの捨石2,185立米を施行したこととしているが、実際は1,273立米を施行したにすぎず、工事費1,307,000円が出来高不足となっている。なお、工事は国庫負担金を下回る3,369,000円で施行しており、同町はその負担したとしていたる639,790円を全く負担していないばかりでなく、661,210円の剰余を生ずることとなっている。(出来高不足、事業主体負担不足)(2013)

 〔3〕 愛媛県西宇和郡伊方町(旧町見村)が7,616,000円(国庫負担金7,346,697円)で施行した鳥津港災害復旧は、防波堤延長60米の堤体の中詰石5,203立米、被覆捨石1,471立米、から石積1,012平米、天端コンクリート74立米を施行したこととしているが、実際は堤体の中詰石4,703立米、被覆捨石1,406立米、から石積977平米、天端コンクリート35立米を施行したにすぎず、工事費600,000円が出来高不足となっている。なお、工事は7,346,697円で施行しており、同町はその負担したとしている269,303円を全く負担していない。(出来高不足、事業主体負担不足)(2018)

 〔4〕 長崎県が5,984,000円(国庫補助金4,488,000円)で施行した平戸港改修は、コンクリートブロック積物揚場10メートル、護岸20メートルを直営により前記金額で施行したこととしているが、実際は5,666,517円で足りたもので、その差額317,483円は使用しないセメント133袋、47,880円および本件工事費に関係のない工事に使用した賃金、修理費157,035円に充当したほか30年5月実施検査当時112,568円を現金で保有していた。(改良工事その他国庫負担の対象としてはならないもの)(2019)

 〔5〕 同県松浦市(旧志佐町)が10,856,438円(国庫補助金8,685,150円、通商産業省所管特別鉱害復旧特別会計交付金1,085,644円計9,770,794円)で施行した黒潮港特別鉱害しゅんせつは、港内にたい積した鉱さい35,787立米をしゅんせつしたこととしているが、実際は31,273立米を施行したにすぎず工事費1,476,000円が出来高不足となっている。なお、工事は前記国庫補助金および特別鉱害復旧特別会計交付金の合計額を下回る9,379,700円で施行しており、同市はその負担したとしている1,085,644円を全く負担していないばかりでなく391,094円の剰余を生ずることとなっている。(出来高不足、事業主体負担不足)(2020)