(部)雑収入 (款)諸収入 (項)弁償及返納金
失業対策事業に対する国庫補助金は、緊急失業対策法(昭和24年法律第89号)に基いて事業主体である地方公共団体に交付されるものであるが、公共職業安定所の紹介を経た就労適格者等に対して支払った賃金および事業の実施に必要な事務費の3分の2ならびに当該年度事業に使用した資材費の3分の1(28年6月までは2分の1)を補助するもので、29年度中の交付済額は11,930,286,081円であるが、本院会計実地検査の際、国庫補助金が交付された全国1,038事業主体(29年度末現在)のうち約9%に当る北海道ほか21都府県、75市町村計97事業主体について国庫補助金の精算状況を調査したところ、補助基本額に算入してはならない経費、すなわち、労力費において就労適格者でないものに支払った賃金および基本賃金以外の手当、資材費において本事業に使用しなかった資材の経費等を補助基本額に算入して精算していたものがあり、これら補助対象外経費を控除して再計算すると、国庫補助金の返納または減額を要するものが山形県ほか12都府県(注)
において7,657,580円あり、そのうち1事業主体20万円以上のものをあげると左のとおり11件6,883,212円になっている。
(注)
山形、千葉両県、東京都、静岡、愛知両県、京都、大阪両府、兵庫、和歌山、広島、山口、徳島、愛媛各県
都府県 | 事業主体 | 事業 年度 |
区分 | 補助基本額 | 国庫補助金交付済額 | 補助基本額から控除すべき額 | 国庫補助金交付済額中返納または減額を要する額 | 摘要 | |||
(2055) | 山形県 | 山形市 | { | 28 | 労力費 | 円 25,265,104 |
円 16,869,404 |
円 292,002 |
円 194,668 |
補助対象外である民間家屋の移転に要した労力費および事業に使用しなかったセメント代を計上したことによるもの |
|
28 | 資材費 | 1,823,404 | 668,000 | 493,425 | 164,475 | ||||||
計 | 27,088,508 | 17,537,404 | 785,427 | 359,143 | |||||||
(2056) | 東京都 | 東京都 | 29 | 資材費 | 407,871,839 | 135,615,652 | 5,616,094 | 1,530,404 | { |
事業に使用しなかった砕石代等を計上したことによるもの | |
(2057) | 静岡県 | 清水市 | 28 | 同 | 4,155,260 | 1,422,000 | 963,782 | 308,860 | { |
事業に使用しなかったセメント代等を計上したことによるもの | |
(2058) | 愛知県 | 豊川市 | { |
28 | 資材費 | 600,999 | 185,000 | 600,999 | 185,000 | { |
国庫補助金の交付を受けた排水路整備事業を実施しなかったことによるもの |
28 | 事務費 | 258,596 | 71,200 | 258,596 | 71,200 | ||||||
計 | 859,595 | 256,200 | 859,595 | 256,200 | |||||||
(2059) | 大阪府 | 大阪市 | { |
28 | 労力費 | 620,871,751 | 421,647,800 | 668,977 | 445,985 | 失業対策事業就労者に支払った基本賃金以外の超過勤務手当を計上したことによるもの | |
29 | 同 | 650,145,413 | 439,367,250 | 1,212,283 | 808,187 | ||||||
計 | 1,271,017,164 | 861,015,050 | 1,881,260 | 1,254,172 | |||||||
(2060) | 兵庫県 | 兵庫県 | 29 | 資材費 | 44,064,522 | 15,434,000 | 1,662,055 | 554,018 | { |
事業に使用しなかった割ぐり石代等を計上したことによるもの | |
(2061) | 同 | 神戸市 | 28 | 同 | 13,786,264 | 5,394,000 | 1,866,344 | 663,639 | { |
市の単独事業に使用したコンクリート代等を計上したことによるもの | |
(2062) | 山口県 | 下関市 | 28 | 同 | 12,798,019 | 4,537,000 | 1,508,448 | 532,806 | { |
失業対策事業以外に使用したセメント代等を計上したことによるもの | |
(2063) | 徳島県 | 徳島県 | 28 | 同 | 8,468,000 | 2,950,000 | 1,621,441 | 536,814 | { |
集計に誤計算があり、また、補助対象外の木炭代等を計上したことによるもの | |
(2064) | 愛媛県 | 愛媛県 | { |
28 | 労力費 | 21,986,351 | 14,815,258 | 1,019,697 | 411,266 | 県の常よう人夫の賃金等および県の単独事業に使用した砂利代等を計上したことによるもの | |
28 | 資材費 | 4,540,828 | 1,577,000 | 795,702 | 265,234 | ||||||
計 | 26,527,179 | 16,392,258 | 1,815,399 | 676,500 | |||||||
(2065) | 愛媛県 | 北宇和郡来村 | 29 | 資材費 | 1,364,953 | 445,000 | 662,418 | 210,656 | { |
補助対象外の用地補償費および土地買収費を計上したことによるもの | |
計 | 1,818,001,303 | △1,060,998,564 | △19,242,263 | △6,883,212 |
このような事態を生じたのは、各都道府県職業安定主務課の事業主体に対する指導監督が十分でなく、かつ、労働省における本事業の認証および精算の審査について注意が行き届かなかったためと認められ、今後一層の努力が必要である。
なお、失業対策事業の指導監督事務補助金についてみると、国庫補助金に県費、寄付金を合わせて国の施設である公共職業安定所またはその分室もしくは出張所の庁舎を建築していたものが、宮城、静岡、兵庫3県分で国庫補助金1,340,303円に上ったが、右国庫補助金は都道府県の職業安定主務課が管内の事業主体を指導監督するに必要な事務費(旅費、文具費、臨時職員の人件費等)に対し補助するものであるから、その補助目的を逸脱したものと認められ、仮に失業対策事業の実施に関連しやむを得ないとしても正規の予算処理を講じて実施すべきである。