日本電信電話公社の昭和29年度における損益は、営業損益において利益168億3千2百余万円、営業外損益において利益3億9千8百余万円であって、172億3千1百余万円の純益となっている。この額を28年度の純益50億7千9百余万円に比べると121億5千1百余万円の増加となっている。
右増加利益の内訳は、営業利益の増加86億8千余万円、営業外利益の増加34億7千余万円であって、営業利益の増加は収益面で電話加入者数の増加と、28年8月の料金値上げ等による収入の増加があり、費用面で物品費および減価償却費等の減少があったためであり、営業外利益の増加は収益面で雑益が増加し、費用面において財産除却費の減少があったためである。
いま、雑収入を除いた29年度の営業損益の結果を事業別にみると、電話事業においては、前記の事由により収入は前年度に比べて、141億4千4百余万円の増加となっており、収支率(収益に対する費用の割合)も前年度の82%から76%と向上しているが、予定収入に比べるとなお33億7千2百余万円の減収となっている。電信事業においては、取扱通数の減少等によって収入は前年度に比べて3億3千4百余万円、予定収入に比べて7億3千9百余万円の減収で、収支率も前年度の207%から214%に低下しており、今後電報中継の機械化等による経営の合理化を一層促進する要があると認められる。
29年度中に、人員整理に伴う退職職員の優遇処置として臨時嘱託手当4億4千9百余万円を管理共通費等の費目から支出し、予算総則で定められた給与総額をこえて給与を支出した結果となっているものがある。
(建設工事について)
29年度における建設勘定の予算額は574億1千1百余万円(前年度からの繰越額38億5千余万円を含む。)、支出決定済額は519億3千3百余万円で、36億5千2百余万円を翌年度に繰り越し、18億2千5百余万円を不用額としている。
支出決定済額は、予算額に対し90.4%であり、閣議決定による節約額16億7000万円を考慮すると93.1%となり、良好な進ちょく率を示している。
また、支出決定済額のうち、未完成工事額は87億9千6百余万円で16.9%を占めているが、前年度の129億1千6百余万円の21.3%であったのに比べて減少している。
電信電話拡充5箇年計画の第2年度として29年度末までに施行した電話関係工事は、新電話局51局の建設計画に対し50局を実施し、加入者の新増設は280,000名の計画に対し、45万余名を施行して順調な進ちょくを示しているが、そのうちには調査が十分でなかったため不経済な工事を施行し施設が遊休化しているものなどがある。
電報中継機械化については、29年度末までに14局の計画に対し、わずかに5局を完成しているだけで、その進ちょくは十分でなく、現在工事中の5局を早急に完成するとともに中継化の完成による経費の節減についてもまだ成果が認められない状況であるからその成果をあげるよう努力することが望ましい。
29年度における貯蔵品の購入額は、303億9千9百余万円であって、その大部分は契約前に品名、数量等を内示して随意契約により購入しているものであるが、購入価格の決定については原価のは握が十分でないなど必ずしも実情に即していないものがある。
29年度末の貯蔵品の在庫量は、82億6千8百余万円で、28年度末の101億5千9百余万円に比べて約18億円の減少となり、他方、年間の購入額は303億9千9百余万円であるのに対し、使用局所への払出し決算額は345億2百余万円となっていて、その差引額41億3百余万円と前記年度末在庫量の対前年度減少額との差額約22億円は新規に購入することなく在来の整理品または事業品を活用したものである。
また、貯蔵品の回転率は28年度の4.57に対し29年度は3.57と低下しており、とくに、施設用物品のうち工事現場直納品を除いた常備物品の回転率は1.65で良好とは認めがたい。そのおもな原因は工事の中止、変更および要求数量の見込違い等により物品を過剰に保有したためであって、今後その活用を推進するとともに死退蔵物品の排除に努力する要がある。
その他物品の調達時期と工事施行上の所要時期とのずれを調整するため、購入物品を納入させないで共同倉庫株式会社に保管させたものは年間約39億円あり、その保管料は約3100万円に達しているが、周到な計画と緊密な連絡によりその低減をはかる要がある。