物品の購入にあたっては、実情に即した合理的な予定価格を算定し、購買資金の低減をはかる要があるが、検査の結果によると、その大部分が随意契約であるのに、統制額が撤廃されてからは廃止当時の統制額あるいは古い原価計算をその後の物価の変動に応じてスライドさせて予定価格としているものが多いので、毎年多額の購入を行うものについては、適確な価格を算定すれば相当額の節減をはかることができたと認められるものがあり、また、荷造こん包、運送費等のように、実態を考慮すれば低減の余地が認められるものもあるなど予定価格の積算が必ずしも実情に沿わないので購入価額が高価となっているものが次のとおりあるが、資金の効率的、経済的使用についてはなお一層の努力が望ましい。
(2236)
日本電信電話公社で、昭和29年3月から30年9月までの間に、随意契約により日本電気株式会社ほか2会社からA型度数計238,151個を合価321,887,661円(うち30年度分136,764,318円)で購入しているが、価格の検討等が不十分であったため約4000万円が高価になっているとともに、13,000個合価17,571,000円のものは必要以上に設置されている。
右A型度数計は、1個当り1,366円または1,349円で購入したものであるが、本件各納入会社について、本院においてその販売原価および下請価格を調査のうえこれにより価格を計算したところ、1個当り1,181円程度を相当と認められ、同公社の購入単価はこれに比べて高価に失するものである。
このような結果をきたしたのは、購入にあたり価格の決定を単に旧統制額の物価変動によるスライドだけに依存し、適正原価のは握等価格の検討が不十分であったことによるものであって、いま、仮に本院で計算した前記価格で契約したとすれば1個当り170円程度総額において約4000万円は低額に購入することができたものである。
なお、A型度数計の設置状況をみると、29年6月から30年9月までの間に施行した東京新宿地区電話局新宿分局ほか4箇所(注)
の分局開始および自動改式工事により新たに設置した端子数の合計は43,000個であるのに、いずれも設備端子数をこえて合計56,000個を設置し、差引き13,000個価額17,571,000円のものが過大となっている。
(注) 東京新宿地区電話局新宿分局、静岡、岐阜両電話局、川崎、一宮両電報電話局
(2237)
日本電信電話公社で、昭和29年2月から12月までの間に、随意契約により久保田鉄工株式会社ほか2会社から75ミリおよび100ミリ鋳鉄直管総数180,609本を価額560,409,890円で購入しているが、原価のは握が不十分で予定価格の積算が当を得なかったため約4400万円高価となっていると認められるものがある。
右鋳鉄直管のうち、75ミリ管は、29年4月から6月までは1本当り2,800円、7月から12月までは2,700円で計142,130本393,038,200円、また、100ミリ管は、29年2月は4,440円、6月は4,290円、8月から10月までは4,130円で計38,479本167,371,690円を購入しているが、予定価格の積算にあたり、25年7月鋳鉄直管等の統制額(補給金トン当り8,800円を含む。)撤廃直後、75ミリ管については当時の統制額1本当り1,221円(トン当り20,880円)を基準として業者の提出した原価計算書による価格トン当り28,350円から約1000円を引き下げてこれに運賃を見込み1本当り1,600円(32%値上り)、100ミリ管については28年9月同じく業者の提出した原価計算書による価格トン当り54,000円から約1000円を引き下げて1本当り4,440円(運賃込み)とそれぞれ決定した。その後価格の改定については、主要材料である銑鉄の価格(主として建値によっている。)の変動を加味し、あるいは銑鉄の価格に変動がない場合でも水道管の市況に変動があった場合にはこれを勘案して改定を行うなど単に物価変動によって価格をスライドする方法で予定価格を決定し、その間鋳鉄直管の原価を十分は握していなかったため適正な予定価格を決定することができず前記価格で購入したものであるが、本院の調査によれば、29年2月における75ミリ管は1本当り2,576円、100ミリ管は3,983円程度が相当と認められ、これに比べ購入単価はいずれも相当高価となっている。いま、本院の調査した価格により計算すると、本件購入価額は約4400万円高価になるものと認められる。
なお、右のうち29年2月15日および16日1本当り4,440円で購入契約を締結した100ミリ管26,674本についてみると、契約締結前の同月12日鋳鉄直管の予定価格1本当り4,440円を4,290円に改定する案が立案されていたのであるから、その決定を待って新価格により契約すべきであったのに、部内の連絡が不十分なためこれを決定した18日に先だち旧価格4,440円により価額118,432,560円で契約したもので、前記のような予定価格の積算についての良否は別としても新価格により購入した場合に比べ約400万円が高価になるものと認められる。
(2238)
日本電信電話公社で、昭和29年4月から30年7月までの間に、随意契約により沖電気工業株式会社ほか5会社から4号型電話機総数441,630台(単価4号A型5,881円、4号C型4,747円)計2,533,721,790円(うち30年度分159,430台929,556,190円)で購入しているが、予定価格の積算にあたり、実情に即しない荷造こん包費および運送費を積算したため約2250万円が高価となっているものがある。
右電話機は、全国11箇所の各資材配給局に納入するもので、予定価格の積算にあたり荷造こん包費を電話機はすべて木箱でこん包するものとして1台当り147円44と積算しているが、そのうち東京、関東両資材配給局納入分189,580台は、従来から木箱を使用しないで段ボール箱のまま納入されているものであり、また、運送費についてはプール計算により運送区間を全国50箇所の各電気通信部までとして平均距離480キロメートルとし、1台当り50円10を積算しているが、現品納入箇所である各資材配給局までを積算すれば足り、その平均距離は298キロメートルであって、このように実情に即しない荷造こん包費等を積算したため高価に購入する結果となったものである。
いま、仮に実情に即した仕様に基いて積算したとすれば、当局の計算によっても東京、関東両資材配給局納入分の荷造こん包費は1台当り51円75、また、運送費は40円10程度で足り、荷造こん包費において約1810万円、運送費において約440万円計約2250万円は節減することができたものである。
(2239)
日本電信電話公社で、昭和29年3月から30年8月までの間に、随意契約により信利興業株式会社ほか8会社から各種端子函110,158個を価額297,912,474円(うち30年度分49,998個134,589,684円)で購入しているが、予定価格の積算にあたり実情に即しない荷造こん包費を積算したため約710万円が高価となっているものがある。
右端子函は、全国の各資材配給局に納入するもので、その荷造こん包費として、5対および10対端子函についてはおのおの4個を、15対および20対端子函についてはおのおの2個をそれぞれ組み合わせ、木箱およびむしろ、なわで外装することとして端子函1個当り131円から193円を積算しているが、実際の納入はいずれも木箱を使用することなく、端子函をそれぞれ2個ずつ組み合わせ、背面板を利用し、すぎぬきを数枚打ち付けているだけであり、地方発送の分はこれにむしろおよびなわをかけている程度で、きわめて簡略な方法で実施している状況であって、このような実情に即しない荷造こん包費を積算したため高価に購入する結果となったものである。
いま、仮に実情に即した仕様に基いて積算したとすれば当局の計算によっても東京、関東両資材配給局納入分は1個当り45円56から46円91、その他の各地方資材配給局納人分は95円73から108円89程度で足り、約710万円は節減することができたものである。