国民金融公庫の昭和29年度中の新規貸付実行額は420億9千8百余万円で、これから回収額324億5百余万円を差し引いた年間純増加額は96億9千3百余万円に上り、年度末貸付残高は64万2千余件404億2千9百余万円となっている。
本年度においては一応9億4千5百余万円の利益をあげ、そのうち6億1千8百余万円を滞貸償却引当金等に繰り入れ、残額3億2千7百余万円を国庫に納付した。
しかして、年度末における6箇月以上の元金延滞額は23万3千余件50億3千3百余万円で、年度末貸付残高に対し件数において36.3%、金額において12.4%の割合となっており、延滞件数の割合が多いのは、主として少額の更生資金貸付の延滞が多いことによるものであり、前記延滞額に対し件数において76.3%、金額において45.7%になっている状況であるから適当な処理が望ましい。
本院においては、30年4月から9月までの間に、東京支所ほか16支所の検査を実施した結果、大口貸付けのうちには銀行その他一般金融機関との間に多額の取引を行なっているもの、他の政府関係機関から貸付けを受けているもの、多額の現金、預金等を保有しその他経営の状態からみて資金繰りに余裕があるとみられるものなどが相当見受けられるが、右は、銀行その他一般金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対し小口生業資金を貸し付けることを目的とする法律の趣旨に沿わないばかりでなく、同公庫の資金量が不足している際この種貸付けはできるだけ抑制すべきものと認められる。