農林漁業金融公庫の昭和29年度中の新規貸付実行額は、土地改良事業資金119億5千余万円、造林、伐採調整および林道資金35億7千3百余万円、漁港施設および漁船資金22億2千5百余万円、製塩施設資金10億9千5百余万円、農林漁業者の共同利用施設資金55億5千5百余万円、その他3億7千6百余万円計247億7千7百余万円で、これから回収額69億4千1百余万円および滞貸償却額3百余万円を差し引いた年間純増加額は178億3千3百余万円に上り、年度末貸付残高は756億2千6百余万円になっている。
本年度においては、一応1億1千5百余万円の利益をあげたが、これを全額滞貸償却引当金に計上したため国庫に納付すべき利益金はなかった。
本院においては、30年2月から8月までの間に2,208件88億6千4百余万円の貸付金について実地に調査した結果、審査または管理が不十分と認めて指摘したものが519件13億7千1百余万円あり、このうち同公庫では182件2億1千4百余万円については是正の処置を済ませている。
このような事態が発生しているおもな原因は、同公庫の貸付けは貸付対象事業に補助金の交付があったときは一定額を繰上償還させることになっているのに、補助金を交付する都道府県との連絡が緊密を欠いていること、内部監査が必ずしも十分でないこと、受託金融機関の自己の責任に対する自覚および事実の確認についての努力が十分でないことによるものと認められ、今後一層の努力が望ましい。
なお、地方公共団体において当初国の補助事業として施行した工事が、その後本院会計実地検査の結果設計に対し出来高が不足しておりまたは施行が粗漏であると指摘されたためこの手直しに要する資金を農業協同組合に対し貸し付けているものがあるが、一応国庫補助金の交付を受けて完成する予定の工事を手抜して施行したものに対しこの手直しに要する資金を貸し付けることは、財政資金が財源である農林漁業資金の貸付対象としては適当でないものと認められる。