(昭和29年度)(農林省)(組織)農林本省(項)北海道開拓事業費ほか3科目
(農林省)(組織)農林本省(項)北海道開拓事業費ほか1科目
北海道開発局で、事業費の全額を支出し開拓事業の一部を代行工事として北海道に実施させているものがあるが、本院において、昭和31年中、これら代行工事施行地区355箇所のうち28.5%に相当する101地区を実地に検査したところ、現場監督および検収が不十分なため工事の施行が粗漏で手直しを要するものや、工事の出来高が不足しているのに設計どおり完成したものとして請負代金の全額を支払っているものが多く、また、工事費の積算においても現地の調査が不十分であったり計算を誤ったため積算が過大となっているものなどがあり、不当金額1工事10万円以上のものを集計すると40工事15,637,246円に上っている。
北海道における代行工事は、気候、風土、土質等の自然的条件や開拓途上にある多くの未開発地の存することなどにより、工事の種類、施行の方法等も素掘の排水路または切盛だけの道路等単純な土工工事を主とするものが内地に比べ一層多く、したがって、開拓者に現金収入を得させるなどのため工事の大部分を地元の開拓農業協同組合等に施行させているものであるが、その実施状況をみると、工事費の一部を組合に留保しこれを組合の一般経費に充てているものが多く、なかには組合自ら工事を施行しないで建設業者に下請けさせているものもあり、したがって工事の出来高も全般的に不良となっている。とくに、この傾向は抜根、客土、暗きょ排水等開拓者個人の所有耕地に行われる工種よりも農道、明きょ排水等公共的な施設の工事において顕著であり、施行の粗漏なものも相当に見受けられた。
しかして、検査の結果明らかになった不当工事のうも、不当金額1工事20万円以上のものをあげると別表第1のとおり24件13,751,086円であるが、このように多数発見される不当事項の発生原因としては、支出庁である北海道開発局が現場監督および検収をほとんど行うことなく北海道の請求により工事費と代行料を支払うにとどまり、また、工事を施行する北海道においてもこれが実施を工事現場の所在する支庁に一任し、工事の監督、検査等をほとんど行なっていないことによるものと認められる。
いま、前記不当事項のうち、代表的な事例をあげると次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第1に掲記した番号を示す。)。
(1)トムラウシ開拓農業協同組合ほか1会社に13,777,000円で請け負わせたトムラウシ地区幹線道路工事は、延長7,772メートルを新設するもので、うち5,296メートルの盛土5,604立米は60メートル、砂利866立米は2.5キロメートルまたは3キロメートルそれぞれ運搬したこととしているが、実際は盛土は切土の流用で、砂利はその大部分を0.5キロメートルから1.5キロメートル運搬すれば足りたため1,084,000円が設計過大となっている。また、延長2,476メートルの切土1,998立米、盛土3,899立米を施行したこととしているが、実際は切土604立米、盛土2,104立米を施行したにすぎず1,023,000円が出来高不足となっている。
なお、同組合は右のうち3,967,000円で請け負った工事を3,139,755円で施行し、残額827,245円は組合の一般経費に充当している。(設計過大、出来高不足)(23)
(2)羽幌町開拓農業協同組合に5,384,000円で請け負わせた羽幌原野地区幹線道路工事は、道路延長1,287メートルを新設するもので、うち橋りょう5箇所の橋台および路側の練積石垣1,254平米は平米当り胴込コンクリート0.08立米から0.23立米総量180立米、裏込砂利0.24立米または0.25立米総量302立米を施行したこととしているが、実際はうち1,006平米は平米当り胴込コンクリート0.06立米から0.14立米総量92立米、裏込砂利0.1立米総量100立米を施行したにすぎず、247平米は裹込砂利平米当り0.1立米総量24立米を施行しただけで、胴込コンクリートは全く施行していないなどのため646,067円が出来高不足となっている。また、盛土3,150立米は300メートル運搬することとして立米当り264円を積算しているが、実際はうち2,624立米は切土の流用が可能で立米当り88円から246円を見込めば足りたなどのため562,606円が設計過大となっている。
なお、同組合は工事を4,841,178円で施行し残額542,822円は組合の一般経費に充当している。(出来高不足、設計過大)(27)
(3)今金町開拓農業協同組合に1,228,000円で請け負わせた美利河地区幹線道路28年災害復旧工事は、道路延長240メートルを復旧するもので、うち練積石垣は452平米を控35センチメートルの玉石を使用し、平米当り胴込コンクリート0.15立米総量69立米、裏込ぐり石0.4立米総量183立米で施行したこととしているが、実際は398平米を控30センチメートル程度の玉石の控を面に使用し、胴込コンクリートは土砂交りの骨材を使用した粗悪なもので3分の2程度、裏込ぐり石は平米当り0.18立米総量73立米で施行したにすぎないなど工事の施行が粗漏なため既に各所にき裂を生じ998,051円に相当する工事が災害復旧の目的を達していない。(粗漏工事)(28)