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  • 昭和30年度|
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工事の施行にあたり処置当を得ないもの


(33)−(36)工事の施行にあたり処置当を得ないもの

 (昭和29年度) (組織)防衛庁 (項)保安庁施設費
 (組織)防衛庁 (項)防衛庁施設費
 防衛庁の昭和30年度建設工事関係支出済額89億4千2百余万円(うち建設省および北海道開発局に委託施行したもの30億3千5百余万円)のうち約25%について実地に検査を実施し、航空自衛隊の急速な拡充に伴い著しく増加した飛行場滑走路の増設、補修等航空基地関係の工事について重点的に検討したが、その結果、滑走路のこう配変化がはなはだしいもの、凹凸著しく砕石が露出しているものなどその目的に対し不適切と認められるものがある。
 これらの原因は、工事の設計にあたり十分検討しないで実施に移すことにあると認められるが、この種工事の経験に乏しい事情はあるとしても、施設の利用上受ける不都合、不経済は少なくないことでもあるから、いたずらに着工を急ぐことなく慎重に検討して施行する要がある。
(貯油槽工事の施行にあたり処置当を得ないもの)

(33)  防衛庁東京建設部で、昭和29年8月、指名競争契約によりトキコ油器株式会社に霞ケ浦貯油槽補修工事を12,857,105円で請け負わせ施行しているが、工事の監督、検収にあたり適切を欠いたため工事の施行目的を達しているとはいいがたいものがある。
 右は、20年ごろから全く使用されていなかった鉄板びょう打構造の容量各200キロリッルの貯油槽40基を使用するため油漏を完全に防止することを目的としてびょう打継目全般にわたり油槽内部からみぞ型鋼を当てて溶接することとし、29年12月設計仕様どおり完成したものとして検収し前記金額を支払ったものであるが、30年1月貯油を開始したところ漏えいすることが判明し、前記会社に手直しさせることとしたが、設計どおり溶接を行うことは発火の危険があって不可能であるとし、応急処置としてポリエステル樹脂を塗布し、これをもって手直しを了したこととしたものである。
 本件工事は特殊な溶接作業を主とするものであるから、業者の選定にあたってはとくに経験のある業者を指名すべきであるのにその選択が適切であるとは認められず、また、作業に従事する者は1級溶接工の資格を有する者となっているのにその資格を認められない者も作業したばかりでなく、しゅん功検査にあたっても、1基についてだけこれを行なったにとどまり、他の39基については工事施行中に行われた現場検査の結果を信頼してこれを省略したものであるが、この現場検査にあたっても、漏えい箇所の有無を発見するために使用した粉石けん液の張力、粘度等重要な点が明らかにされていないなど工事監督およびしゅん功検査において適切を欠いたため前記の結果を招来したものと認められる。

(滑走路工事の施行にあたり設計が適切を欠いているもの)

(34)  防衛庁東京建設部で、昭和30年8月から31年5月までの間に、指名競争契約または随意契約により株式会社地崎組に浜松施設整備のうち滑走路増設その他工事ほか2工事を総額293,501,167円で請け負わせ施行しているが、滑走路工事の施行にあたり設計当を得ないため約450万円が不経済となっている。
 右工事は、陸上自衛隊航空学校が使用していた浜松航空基地施設を航空自衛隊がジェット機飛行場として使用することとなったため滑走路および誘導路の増設延長、改修工事を行うもので、当初の計画は、既設滑走路1,400メートルをそのまま使用し、これに接続して新たに1,076メートルを増設することとして新設部分と既設滑走路接続部分とのこう配変化率を許容限度「30メートルで0.167%」の範囲で接続する設計としたが、30年12月既設滑走路も改修のうえ使用することに変更し、その際右の増設部分がほとんどしゅん功していたので、これを接続するために既設滑走路部分を多量にすき取ることとなったものである。

 しかし、本滑走路は「F−86」ジェット戦闘機が使用するための増設改修工事であるから、増設工事着工当初において既設滑走路の改修が将来必要となることは予想されたところであって、当然この見とおしのもとに計画すべきであり、また、増設部分だけで打ち切って既設部分をそのまま使用する場合にも比較的支障のない、かつ、経済的な設計でなければならないもので、このような計画のもとに設計をしておれば、そのこう配は「30メートルで0.09%」程度のはるかに良好なこう配で施工することができるばかりでなく改修箇所の切土量が著しく減少し、本件の設計に比べ経済的に施工することができたものである。
 いま、仮にこのような設計をしたとすればこう配変化は当局の設計に比べはるかに良好な「30メートルで0.09%」程度となり、工事費は少なくとも約450万円を節減することができたものである。

(35)  防衛庁福岡建設部で、昭和30年11月、指名競争契約により株式会社大林組に築城飛行場滑走路その他整備工事を245,417,000円(当初契約額238,000,000円)で請け負わせ施行しているが、設計当を得ないため滑走路面が平滑を欠き航空機タイヤの損耗がはなはだしいなど著しく不経済な結果となっている。

 右工事は、延長1,600メートル、幅員40メートルの既設アスファルト滑走路を補修し、その両端を250メートルずつ延長してコンクリート舗装するなどの工事で、うち滑走路補修工事は31年1月末までの工期で、既設アスファルト滑走路の凹凸き裂を補修し、厚さ約1センチメートルから15センチメートルの舗装を行うものであるが、このうちシールコートおよびアスファルトコンクリート工事17,645,100円についてみると、その設計は舗装の下部をアスファルトコンクリートで施行し、十分転圧のうえ上部にシールコートとしてアスファルト、チップ(細砕石)を交互に2回散布するもので、これに使用するチップの粒度は15ミリメートルふるい通過100%、10ミリメートルふるい通過95%から100%、5ミリメートルふるい通過5%までとし、仕上げの厚さを1.2ミリメートルから2ミリメートルとしている。

 しかし、下層のアスファルトコンクリートを仕様書に従って十分転圧した上に、このように大部分を5ミリメートルから10ミリメートルの粒度の大きいものでシールコートを二層施行し、しかも最高厚さ2ミリメートルに仕上げるのは無理な設計であり、防衛庁で飛行場設計の指針としている「デザイン・オブ・コンクリート・エアポート・ペーブメント」によっても、また、運輸省航空局の設計も同様に2ミリメートルから5ミリメートルのチップを使用することとしている状況で、本件のように大きな粒度での設計はあまりその例をみないところであり、結局、実際に施行された舗装面が全般に平滑を欠きチップの落着きが悪く、他方、これを使用した航空機のタイヤの損耗が著しくなっている。その原因は、主として粒度の大きいチップで施行したためと思料される。いま、「T−33」ジェット練習機のタイヤについてその使用実績をみると、従来タイヤ1本当り降着回数平均20回程度であったものが、31年2月14回、3月10回、4月12回および5月13回で2月から5月までの平均は12回程度となっており、業者の負担で2ミリメートルから5ミリメートル程度のチップ約80立米を使用して一部応急処置をした6月以降においても、補修前の回数を下回っている状況である。

(電力引込線工事需要者負担金の精算にあたり処置当を得ないもの)

(36)  防衛庁福岡建設部で、昭和30年1月、大分弾薬支処電力引込線工事の需要者負担金の概算払として7,213,000円を九州電力株式会社大分支店に支払っているが、同会社が所定の工事をしていないのにそのまま精算を了しているものがある。
 右は、同会社に大分弾薬支処の電力専用線設備として、延長約7,100メートルの間に、三相交流3,000ボルトの受電に必要な38平方ミリメートル硬銅線を架設させる工事に対し支払った需要者負担金で、同年2月同会社が所定の工事を完成したものとして概算支払額と同額で精算を了したものであるが、31年5月本院会計実地検査の際の調査によると、同会社はこの工事を施行しないで、別に同会社が30年1月同弾薬支処弾薬庫建設工事の請負業者との臨時電力供給契約により2,500,000円で架設した60平方ミリメートル送電線を本件工事に充てていたのに、工事完成の確認を行わないで同会社の請求書どおり精算を了したもので処置当を得ない。
 なお、本件送電線は3,000ボルトで受電するものとして38平方ミリメートル線を架設する計算で前記金額を算出したものであるが、同弾薬支処はその後受電圧が3,000ボルトから6,000ボルトに改められており、したがって送電線も22平方ミリメートル線で十分足りる計算となるのであわせて注意したところ、同建設部では送電線を22平方ミリメートル線に変更のうえ、改めて同会社に工事を行わせ、その差額1,456,000円は31年9月歳入に納付した。