(組織)防衛庁(項)防衛庁
防衛庁調達実施本部で、陸上幕僚監部の要求により、昭和31年1月、随意契約により株式会社日本電子光学研究所代理日新通商株式会社東京支店から高周波焼入装置1組を価額8,590,000円で購入しているが、その契約方法が適切でなく、また、予定価格の積算も当を得なかったため少なくとも約110万円が高価となっている。
右装置は、最大出力85キロワットの高周波焼入装置で、陸上自衛隊施設補給処における各種施設器材の修理用として購入したものであるが、随意契約によった理由は、仕様書によって前記日本電子光学研究所以外は製作することができないと認めたためであるとしているが、この調達を要求した陸上幕僚監部において本件装置構造の仕様を便宜同研究所の製品にならって作成しただけのものであるから、要求性能の範囲内において仕様を共通なものに改めることも可能と認められ、同幕僚監部においても同研究所ほか2会社においてその製作が可能であるとして3会社による指名競争を希望していたものであるのに、これを十分検討することなく随意契約によったのは当を得ない。
また、本件予定価格8,590,000円のうち材料費5,536,675円の積算についてみると、とくに製造業者およびその品種を指定したタンクコンデンサー、真空管冷却用ポンプ、焼入冷却水用ポンプ、フィラメントトランス、高圧変圧器の5点はいずれもその製造会社の販売価格に比べ1.1倍から3.2倍、タイマー、位相調整器および型代は1.6倍から3.7倍となっており、また、加熱用コイルは前記研究所の提出した見積りに比べ5倍となっていて、その他の材料については当局の算定を認めたとしても合計4,599,675円が相当と認められ、約93万7,000円が過大に積算されたこととなっている。
これについて当局は、製造業者の一般管理費および営業費が当局の標準率13%により算定した額を上回るのでその超過額を材料費に含めて認めたものであるとしているが、右標準率はこの種の電気機器購入の場合の一般管理費等の率として一般に用いているもので、とくに本件において前記材料費に含めたものを合わせ38.5%の多額な一般管理費等を認める要はないものである。
いま、材料費については前記4,599,675円により、加工費その他についても過大な積算と認められるものがあるがこれを採用して予定価格を積算したとすれば7,468,218円となり、結局、本件購入価額は少なくとも約110万円高価となる計算である。