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  • 昭和30年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
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普通財産の管理当を得ないもの


(85)−(93) 普通財産の管理当を得ないもの

 (1) 機械器具について

(85)−(90) 本院において、昭和31年中、旧軍用財産のうち機械器具の管理に重点を置きおもな管理箇所について調査したところ、保管人等によりほしいままに処分されているのにそのままとなっているもの、または無断使用されているものなどが依然として発見され、それぞれ是正処置を促したが、そのおもな事例をあげると次のとおり6件である。

(85)  関東財務局で、昭和22年8月以降東京都立衛生研究所ほか3名に東京都新宿区所在元第六陸軍技術研究所の給水施設(土地21坪、建物7坪、機械器具72個)を使用させているが、その31年3月末までの使用料約53万円は9月末現在まだ徴収決定されていない。

(86)  東海財務局熱田出張所で、昭和23年12月以降森某に名古屋市所在元愛知時計電機株式会社明徳工場(官設民営工場)所属の機械25個を使用させていたが、24年2月ごろ右機械のうも24個(当局の評価による24年2月の時価1,518,100円)はほしいままに他に処分されているのに、31年9月末現在まだ求償の処置がとられていない。

(87)  東海財務局熱田出張所で、旧軍が株式会社豊田自動織機製作所(栄生工場)に貸与していた元名古屋陸軍造兵廠ほか1箇所所属の機械37個を、終戦後は同会社に無償で保管させているとして整理しているものがあるが、同会社は昭和23年6月に連合国軍からの使用許可をとり、その後は逐次前記機械を使用しまたは他に貸し付けているのに、30年2月にいたってようやく国有財産台帳に引継漏れを発見して記載しただけで貸付等正規の手続をとっていないばかりでなく、使用開始時から31年3月末までの使用料約130万円は9月末現在まだ徴収決定されていない。

(88)  東海財務局熱田出張所で、名古屋市所在元名古屋陸軍造兵廠高蔵、熱田両製造所所属の変電施設(機械器具20個およびこれらを収容する土地、建物)および電力線路(延長4,230メートル)を未利用施設として整理しているが、国自体が照明用として使用しているほか、昭和25年4月以降鍜治要工業株式会社ほか3名がそれぞれ使用しているのにその31年3月末までの使用料は9月末現在まだ徴収決定されていない。
 なお、鍜治要工業株式会社ほか3名に対する31年3月末までの使用料を概算すると約130万円となる。

(89)  東海財務局熱田出張所で、昭和22年12月以降株式会社名古屋製陶所に名古屋市所在元愛知時計電機株式会社明徳工場(官設民営工場)所属の機械4個を使用させていたところ、24年3月にいたり使用を辞退してきたのでその後引続き同会社に保管させていたものであるが、右機械4個(当局の評価による31年7月の時価533,300円)は所在不明となっているのに9月末現在まだ求償の処置がとられていない。

(90)  北九州財務局長崎財務部佐世保出張所で、昭和26年4月以降井上某に佐世保市所在元佐世保海軍施設部所属の機械3個を使用させていたが、27年4月から31年3月末までの使用料約19万円が徴収決定されていないばかりでなく、右機械3個(台帳価格367,484円)はその主要部分が紛失しているのに31年9月末現在まだ求償の処置がとられていない。

(2)土地建物について

(91)  本院において昭和31年中、関東財務局ほか7箇所(注) 管内所在の旧雑種財産土地6,133件1,021,889坪、建物307件延31,492坪のうち土地1,042件620,402坪、建物143件延23,793坪について実地に調査したところ、右8箇所を通じ、

(ア) 正規の貸付手続をとらないで使用させ、使用料も徴収していないもの 土地
建物
214
43

134,966
3,469
(イ) 所在または現況が不明となっているもの 土地
建物
125
5

35,054
1,703
(ウ) 処分済等のもので台帳まっ消未済となっているもの 土地
建物
120
23

242,667
1,512
(エ) 所管換等の手続がとられていないもの 土地
建物
97
35

72,472
7,515

があり、これらについては早期に現地調査を実施して国有財産台帳の整備をはかるとともに財産の正常かつ効率的な運用を期する要があると認められる。
 いま、本院会計実地検査の結果判明したもののうちおもな事例は別項(95)、(96)に記載したもののほか次の5事項である。

(1) 関東財務局で、昭和19年12月、内閣から引き受けた東京都中央区所在の宅地1,513坪、建物延1,355坪を23年7月以降新月島寮居住者組合(代表者安江某)に使用させているが、使用料の徴収処置も講じないでそのままとなっている。

(2) 関東財務局横浜財務部で、大正13年2月および昭和5年3月、神奈川県から引き受けた横浜市中区所在の宅地4,425坪は、終戦時ごろから民家が無断で建築され、31年2月当時約60戸が建ち並んでいるのに適宜な処置も講じないでそのままとなっている。

(3) 関東財務局で、大正13年10月、陸軍省から引き受けた東京都港区青山南町1丁目55番地48に所在することとなっている宅地985坪(台帳価格10,342,500円)は、東京都および東京法務局の公図等により調査するも該当するものはなく、現況不明のままとなっている。

(4) 関東財務局で、昭和14年3月、東京府から引き受けた東京都新宿区新宿1丁目および2丁目に所在することとなっている宅地746坪(台帳価格8,952,000円)は、東京都および東京法務局新宿出張所の公図等により調査するも該当するものはなく、現況不明のままとなっている。

(5) 近畿財務局神戸財務部で、昭和17年5月、脱落地発見として記載した尼崎市西字平左衛門新田先所在の雑種地2,298坪(台帳価格1,149,000円)は、海中に没し、尼崎製鉄株式会社が工場拡張のため土地造成中の地域に含まれている模様であるが、現況不明のままとなっている。

(注)  関東財務局(うち東京都内中央区ほか6区)、同局王子出張所(うち東京都内北区ほか3区)、同局横浜財務部(うち横浜市内中区ほか8区および川崎市ほか1市)、同局横浜財務部横須賀出張所、近畿財務局(うち大阪市内東区ほか7区および堺市ほか2市)、同局京都財務部(うち京都市内上京区ほか7区)、同局京都財務部舞鶴出張所(うち舞鶴市)、同局神戸財務部(うち神戸市内生田区ほか5区および西宮市ほか3市)

(92)  関東財務局水戸財務部で、大正11年4月、茨城県から引き受けた北茨城市中郷町所在の雑種地(海浜地)39,101坪のうち9,821坪の地上には終戦時ごろから民家が無断で建築され、昭和31年4月本院会計実地検査当時約100戸が建ち並び一部落をなしており、また、残地のうちにも畑地等として使用されているものが相当あるのに適宜な処置も講じないでそのままとなっている。
 なお、右宅地として使用されている部分の使用当初から31年3月末までの使用料を概算すると約100万円となる。

(93)  関東財務局で、昭和25年3月、東京都港区所在元歩兵第101聯隊の土地578坪および建物(焼損れんが造)169坪を、社団法人有隣福祉協会に24年5月から25年3月までを期間として貸し付けたが、27年12月にいたり賃貸契約を解除し本件物件の返還請求をしただけで、その後適宜な処置も講じないでそのままとなっている。
 なお、本件土地、建物は、31年9月末現在においても小泉某ほか3名(有隣福祉協会関係者等)が居住している状況である。