昭和30年度における健康勘定の損益計算書によると、利益の部、保険料収入等467億8千1百余万円、損失の部、保険給付費等473億5千6百余万円で、差引5億7千4百余万円の損失となっているが、この損益計算には一般会計繰入金10億円および土地建物等評価差益7億4千9百余万円を利益として計上しているので、これを控除して計算すると同年度損失は23億2千3百余万円となり、前年度の40億1千8百余万円の損失に比べやや減少している。
このように損失の減少したのは、収入面において、30年6月から保険料率の引上げを行なったこと、前年度に比べ被保険者数および標準報酬月額がそれぞれ約1.2%および4.6%増加したことなどにより保険料収入が54億2千7百余万円(13.8%)増加したのに対し、支出面において診療報酬請求明細書の審査を強化して不正な請求を排除したり、被保険者の受診率の上昇が鈍化したなどにより保険給付費の増加が前年度の増加額124億4千2百余万円に比べ37億8千5百余万円(8.8%)の増加にとどまったとによる。
しかしながら、貸借対照表における未収金38億8千余万円のうちには28年度以前の分が14億9千1百余万円含まれており、これは不納欠損のおそれがあると認められるもので、これを考慮すれば欠損額はさらに増大するので留意を要するところである。
しかして、本院においては、このような現状にかんがみ、赤字発生原因の一端が保険料徴収事務の執行面において努力が十分でなかったことにあると思料し、保険料算定の基礎となる標準報酬月額の実態をは握する方針のもとに厚生年金保険事業をもあわせて検査を実施した結果、定時決定時における標準報酬月額が過少であったり、改定すべき標準報酬月額がそのままとなっていたり、被保険者の資格取得届が提出されていなかったり、強制適用事業所で適用漏れとなっているものがあったなどのため保険料の徴収不足となっているものについて、これを是正させたものが1億6千6百余万円に達している。
このような事態を生じたのは、主として事業主において、届出義務を怠ったり、届出に不実な点があったことなどによるものであるが、一方、実施機関側においても事業主についての調査および指導監督が十分でなかったことによるものと認められる。
また、保険料の収納が適切に行われないため収納未済額は30年度分15億3千9百余万円あり、前年度に比べ改善の跡はうかがわれるが、既往年度分の収納未済額とともにその収納についてなお一層の努力が望ましい。