(組織)労働本省 (項)失業対策事業費補助
失業対策事業に対する国庫補助金は、緊急失業対策法(昭和24年法律第89号)に基いて事業主体である地方公共団体に交付されるもので、公共職業安定所の紹介を経た失業者等に対し支払った賃金および事業の実施に必要な事務費の3分の2ならびに当該年度事業に使用した資材費の3分の1を補助するものであるが、本院において31年中に全国1,023事業主体(30年度末現在)のうち、約25%に当る青森県ほか26都府県、233市町村計260事業主体について国庫補助金の経理状況を実地に検査したところ、労働省および都道府県職業安定主務課の指導監督の強化により不当事項は漸次減少してきていると認められるが、なお前年度と同様補助の対象として算入してはならない経費、すなわち労力費において民有地の整地に要した賃金および事業主体の臨時職員の人件費等、資材費において多量の不要資材および認証外資材等の経費を補助基本額に算入していたものがあり、これらの補助対象外経費を控除して再計算すると1事業主体当り10万円以上の国庫補助金の返納を要するものが秋田県ほか9府県において8,971,594円あり、そのうち1事業主体20万円以上のものをあげると左のとおり12件8,518,519円である。
府県名 | 事業主体 | 事業年度 | 区分 | 国庫補助基本額 | 国庫補助金交付済額 | 国庫補助金本額から控除すべき額 | 国庫補助金交付済額中返納を要する額 | 摘要 | |||
(1993) |
茨城県 |
茨城県 |
29 |
労力費 |
円 109,557,739 |
円 67,922,933 |
円 8,291,620 |
円 412,187 |
県の臨時職員等の賃金を計上したことによるもの | ||
(1994) | 神奈川〃 | 川崎市 | 30 | 同 | 214,308,521 | 142,864,600 | 485,038 | 315,612 | 技能者等の事業に就労していない日に支払った賃金を計上したことによるもの | ||
(1995) | 新潟〃 | 新潟県 | { | 29 30 |
資材費 同 計 |
6,039,000 6,412,664 12,451,664 |
2,013,000 2,142,667 4,155,667 |
4,986,000 1,710,521 6,696,521 |
1,662,000 570,174 2,232,174 |
事業の進ちょく状況に比べ必要以上の資材を購入し、かつ、事業継続が不可能となったため多量の不要資材を保有することとなったもの | |
(1996) | 三重〃 | 四日市市 | 29 | 資材費 | 3,945,000 | 1,315,000 | 858,703 | 286,234 | 事業費を見込額によったものがあり、また、認証外資材代等を計上したことによるもの | ||
(1997) | 大阪府 | 大阪府 | 29 | 労力費 | 358,281,999 | 238,854,666 | 2,984,688 | 1,989,792 | 府が単独で負担すべき賃金(増給分)を計上したことによるもの | ||
(1998) | 同 | 茨木市 | 30 | 同 | 1,543,546 | 1,001,500 | 438,282 | 264,657 | 補助対象外である民有地の整地に要した賃金を計上したことによるもの | ||
(1999) | 兵庫県 | 尼崎〃 | { | 29 〃 |
事務費 資材費 計 |
8,538,390 32,943,991 41,482,381 |
5,692,260 10,742,000 16,434,260 |
825,933 1,280,910 2,106,843 |
550,622 187,640 738,262 |
市が単独で負担すべき労務者支給物資代等を計上したことによるもの | |
(2000) | 同 | 明石〃 | 29 | 事務費 | 5,155,789 | 2,721,425 | 1,428,150 | 236,332 | 市が単独で負担すべき賃金(増給分)を計上したことによるもの | ||
(2001) | 岡山県 | 岡山〃 | { | 〃 〃 |
労力費 事務費 計 |
5,263,239 6,155,512 11,418,751 |
3,510,000 4,164,700 7,674,700 |
359,119 68,655 427,774 |
239,413 45,770 285,183 |
労力費で補助対象外である民有地の整地に要した賃金、事務費で市が単独で負担すべき手当を計上したことによるもの | |
(2002) | 福岡〃 | 福岡県 | 29 | 労力費 | 290,440,860 | 193,543,203 | 1,240,593 | 721,296 | 県が単独で負担すべき賃金(増給分)を計上したことによるもの | ||
(2003) | 同 | 大牟田市 | 〃 | 同 | 108,478,750 | 72,319,166 | 1,152,750 | 768,499 | 市が単独で負担すべき賃金(増給分)を計上したことによるもの | ||
(2004) | 熊本県 | 熊本〃 | 〃 | 同 | 117,470,625 | 78,313,000 | 403,561 | 268,291 | 必要以上に設置した事務補助員の賃金を計上したことによるもの | ||
計 | 1,274,535,625 | 827,120,120 | 26,514,523 | 8,518,519 |
なお、事業主体が使用する労働者は特定のものを除き公共職業安定所の紹介する失業者でなければならないこととなっているが、農村地帯において公共職業安定所が日雇求職者を紹介するにあたり適格審査を怠っていたり、あるいは日雇求職者の身上調査票の記載事項に対する市町村長の証明に誤りがあったなどのため、失業対策事業に就労する失業者としては不適格と思われるような者が就労していた事例が見受けられた。