昭和30年度の損益の状況は、利益の部、保険料収入等279億2千1百余万円、損失の部、保険金等274億1千2百余万円で、差引5億9百余万円の利益となっているが、この損益計算には土地建物等評価差益1億1千2百余万円を利益として計上しているので、これを控除して計算すると同年度の利益は3億9千6百余万円となり、29年度が16億8千7百余万円の損失であったのに比べ、保険経済は好転の傾向にある。
このような利益をきたしたおもな原因は、保険料収入で、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)の改正に基く適用事業場の増加、年度当初からの料率の大幅引上げ等のため29年度に比べ17億6千8百余万円(約11%)の増加となっているのに対し、保険金支払高で、29年度に比べ1件当りの補償金額が2.1%増加しているにかかわらず、災害補償件数が1.6%減少しているため2億1百余万円(約1%)の増加にとどまったことによるものである。
なお、本特別会計について注意を要する点をあげると、(ア)保険料等の30年度の収納未済額は4億9千6百余万円(徴収決定済額に対し約2%)であり、既往年度分を合わせると12億9千8百余万円であるが、前年度のそれが13億1千7百余万円であったのに比べ努力の跡がうかがわれる。しかし、既往年度分の収納未済額8億2百余万円のうちには時効期間を経過していると認められるものが5千9百余万円あり、(イ)保険料等の徴収決定さえしていないものがあり、(ウ)保険給付については給付の適正を欠いている事例があるので、これらに対しては適切な対策を講ずるとともに、事務の処理を厳正にすることが望ましい。