昭和30年度の損益の状況は、利益の部、保険料収入等377億9千9百余万円、損失の部、保険金等338億7千余万円で、差引39億2千8百余万円の利益となっているが、この損益計算には土地建物等評価差損1千3百余万円を損失として計上しているので、これを控除して計算すると同年度の利益は39億4千2百余万円となり、29年度が実質上は8億1百余万円の損失であったのに比べ、保険経済は好転の傾向にある。したがって、年度末における繰越利益277億2千余万円に前記当年度分の利益を加えた316億4千9百余万円を翌年度に繰り越している。
このような利益をきたしたおもな原因は、29年度に比べ保険料収入で、賃金の上昇、被保険者数の増加により14億7千余万円(約6%)の増加となっているのに対し、保険金給付額で、経済界の好転に伴う失業者の減少等の原因により一般失業保険においては保険金受給実人員が月平均約65,000人(約13%)減少したことなどのため46億8千7百余万円(約13%)の減少をきたしたことによるものである。
他方、日雇失業保険においては、29年度に比べ受給実人員において月平均約2万7,000人(約27%)増加し、給付額においても2億1千2百余万円(約25%)の増加となっているが、日雇失業保険の本保険において占める割合は人員、金額ともに小さいので、大勢に影響を及ぼさなかったものと認められる。
なお、本特別会計について注意を要する点をあげると、(ア)保険料等の30年度の収納未済額は8億1千余万円(徴収決定済額に対し約2%)であり、既往年度分を合わせると21億5千余万円であるが、前年度のそれが23億2千3百余万円であったのに比べ努力の跡がうかがわれる。しかし、既往年度分の収納未済額13億4千余万円のうちには時効期間を経過していると認められるものが5億3千3百余万円の巨額に達しているものがあり、(イ)保険料等の徴収決定さえしていないものがあり、(ウ)保険給付については給付の適正を欠いているものがあるので、これらに対しては適切な対策を講ずるとともに、事務の処理を厳正にすることが望ましい。