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  • 昭和30年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第12 建設省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの


(2092)−(2130)公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの

 (組織)建設本省(項)河川等災害復旧事業費 ほか7科目

 地方公共団体が施行した災害復旧等の工事に対する国庫負担金または国庫補助金(以下「国庫負担金」という。)は、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)等の根拠法規に基いて交付されるものであるが、本院において、昭和31年中、その経理および工事施行の状況について、全国の工事現場41,721箇所のうち石川県ほか5府県を除く40都道府県につきその15.6%に相当する6,519箇所を実地に検査したところ、関係当局の指導監督の強化および事業主体の自覚等により前年度に比べ相当改善の跡が認められたが、なお、設計に対し工事の出来高が不足しているもの、工事の施行が粗漏で補助の目的を達していないものなどがあり、また、市町村が施行した工事においては、依然として表面上は競争入札等により工事を実施設計額と同程度の額で請け負わせ施行したこととして国庫負担金の交付を受けているが、実際はこれより低額に請け負わせ施行し正当な自己負担をしていないものが見受けられるなどまだ是正改善の立ち遅れているものもあり、国庫負担金を除外すべきことの判明したものが、北海道ほか31都府県において、除外すべき額1工事10万円以上のものをあげると93工事27,266,116円あり、これを事項別に分類して示すと次表(折込)のとおりである。

類別
都道府県名
改良その他国庫負担の対象としてはならないもの 工事の施工が粗漏で目的を達していないもの 工事の出来高が不足しているもの 事業主体が正当な自己負担をしていないもの
工事の出来高が不足しているもの その他
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

北海道

千円

4
千円
1,628

3
千円
486

千円

1
千円
106

8
千円
2,220
岩手県

1 2,891 2 291



3 3,183
宮城〃



2 627



2 627
秋田〃

2 1,364 5 925 1 146 2 336 10 2,772
山形〃

1 198 3 543



4 741
福島〃 1 124 1 347 1 123



3 595
茨城〃



1 131



1 131
栃木〃

1 139





1 139
千葉〃



1 101



1 101
東京都 1 1,164 1 126





2 1,291
神奈川県



1 130



1 130
新潟〃



3 942



3 942
富山〃 1 123 1 135 3 379



5 638
福井〃



3 940



3 940
長野〃







1 137 1 137
静岡〃



1 696



1 696
愛知〃



2 385



2 385
三重〃



1 103



1 103
滋賀〃 1 274 1 619 3 497



5 1,391
京都府



1 340



1 340
和歌山県 1 157

1 333 1 535

3 1,025
鳥取〃







2 653 2 653
島根〃

2 288





2 288
山口〃



1 312

1 281 2 593
愛媛〃



2 401 2 641 1 644 5 1,687
福岡〃



6 943

1 203 7 1,146
佐賀〃 1 632







1 632
長崎〃

1 124 5 2,540



6 2,665
熊本〃



1 125



1 125
大分〃 1 233 1 169 1 108



3 511
宮崎〃



2 313



2 313
鹿児島〃



1 110



1 110
合計 7 2,709 17 8,034 56 12,836 4 1,322 9 2,362 93 27,266

 しかして、このような不当事項の発生を防止するには工事監督機能の充実、不誠実な請負業者の排除等が必要であると認めそのつど関係当局に対しその善処を要望してきたところであるが、本年度においても、なお一部の事業主体にあっては一般に工事の施行について十分な技術および監督の能力を欠くため不誠実な業者により手抜工事が行われているものも認められるので、指導監督の任にあるものは事業施行途上における監督を厳にし、事業しゅん功の際においては、現地についてできる限りすみやかに検査を行うなど適切な処置をとることによりこの種不当事項の一掃をはかる要があると認められる。
 検査の結果明らかとなった不当事項93工事のうち、国庫負担金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第9のとおり39件19,746,534円になっており、その代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第9に掲記した番号を示す。)。

〔1〕 岩手県が5,595,253円(国庫補助金3,730,169円)で施行した一関市磐井川通常砂防工事(全体設計堤高13メートル、堤長59メートル、工事費21,000,000円)は、えん堤く体の下部高さ2.5メートル、長さ29メートルを配合比5:5の玉石コンクリートで730立米を施行したこととしているが、実際は配合の不良なコンクリートに玉石コンクリート用としては不適当な岩石を玉石の代りに混入し、しかも、つき固めが不十分なため空げきも多く強度が著しく劣っており、工事の施行が粗漏となっている。(粗漏工事)(2096)

〔2〕 静岡県が9,750,000円(国庫補助金6,500,000円)で施行した志太郡徳山村桃沢川通常砂防工事は、水路延長389メートルの練積石垣2,855平米に胴込コンクリート428立米、裏込ぐり石1,427立米を施行したこととしているが、実際は胴込コンクリートは314立米、裏込ぐり石は571立米を施行したにすぎないなどのため1,045,000円(国庫補助金696,666円)が出来高不足となっている。(出来高不足)(2108)

〔3〕 愛媛県西宇和郡保内町(旧川之石町)が施行した雨井海岸29年災害復旧は、延長65メートルのコンクリート擁壁を4,000,000円(国庫負担金3,263,266円)で完成したこととしているが、実際は国庫負担金を下回る3,210,000円で足りたもので、同町はその負担したとしている736,734円を全く負担していないばかりでなく53,266円の剰余を生じたこととなっている。(事業主体負担不足)(2119)