(項)伊ノ浦橋等整備事業費
九州地方建設局で、昭和25年9月着工し、長崎県施行分40,000,000円を含め総事業費552,737,921円(うち29年度までの国の施行分441,719,329円)で30年10月完成した伊ノ浦橋架設工事は、同橋りょうに接続する道路改修工事の進ちょく状況を考慮することなく施行されたため工事には行をきたし、現在の状況においては本橋りょうが所期の効果をあげておらず、ひいては多額の投資額を固定化している。
右工事は、2級国道206号(長崎佐世保線)の早岐瀬戸に延長316メートル、幅員7.5メートルの橋りょうを架設することとし、25年度に米国対日援助見返資金特別会計の事業として着工し、25,26両年度に同特別会計から49,966,763円を支出したほか、26年度に長崎県が国庫補助金20,000,000円を合わせ工事費40,000,000円で工事の一部を施行し、さらに、27年度からは特定道路整備事業特別会計で施行することとなり、30年度までに462,771,158円を支出し合計552,737,921円で完成したものである。
しかして、本件橋りょうは前記国道延長47,760メートルの道路改良工事の完成とあいまって初めてその効用を発揮するものであるのに、長崎県施行にかかる本件道路改良工事は29年度に初めて延長4,055メートルを工事費26,600,000円(うち国庫補助金13,300,000円)で着工し、30年度には延長6,533メートルを工事費112,320,000円(うち国庫補助金70,055,000円)で施行したにすぎず、両年度を合わせても全延長の2割程度の進ちょく状況であって、今後さらに工事費約3億円を要し33年度末にようやく完成する予定になっているもので、建設省部内および同省と長崎県との間に十分な連絡調整を欠き、橋りょう工事だけを一方的に先行させたためは行工事となっている。
本来、右橋りょうは道路整備特別措置法(昭和27年法律第169号)の規定に基いて建設したもので、同法の規定によれば、当該道路の通行者がその通行により著しく利益を受ける場合に限り建設することができることとなっており、これに要する資金も資金運用部からの借入金に依存しているので、右橋りょう建設工事についてはとくにこれに接続する道路工事との関連において橋りょう完成後通行者がこれを十分に利用することができないような事態をきたさないように配慮すべきであったと認められる。
しかるに、このような配慮が足りずは行工事となったため、5億円余の多額の経費を投じて完成した本件橋りょうもその利用はきわめて少なく、その供用を開始した30年12月から31年9月までの実績をみても、償還計画による日収64,000円に対しようやく13,000円で21%程度の利用にすぎす、道路完成予定の33年度末までの3年余の間は現在の状態をやや上回る程度の収益しか見込まれないような状況である。