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  • 昭和30年度|
  • 第3章 政府関係機関その他団体の会計|
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購入処置が適切でないため不経済となっているもの


(2162)−(2165)購入処置が適切でないため不経済となっているもの

 物件の購入にあたり、納地の選定が適切でなかったり、購入規格の明示が不備であったなどのため、不経済となっていると認められるものが次のとおりある。

(まくら木の購入処置当を得ないもの)

(2162)  日本国有鉄道資材局で、昭和30年度中、随意契約により青森県枕木協同組合ほか153名から並まくら木一種および二種1,517,439本、三種2,617,223本計4,134,662本を総額2,139,971,052円で購入しているが、業界の実情を十分は握し適切な購入方法をとれば相当多額の経費を節減することができたものと認められる。
 まくら木は、毎年継続して全生産量の70%程度を日本国有鉄道が使用している特殊品で、生産地および納入業者も全国的なものであるから、これが購入にあたっては、実情を十分調査は握して価格および購入方法等を決定する配意が必要である。しかしながら、その実際購入についてみると、24年度以降競争入札を実施し、26年度以降は納入実績のある優秀な業者を選定して、納入数量の内示、前金払の活用等により計画生産をさせ、随意契約により購入することが最も有利であるとして契約方法を改め現在にいたっているものであるが、その予定価格が実情に沿わず、また、中間業者から購入するものが少なくないなどのため購入価格が高価となっていることについては、昭和29年度決算検査報告において当局の検討を求めたところであるが、30年度契約の分についてみても、生産流通の実情は握が十分でなく防腐工場、用品庫を納地として購入しているなどのため不経済となっているものがある。

 すなわち、
(ア) 納入業者についてみると、単に資材局に対する見積書の提出および契約行為だけを行い契約全量を同業者に代納させて手数料を得ているもの、既往の納入実績により納入数量が決定されているため生産余剰分を他の業者に名義料を払って代納させているもの、または契約全量を下請けさせ中間手数料を得ているものなどが少なくなく、また、納地が生産箇所から遠距離であることも中間業者が介在する一因となっているものと認められる。

(イ) 防腐工場および用品庫をおもな納地とする現行の購入方式は検収に伴い発生する約30万本に及ぶ排却品に対する不用な運賃諸経費を要するばかりでなく、その転活用も制約され、これらはいずれも購入価格を増大させる結果となっており、また、生産箇所から納地までに要する運賃は生産地を除き6円10から151円20までと一様でなく、しかもその実体は握がきわめて困難であるのに、予定価格の積算において一定額を計算することとなり適正な価格の決定が困難となっている。
 これを要するに、防腐工場、用品庫を納地とする現行購入方式は適切とは認められないもので、生産の実情に合致した生産地主要発駅を納地とし、つとめて生産業者と直接契約して購入し防腐工場または使用箇所へ日本国有鉄道自ら輸送することとすれば、不経済な中間経費等が除かれ有利に購入することができるものと認められる。

 いま、仮に主要生産地発駅で購入することとすれば、本院において北海道、東北、中部、中国の主要生産地の取引価格および生産者販売価格を調査した結果によると、並まくら木1等三種360円から440円、1等一種くり400円から460円、1等二種380円から490円程度であって、使用箇所または防腐工場までの運賃諸経費および検収箇所変更に伴う検収経費等の増加を考慮してもなお相当多額の経費を節減することができたものと認められる。
 一種、二種材は現在その大部分を用品庫納めで購入し使用箇所に送付しているが、このため用品庫における保管諸経費を要し、さらに2段輸送、逆輸送をするなど不経済となる場合が少なくないが、一例を北海道地区についてみると、30年度用品庫発送数量約18万3,000本の全量が2段輸送となっており、また、そのうち約61,000本は逆輸送となっている状況であって、この間用品庫における積込料、運賃等総額約190万円を要しているが、主要発駅で購入し使用箇所に直送することとすればこの経費は節減することができるものである。
 また、3種材についてはまくら木防腐契約の特約条項により防腐工場で保管乾燥中に割裂のおそれのあるものは検査員の指示により鉄線巻を1箇所当り19円から20円で実施させることになっており、30年度において1,782,332箇所総額34,523,956円を要しているが、価格の積算において亜鉛引鉄線の所要量や労務費の算定が適切でないなどのため高価となっており、東北地方資材部が材料支給で日本通運株式会社に請け負わせている価格からみても1箇所当り15円程度が相当で、総額約890万円は高価となっているものと認められる。

(高価な水石けんを購入しているもの)

(2163)  日本国有鉄道中部地方資材部で、昭和30年6月から31年3月までの間に、公開競争契約により丸共工業有限会社ほか3会社から9回にわたりタマゴ園シャンプー(水石けんの一種)2,787かん(1かん18キログラム入り)を総額5,277,645円で購入しているが、水石けんに代えて粉石けんを購入したとすれば約240万円を節減することができたものと認められる。
 右水石けんは、被服類、ぼろ等の洗たく、床洗い等に使用するもので、購入時の入札公告においてその規格をタマゴ園シャンプーまたは同等品以上、純石けん分82%、酒精不溶解分1.4%以下、水分64%以下と指定し、粉石けんの購入する場合の規格(JIS1号)と区別しているものであるが、タマゴ園シャンプーの品質が明らかにされていないことから事実上銘柄指定と同様な結果を招き、他に競争相手もなく常にタマゴ園シャンプーの製造業者またはその代理会社の1会社だけが参加しているにすぎない状況である。
 しかして、他の地方資材部においては、前記用途に使用する洗剤としてはすべて日本工業規格の粉石けんを使用しているが、本品と粉石けんを比較してみると、価格においては粉石けん(JIS1号)キログラム当り86円から114円(関東地方資材部の購入価格による。)に対し本品はキログラム当り104円から106円で両者の間に大差はないが、本院においてその洗てき効果を調査したところ、同一重量の洗てき力(洗てきされた油分の最初の油分に対する百分比)は、粉石けん88.7%に対しタマゴ園シャンプーは約44%で、その能力は粉石けんの約50%程度にすぎない状況でタマゴ園シャンプーの使用は著しく不経済と認められるものである。
 いま、仮に本品の代りに洗てき能力の高い粉石けんを購入して使用したとすれば、最高時の価格で購入したとしても約280万円で足り、本件購入は約240万円節減することができた計算となる。

(亜鉛メッキ鋼より線の購入規格が適切でないなどのため不経済となっているもの)

(2164)  日本国有鉄道関東地方資材部で、昭和30年10月、公開競争契約により関東製線株式会社から亜鉛メッキ鋼より線50.5トンを価額4,558,700円で購入しているが、購入規格が適切を欠いたなどのため約70万円が不経済となっていると認められる。
 右は、規格を素線の抗張力平方ミリメートル当り65キログラム以上として購入したもので、その検収は前記会社の社内試験に付していることを理由に形状、数量だけを検査しているものであるが、本院において納入品の一部である55平方ミリメートルもの(単価キログラム当り90円)についてその品質を調査したところ、その炭素量は0.17%で通常鉄線(炭素量0.25%以下)と称している日本工業規格線材第三種乙から伸線した製品であると認められ、その価格もキログラム当り76円程度のものと認められる。
 このような結果となったのは、本件購入品と同じ形状の鋼より線の素線抗張力としては、日本工業規格によれば最低平方ミリメートル当り92キログラム(3.5ミリメートルもの)から101キログラム(2.3ミリメートルもの)であるのに、鉄線相当の平方ミリメートル当り65キログラムと指定するなど規格の設定に適切を欠いたことによるものと認められる。
 いま、仮に本院において調査した価格により納入品の価額を計算すれば総額約385万円となり、本件購入価額はこれに比べ約70万円高価となる計算である。

(毛布の購入規格が適切でないなどのため不経済となっているもの)

(2165)  日本国有鉄道九州地方資材部で、昭和30年9月、公開競争契約により馬庭某ほか1会社から毛布1,481枚を単価1,358円50から1,373円75価額2,023,849円で購入しているが、購入規格が適切でなかったため約40万円が不経済となっていると認められる。
 右毛布は、その規格を「1枚もの工字入、毛85%以上、重量450匁以上、密度100ミリメートル間130×160、風合模様見本どおり」とし、紡毛糸の質(原毛と反毛の使用割合)その他については明らかにしていないもので、検収は毛、スフの混合割合、重量およびタテ糸とヨコ糸の密度については門司用品試験場に委託して試験し、その他については同地方資材部検収員が納品の際抽出検査を実施したものであるが、本院において納入品について調査したところ、製品に使用されている紡毛糸はほとんど反毛だけで相当品質が悪く1枚当り1,050円程度のものと認められる。
 このような結果となったのは、品質および価格に直接影響する紡毛糸の質について指定していないなど規格の設定が適切を欠いたことによるものと認められる。
 いま、仮に本院において調査した価格により納入品の価額を計算すれば総額約155万円となり、本件購入価額はこれに比べ約40万円高価となる計算である。