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  • 昭和30年度|
  • 第3章 政府関係機関その他団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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構内営業料および土地建物使用料の決定が当を得ないもの


(2168)構内営業料および土地建物使用料の決定が当を得ないもの

 (損益勘定)(項)雑収入

 日本国有鉄道東京ほか4鉄道管理局で、部外者に使用させている土地、建物等の昭和30年度分使用料および構内営業料として、586,567,706円を調定しているが、このうち431件145,860,490円についての料金決定処置が適切を欠いたため約2,800万円が低額となっていると認められる。

 右土地、建物等の使用料等については、従来著しく低額であった事情から、29年度において、従来の料金を時価相当額に増額改定することとし、その実施にあたっては、改定料金が従来の料金に比べ一定額をこえるものについては31年度において適正料金に達するよう次年度以降漸増することとして29年度分料金を改定したが、30年度分料金の決定にあたり、29年度分に比べて大幅の値上げとなるもの、値上げの負担が容易でないもの、その他局所長において事情やむを得ないと認められるもので29年度分料金を完納したものまたは確実に完納する見込のものにかぎり、30年度分料金を29年度分料金にすえ置くことができる扱を決定し、30年8月、総裁通達によりこの旨各鉄道管理局に通達したところ、東京、大阪両鉄道管理局においては、全面的にこれに該当するものとし、名古屋、金沢、門司各鉄道管理局においては一部のものがこれに該当するものとして合計431件について29年度分料金をそのまますえ置調定したものである。しかしながら、28年度以前の料金に比べて大幅の値上げとなるものについてはとくに前記のような緩和処置を講ずることとしたものであるのに、30年度分料金についてこの漸増料金さえも徴収することなく、時価に比べて著しく低れんな29年度分料金をそのまますえ置くこととしたのは妥当な処置とは認められないもので、そのうちには料金負担能力が十分と認められる有力な会社、団体等も多数含まれている状況である。

 いま、仮に前記431件について当局が予定していた30年度分漸増料金により計算しても同年度分使用料は174,360,619円となり、当局の調定額はこれに比べて約2,800万円低額となる計算である。

 右のほか東京鉄道管理局で、30年度中、株式会社鉄道会館に東京駅八重洲口構内土地10,658平米、建造物延11,666平米を使用させ、その30年度分構内営業料金を60,585,170円と決定したものがある。構内営業料は日本国有鉄道諸規程、部内通達により、固定財産使用料と売上総収入に1000分の5を乗じた額を合算した額によることとなっており(ただし、駅の特殊性による収益力を含めた土地評価をすることができ、これに基いて土地使用料が計算されているものについては付加料金を合算しないことがある。)、固定財産使用料は、土地または高架下の場合は再調達見込価額に対する0.3%の管理費、固定資産税相当額、時価に対する年間7%の資本利子その他必要な金額を合計した額となっているが、本件料金の決定についてみると、使用料算出の基礎である地価については、駅としての特殊な収益力を含めた評価をしたものとして売上総収入額に1000分の5を乗じた付加料金を徴収しないこととして坪当り600,000円と計算し、本館(株式会社大丸使用部分)および取付地下道部分5,451平米については、永久構造物の建設を許可したことなどを理由としてこれから当初土地を使用承認した27年9月から料金改訂をした29年3月までの間における当該土地の推定値上り額坪当り330,000円(日本勧業銀行調査による6大都市商業地の値上り数値により逆算)の半額165,000円を前記会社に帰属させるものとしてこれを差し引き435,000円とし、また、高架下および連絡上家部分(名店街部分等)4,872平米については、右600,000円から土地使用が不安定であるとして20%、悪環境であるとして7.2%から14.4%、土地の立体利用をすることができないとして32%から58%計59.2%から85.19%相当額を割引し51,118円から244,800円としているものである。

 しかし、当局の評価額600,000円は駅としての特殊な収益力を含めた評価額とは認められないものであり、また、本館および取付地下道部分について、前記土地の値上り推定額の半額を同会社に帰属させた取扱については、本件使用関係は権利金を伴うのを通例とする民間の貸借例とその条件を異にしているなどの事情を考慮すれば必ずしも妥当とは思料されず、高架下および連絡上家部分についての高率な割引は八重洲口駅構内を一般高架下等と同一に扱うこととなり実情に沿わないものと認められる。

 また、本館分の構内営業料については、29年度においては、前記坪当り435,000円を基礎として敷地平米当りの使用料額を算出し、これを基礎として6階建の階別利用率により階別の平米当り使用料額を算定し、使用面積延34,456平米に対し計算した使用料額を決定していたものを、30年度においては、前記により算出した敷地平米当りの使用料額を基礎とし12階建の階別利用率により階別の平米当り使用料額を算定し、6階までについてはその使用面積に対し、7階から12階までの分については使用予定面積延27,348平米に対し計算した使用料額を算定し、その適用にあたっては、前記鉄道会館が現在6階までしか完成していないことを理由として7階以上12階までの料金については前記計算による使用料額の5分の1の料金によることとし、さらにこの計算方式を29年度下期にさかのぼって適用することとして既に徴収した同年度分料金を4,166,810円減額しているが(この料金計算方式の変更により30年度分使用料は27,934,380円となり、6階建の階別利用率により計算した使用料年額38,750,870円に比べ10,816,490円低れんになっている。)、29年10月以降同会社は6階までで一応完成し営業を開始していたものであり、また、駅前の主要ビル建築階数の状況からみても6階建の階別利用率による計算方式をとくに改める要はなかったものと認められる。

 本会館に対する料金額の決定は、その他の民衆駅等における料金額の基準となっているものでもあるからとくに適正に定めるよう配意する要があると認められる。