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  • 昭和30年度|
  • 第3章 政府関係機関その他団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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土地の売渡価額が低れんと認められるもの


(2169)−(2171)土地の売渡価額が低れんと認められるもの

 (資本勘定)(項)資産充当

 土地の売渡価額の決定にあたり、時価のは握が適正に行われなかったり、実情に沿わない値引をしているなどのため売渡価額が低れんとなっていると認められるものが少なくないが、そのおもな事例をあげると次のとおりである。

(2169)  日本国有鉄道広島鉄道管理局で、昭和30年9月、随意契約により財団法人鉄道弘済会に対し広島市大須賀町所在の土地298坪を坪当り86,500円または30,500円価額15,768,105円で売り渡しているが、価格の決定が適切でないため約680万円が低額となっていると認められる。

 右は、22年度以降鉄道弘済会広島支部事務室、授産場等の敷地として同会に使用承認していた鉄道用地をその要請により売り渡したもので、売渡単価は、日本勧業銀行広島支店および広島法務局の評価額を参考として評定した更地価格坪当り125,000円または45,000円から借地権相当額としてこの3割を減額し、さらに同会が投下した有益費として1,000円を控除して決定したものである。しかし、本件鉄道用地は、使用承認にあたり、使用期間を1箇年とし期間満了後は使用者の負担において更地に回復して返還することを条件としていたもので、鉄道用地を従来からの使用者に売り渡す場合、同鉄道管理局においてはもちろん他部局においてもこのような理由により減額することがないのを例としており、本件に限りとくに借地権を認めて売渡価額を低価に決定したことは当を得ないものと認められる。

 いま、仮に借地権相当額としての減額を行わないで評定したとすれば、有益費を控除しても坪当り124,000円または44,000円総額22,653,720円となり、本件売渡価額は約680万円低額となる計算である。

(2170)  日本国有鉄道東京鉄道管理局で、昭和30年5月、随意契約により株式会社鉄鋼ビルディングに対し東京都千代田区所在の同鉄道管理局庁舎敷地の一部134平米(40坪)を平米当り24,200円(坪当り80,000円)価額3,250,060円で売り渡しているが、価格の評定が実情に沿わないため約460万円が低額となっていると認められる。

 右は、同鉄道管理局庁舎敷地東側の旧外ぼり河川敷の一部分で、26年度以降同会社に有償使用させていたものをその要請により売り渡したもので、売渡単価は、東京都が29年7月本件売渡地に隣接する都有河川敷を同会社に売り渡す際東京都において評定した該土地の正常地としての評価額坪当り160,000円を基準とし、固定資産税課税標準価格坪当り79,090円、三井信託銀行の評価額70,000円(正常地価格を210,000円としその3分の1相当額)を参考として売渡地の条件を考慮し、右基準評価額の半額に当る80,000円としたものである。しかし、本件売渡地は帯状の凹地ではあるが、延長180メートルにわたり買受人の所有地と接続しており、買受人はその所有地と合わせ一体として利用することができるものであって、利用価値の低い孤立不整形地とは事情が著しく異なるものであるから、東京都が類似の帯状地を孤立地として評定した坪当り160,000円をその評定基礎とすることは妥当と認められないばかりでなく、凹地の現状を正常地に修復するには坪当り16,000円程度の埋立費用で足りることを考慮すれば、正常地評価額の半額に減額評定することは利用の実情に沿わないものと認められる。

 いま、仮に三井信託銀行が鉄鋼ビル敷地と一体的に評定した本件土地の正常地価格坪当り210,000円から、正常地に修復するに要する前記埋立費用約16,000円を差し引いた194,000円を坪当り価格と評定したとすれば、総額7,876,400円となり、本件売渡価額3,250,060円は約460万円低額となる計算である。

 なお、同鉄道管理局においては31年8月本件土地に隣接する鉄道用地496平米(150坪)を前記会社の要請により坪当り300,000円で売り渡している。

(2171)  日本国有鉄道大阪鉄道管理局で、昭和31年3月、随意契約により京阪神急行電鉄株式会社に対し大阪市北区角田町所在の鉄道用地337平米(102坪)を平米当り44,468円(坪当り147,000円)、価額15,012,397円で売り渡しているが、価格の決定が適切を欠いたため約370万円が低額となっていると認められる。

 右は、11年度以降および30年度モータープール用地として同会社に使用承認してきた鉄道用地をその要請により売り渡したもので、この売渡単価は、本件土地に隣接する北野劇場敷地についてその31年2月当時における専門業者の評価額坪当り400,000円を参考として350,000円とし、売渡地の30年度における固定資産税課税標準価格が坪当り60,000円で前記北野劇場敷地の130,000円に対し47%となっていること、および専門業者の評価によると本件土地価格は北野劇場敷地の土地価格に比べ58%となるとしていることから、これが平均値52.5%を前記北野劇場敷地の評価額を参考とした350,000円に乗じて183,800円とし、さらに、本件売渡地が帯状であることを理由に不整形地補正として20%を減額して147,000円としたものである。しかし、不整形地としての減額については、売渡地は延長約60メートルにわたり買受人の所有地に接続していて買受人の所有地と一体となり利用されるもの(買受人は劇場敷地の一部とするため購入している。)であるから孤立不整形地とは利用価値が全く相違しており、とくに減額修正する要はないものと認められる。

 いま、仮に不整形地としての減額をしないで評定したとすれば、平米当り55,584円(坪当り183,750円)価額18,765,158円となり、本件売渡価額は約370万円低額となる計算である。