住宅金融公庫の昭和30年度中の新規貸付実行額は164億余万円で、これから回収額53億8千8百余万円および滞貸償却額20万余円を差し引いた年間純増加額は110億1千1百余万円に上り、年度末貸付残高は888億1千4百余万円であって、このうち元金の延滞が6箇月以上のものは2千2百余万円(うち1年以上延滞のもの1千1百余万円)である。
30年度において住宅建設資金の貸付契約を締結した額は、個人住宅2万1千余戸、賃貸住宅3千余戸、産業労働者住宅9千余戸、分譲住宅6千余戸、宅地造成15万9千余坪に、新たに30年9月から貸付を開始した増築5千余戸を加算した住宅4万7千余戸分および宅地造成15万9千余坪分189億9千3百余万円であって、同年度計画住宅5万9千余戸分および宅地造成30万坪分223億6400万円に比べて住宅1万1千余戸分および宅地造成14万余坪分33億7千余万円下回っているが、これは主として暫定予算のため事業計画の策定および実施が遅れ、賃貸住宅貸付および分譲住宅貸付が計画どおり行われなかったことなどによるものである。
なお、本年度から新たに基金3億円を原資として、業務を開始した住宅融資保険は、年度内に金融機関を相手方として総額56億8千5百余万円を限度とした保険契約を締結したが、これに基き金融機関が住宅融資を行なったものについて同公庫に付保した額は3億1千9百余万円にすぎない。これは、業務開始が10月からで、その期間が6箇月しかなかったこと、この保険制度の趣旨が借入者側にも十分に知られていなかったり、金融機関側の活用も十分でなかったことによるものと認められる。
30年度においては、貸付業務では一応11億9千9百余万円の利益をあげたが、これを全額滞貸償却引当金等に繰り入れ、国庫に納付すべき利益金はなかった。
また、住宅融資保険業務では3百余万円の利益をあげたが、全額を住宅融資保険特別勘定の積立金として積み立てた。