昭和31年度における防衛庁関係の支出済歳出額は933億37千百余万円で、236億6千1百余万円を翌年度に繰り越し、60億4千3百余万円を不用額としている。繰越額の多いのは、器材費関係で規格の決定、仕様書の作成、試作研究、輸入手続等に日数を要したこと、艦船建造費関係で設計、建造に日数を要し、かつ、塔載武器の供与が遅延したこと、また、施設整備費関係で土地の選定および入手ならびに提供施設の返還が遅延したことなどによるものである。
28年度計画の新造艦艇甲型警備艦等16隻については、本年度でその全部の引渡しを了した。当初の建造予算は124億円(国庫債務負担行為を含む。)であるが、塔載武器の供与交渉と基本設計に時日を要し、そのため予算全額を翌年度に繰り越し、29年11月から30年3月までの間に、船体の建造および塔載主機関等の購入を83億4千7百余万円で契約し、また、29年度末から31年度の間に塔載武器等の購入契約および船体建造契約の更改を行い、結局、113億4千1百余万円を支出し、1億6千8百余万円を不用額としている。右甲型警備艦等16隻は、別途官給すべき塔載主機関の完成が遅延したことおよび供与予定の武器を入手することができなかったことなどによりそのうち15隻は当初の契約期限内に完成するにいたらず、一部塔載武器は後日に装備することとして一応引渡しを受けている。
工事の施行および物資の調達について検査を実施した結果不当と認めた事項についてみると、整備計画、実施設計等について検討が不十分なまま取り急いで実施に移すことにより発生すると思料されるものが多い。物資の調達は、その要求が年度後半に集中する傾向が見受けられ、取り急いで実施するためか調達の基本である仕様、図面がはなはだしく明確を欠いているものが少なくなく、したがって、推定によって積算しひいて高価なものを調達しているものがあり、また、適正な調達補給を確保するため各幕僚監部とも集計統制機関を設けているが、補給処、部隊における使用実績、在庫数量の記録や報告が事実と相違したり、集計に誤りがあったりして、結局、不急なものを調達する結果となっているのは組織運用上一考を要するところであり、これらについては、調達要求部門である各幕僚監部等と実行に当る調達実施本部との緊密な連絡調整をすること、各幕僚監部部内において十分協力をはかることのほか、その教育、訓練、装備計画等に即応した調達要求をしは行購入とならないよう注意するなど経費の効率的使用に一段の留意を要するものと認められる。