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  • 昭和31年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
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  • 工事

滑走路工事の予定価格の積算が過大なため工事費が高価と認められるもの


(1) 滑走路工事の予定価格の積算が過大なため工事費が高価と認められるもの

(組織)防衛庁 (項)防衛庁施設費

 防衛庁仙台建設部で、昭和31年9月、指名競争入札後の随意契約により株式会社大林組に八戸飛行場滑走路その他整備工事を628,000,000円で請け負わせ施行しているが、予定価格の積算にあたり、粗細骨材の採取について運賃を高価に計算したり、調査工事で調査した結果を参しゃくすることなく遠距離の場所から採取することとしたり、または建設機械の選定について調査検討が不十分であるなど適切を欠いたため工事費が約3400万円高価となっていると認められる。
 右工事は、青森県八戸市高館に海上自衛隊八戸航空基地新設のため延長2,250メートルの滑走路およびこれに付帯する誘導路、エプロン等を施設するものであるが、

〔1〕 粗細骨材、セメント等の予定価格についてみると、

(ア) コンクリート工事および排水工事の粗細骨材の所要量は砂利57,000立米、砂36,000立米で、立米当り単価は砂利1,080円、砂720円となっている。右粗細骨材は、砂利の全量および砂の半量を工事現場から15キロメートルから27キロメートルの新井田川、馬渕川流域の石手洗(15キロメートル)、差波(17キロメートル)、西母袋子(21キロメートル)、剣吉(27キロメートル)の4箇所、砂の半量を現場付近の海岸からそれぞれ採取することとし、前記単価は各採取箇所ごとの単価と運搬予定量との加重平均により算出されているが、砂利所要量を過大に見積っているばかりでなく、砂利、砂とも少なくとも業者は自家用車または借上げトラックを使用して運搬することができるものであるのにすべて外注するものとして高価な運賃の計算を行なっており、また、採取場所および採取見込量についても、工事着手前の調査工事資料によると、砂利は西母袋子で石質良好なものを10,000立米採取することができることとなっているのに予定価格の積算においてはこれを7,000立米とし、砂は石手洗、差波でそれぞれ5,000立米採取することができることとなっているのにこれをそれぞれ4,000立米とし、残りを遠距離の剣吉から採取することとして計算している。
 いま、仮に適正と認められる骨材価格を計算すると予定価格の砂利立米当り1,080円は957円、砂720円は668円となり、砂利は123円、砂は52円が高価となっている。

(イ) 滑走路、誘導路、エプロン工事の舗装コンクリート56,838立米および排水工事等コンクリート2,283立米に使用するセメントの単価はトン当り6,300円として計算しているが、八戸市には磐城セメント株式会社の工場があり、工事現場までの輸送は通い袋で運搬することができるので、袋詰セメントに比べトン当り300円低価に入手することができるものと認められる。

(ウ) 滑走路、誘導路、エプロンのコンクリート56,838立米の立米当りの目地費は230円としているが、このうちダウエルバー付膨張目地の積算において特殊な支持金物を使用することとしこの費用を加算しているが、仕様書でとくにこれを指示していないからその要はなく、この加算をしないとすれば右目地費の予定価格230円は190円となり、40円が高価な計算となる。現に、さきに施行したダウエルバー付膨張目地工事に対してはこのような積算をしていない。
 いま、仮にそれぞれの単価によって計算するとコンクリート立米当り予定価格4,477円から3,424円は4,201円から3,212円となり、コンクリート59,121立米で16,182,821円が高価となっており、排水工事用粗細骨材費の差額を加え計16,610,081円が高価となっている。

〔2〕 滑走路、誘導路、エプロンの切盛土工事についてみると、切土量165,361立米は立米当り181円とし29,930,341円が計上されている。この価格計算の基礎となった使用建設機械は、運搬距離60メートルまではブルドーザー、600メートルまではブルドーザーでけん引するスクレーパー、1,600メートルまではブルドーザー、ショベル、ダンプトラックの組合せとしているものである。しかし、60メートルから700メートルまでの間もスクレーパーを使用することが経済的と認められるばかりでなく、また、スクレーパーの損料を1日6,750円と計算しているが、建設省建設機械貸付損料算定基準によっても1日2,640円となり、予定価格の損料は著しく高価なものとなっている。
 いま、仮に60メートルから700メートルまでの間はスクレーパーを使用することとし損料を前記基準により計算すると右切土の予定価格立米当り181円は161円となり、3,307,220円が高価となっている。

〔3〕 転圧費の予定価格についてみると、

(ア) 基層工249,404平米およびオーバーラン35,000平米の転圧費単価86円はシープフートローラーおよびタイヤローラーをブルドーザーでけん引して転圧し、10トンマカダムローラーで転圧仕上を行うこととして積算しているが、シープフートローラーおよびタイヤローラーはいずれもトラクターによってけん引されるものであり、しかも、仕様書でとくにブルドーザーの使用を指定していないからこれを使用することとして積算する要はないものである。
 いま、仮にトラクターでけん引するものとして計算すると右転圧費の予定価格平米当り86円は67円となり、基層工およびオーバーランの転圧面積計284,404平米に対し5,403,676円が高価となっている。

(イ) ショルダー基層工は厚さ52.5センチメートルの部分46,823平米および厚さ50センチメートルの部分67,473平米についてもトラクターを使用するものとして計算すると転圧費の予定価格平米当り101円は78円となり、転圧全面積114,296平米に対し2,628,808円が高価となっている。

〔4〕 排水工事基礎ぐり石工についてみると、排水工事(排水路、放水路、盲暗きょ等の工事)38,030,000円のうち排水路等の基礎ぐり石工2,416立米は立米当り1,532円とし3,701,312円が計上されている。このうちぐり石は工事現場から15キロメートルの採取場櫛引から運搬するものとして立米当り850円としているが、工事現場には発生材として旧滑走路の基層と移設した在来建物基礎等に径10センチメートルから15センチメートル程度のぐり石約8000立米が埋設されており、予定価格の積算はこれを掘り起し破砕して滑走路、誘導路、エプロン等の基層工事のセレクト材に使用することとしているが、この発生したぐり石はそのまま排水路基礎ぐり石として十分使用することができると認められる。
 いま、発生ぐり石をそのまま排水路基礎ぐり石に使用するものとすれば右ぐり石の予定価格立米当り850円は160円、基礎ぐり石工立米当り1,532円は773円となるので、2,416立米で1,833,744円を減じ、他方、これに見合うセレクト材を場外から運搬使用するものとして278,704円を加えると、結局、1,555,040円が高価な計算となる。

〔5〕 機械器具損料についてみると、滑走路、誘導路、エプロン工事としてコンクリートプラント損料10,370,000円が計上されている。この損料の対象となったプラントは28切2台組合せ3基、21切2台組合せ1基で、うち28切2台組合せ1基は契約直後31年10月から5箇月間使用することとしてその損料2,109,375円を計上しているが、この期間はコンクリート打設が困難な時期でもあり、また、32年3月から使用することとしている他の3基のうち21切を28切とすれば能力は打設コンクリート量56,838立米に対し約1000立米の余裕があるものであるから計上する要はないものと認められる。

以上各項について工事費を計算し、当局の予定価格と比較すると左のとおり

名称 予定価格 適正と認められるもの 差引 備考
滑走路、誘導路、エプロン工事 483,480,000 456,453,008 27,026,992
排水工事 38,030,000 35,611,482 2,418,518
雑工事 15,140,000 15,080,685 59,315
小計 536,650,000 507,145,175 29,504,825
直接仮設費 7,840,000 7,840,000 0
輸送費 5,720,000 5,720,000 0
機械器具損料 10,370,000 8,859,375 1,510,625
総合仮設費 2,360,000 2,360,000 0
小計 26,290,000 24,779,375 1,510,625
562,940,000 531,924,550 31,015,450
諸経費 73,180,000 69,144,872 4,035,128 約13%
合計 636,120,000 601,069,422 35,050,578
前渡金支給による金利相当額 △7,640,000 △7,218,843 △421,157 約1.2%
差引 628,480,000 593,850,579 34,629,421

であって、結局、諸経費を合わせ約3400万円が過大な計算となり、ひいて工事費が高価となっていると認められる。