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  • 昭和31年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 物件

工具セットの購入価額が高価となっているもの


(9) 工具セットの購入価額が高価となっているもの

(組織)防衛庁(項)防衛庁

 防衛庁調達実施本部で、陸上幕僚監部の要求により、昭和31年3月、指名競争契約により榛名産業株式会社代理第1物産株式会社から工具セット第2段階用8号153組を単価210,000円価額32,130,000円で購入しているが、予定価格の積算にあたり処置当を得なかったため少なくとも約1130万円が高価となっている。
 右工具セットは、車両用のタイヤを取りはずすために使用するもので、従来使用していた輸入品の仕様にならい、ただ輸入品の容量30トンオイルジャッキを6トンのギャージャッキに変えている点が相違しているにすぎないものである。しかして、本件購入の際の1組当り予定価格は材料費、直接経費、加工費から成る製造原価にこれの10%の一般管理費、さらに、以上の5%の利益にこん包費運賃を加え216,900円と積算しているが、

(ア) 材料費68,905円の算出にあたって、その製品の計算重量を250キログラム、歩留りを平均66%とし、所要素材量を375キログラムとしてこれに材料別の重量当り単価を乗じて計算している。しかし、仕様書および承認図によって製品重量を計算すると150キログラム程度(製品について計量した結果は146キログラム)であり、また、使用材料歩留りは、約40%を占める圧力プレート、クロスヘッドフィンガーに使用する可鍛鋳鉄および鋳鋼は鋳放しのまま使用しているものであるから90%程度であり、その他のジャッキのケース等の歩留りは過少と認められるがこれを採用して計算しても、その材料総所要量は約203キログラムで足り、予定価格の総重量375キログラムは約170キログラム27,116円が過大な積算となっている。

(イ) 直接経費5,173円は、治工具費型代および熱処理鍛造費から成っているもので、そのうち熱処理および鍛造を要する材料の重量を90キログラムとしているが、承認図から計算すると75キログラムで足り、したがって、直接経費は4,483円となり、690円が過大な積算となっている。

(ウ) 加工費110,000円は、加工者が十分慣熟して最も能率をあげる数量を500組以上とし、その場合の単位重量キログラム当り工数0.8時間を基礎として本件工数を1.76時間と決定し製品重量250キログラムを乗じ、さらに、賃率250円を乗じたものである。しかし、その製品重量250キログラムは前記のように150キログラム程度であるので、当局推定の単位重量当り1.76時間として計算しても1組当り工数は270時間で加工費は67,500円となり、42,500円が過大な積算となっている。

 以上のとおり事実と著しく相違する材料の重量を採用したため材料費、直接経費および加工費とも過大となり、製造原価において70,306円、予定価格単価において81,202円、契約単価において74,264円総額で少なくとも約1130万円が高価となっていると認められる。当局は、過去における輸入品を国産化した場合の輸入品と国産品との価格の比率が87.5%程度であるからこの比率をもって217,000円を計算し、これが本件原価計算価格216,900円とおおむね合致したので採用したというが、輸入品は高級な30トンのオイルジャッキを用いているのに本品は6トンのギャージャッキを付することとなっているので、その間相当の価格差があるべきで全く実情に合わない対比と思料される。
 このような結果となったのは、積算の基礎となった仕様書に見取図程度の粗雑なものが1枚添付されているだけで重量も明らかでないのに推定によって積算したため、各部の構造を見誤ったり、鋳放しのものを加工することとしたことによるものと認められるが、積算にあたっては正確な原価計算をすることができる仕様書、図面を要求すべきであるのは当然であり、また、本件の場合は輸入品の型式に模しているのであるから輸入品現品について検討すれば容易にその構造、重量等は判明したものであるのに、単に1枚の見取図によってずさんな推定で積算したもので処置当を得ない。