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  • 昭和31年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第6 農林省

農林省


(一般会計)

 昭和31年度歳出決算額は904億4千6百余万円で、そのうち国が直轄または都道府県に委託して施行する土地改良、開拓、干拓等の事業および機械の整備等に使用したものは150億1千9百余万円であり、また、地方公共団体等の施行する事業に対する国庫補助191費目495億9千5百余万円のうち土地改良、地盤変動対策、林道開設、漁港修築および災害復旧等公共事業関係は71費目320億7千9百余万円となっている。

(直轄工事について)

 北海道開発局および各農地事務局の施行した直轄工事については、農業水利、開拓、干拓等の工事を施行する131地区および75事業所のうち39地区および40事業所の会計実地検査を施行したところ、工事費から架空の人夫賃等の名義により支払に立てるなどにより別途資金を手元に保有し、ほしいままに旅費、補償費等に使用していたり、請負工事費の積算において機械の償却修理費、砂利、砂の運搬費およびしゅんせつに要する経費等の検討が十分でなかったため積算が過大となっているものや、工事の施行にあたり現地に適合しない機械を導入しているものなどが見受けられた。

(代行工事について)

 国営土地改良事業の一部を都道府県に施行させている代行工事については、全国における開墾、干拓等の工事現場879箇所のうち284箇所を実地に検査したところ、関係当局の指導監督の強化により不当事項は逐年減少し、相当改善の跡がみられるが、なお、利用可能な既存道路の改修を行なっているもの、工事の施行が粗漏で手直しを要するもの、出来高が不足しているものまたは設計の過大なものなどが見受けられた。

(公共事業に対する国庫補助の経理について)

 地方公共団体および土地改良区等が施行した土地改良、地盤変動対策、林道開設、漁港修築および災害復旧等各種補助工事の不当事項については、すでに昭和26年度以降毎年度の検査報告において多数指摘してきたところであるが、32年中、全国工事現場41,056箇所のうち9%に相当する3,720箇所を実地に検査したところ、相当改善の跡が認められたが、なお不当な事例が少なくなく、国庫補助を除外すべき額1工事10万円以上のものだけでも733工事2億6千5百余万円に上り、しかもその大部分は事業主体が正当な自己負担をしていないものであって、そのうちには国庫補助以下で工事を施行しているものさえ見受けられた。
 しかして、公共事業関係補助工事の不当事項については、工事完成後においてはその是正が困難な場合が多く、むしろ工事完成前に査定の内容を検査し、早期に注意してその是正を促すことが効果的であると認め、31年発生災害について早期に検査を実施するとともに28、29、30年発生災害の復旧工事未着手の地区等についてもあわせてこれを実施することとし、査定額がとくに多額な秋田ほか10県を選び4千3百余箇所工事費査定額26億1千1百余万円について検査した。その結果は、なお二重査定、災害便乗、設計過大等の事例が見受けられたので注意したところ、1千6百余箇所の工事につき工事費において2億9千余万円を減額是正することとなった。

(昭和29、30両年度の検査報告掲記事項の事後処理状況について)

 昭和30年度決算検査報告で指摘した不当工事のうち、国庫補助を除外すべき額1工事20万円以上のものは523件で、そのうち当局において国庫補助を返還または減額することとしたものは387件、この処理に代えて手直しまたは補強することとしたものは89件、一部を返還または減額し、一部を手直しまたは補強することとしたものは47件である。
 右のうち国庫補助を返還または減額することとしたもの434件については、32年9月末現在332件が処理済となっている。また、昭和29年度決算検査報告に掲記したもののうち国庫補助を返還または減額することとしたもので31年9月末現在処理未済であった92件のうち32年9月末現在なお処理未済となっているものが43件ある。
 また、手直しまたは補強することとしたもののうち、青森県ほか14府県内の昭和30年度決算検査報告掲記の分66箇所、昭和29年度決算検査報告掲記の分134箇所につきその施行状況を32年4月から7月までの間に現地について検査したところ、30年度分については、工事が完成していたものは32箇所にすぎず、16箇所は工事中であり、18箇所は未着工であったが、工事中の16箇所のうちには、出来高が20%にも満たないもの、工事現場に資材を準備した程度にすぎないもので検査のあることを知り急きょ着工したとみられるものがあった。また、29年度分については、青森ほか4県内において実地検査当時なお未着工のものが6箇所、工事中のものが8箇所であって、なかには着工の見とおしの全然たたないもの、または完成までになお2年余を要することとしているものがあった状況である。しかして、手直し工事等が完成したもののうちには、なお手直しまたは補強の効果が十分あがっていないものが8箇所(うち29年度分6箇所)見受けられた。
 なお、検査当時工事中または未着工となっていた29年度分14箇所、30年度分34箇所のうち、32年9月末現在工事を完成した旨の報告のあったものは29年度分1箇所、30年度分16箇所となっている。

(公共事業関係以外の国庫補助の経理について)

 公共事業関係以外の国庫補助の経理については、昭和31年に引き続き、主として末端の事業施行者に交付される農村振興、農産物増産、開拓実施等の補助金26費目49億3千3百余万円ならびに31年度国庫補助のうち農山漁村建設総合対策費補助金ほか34費目57億2千1百余万円を選び4百余の市町村と各種組合を実地に検査したが、その結果は、一部改善の跡の認められたものもあるが、なお補助の対象とはならない事業を実施していたり、補助金をその目的外に使用していたり、精算額を過大に報告して補助金の交付を受けているものなどの事例が少なくなく、国庫補助の経理当を得ないと認められるものが検査の結果判明したものだけでも8百余件5千6百余万円に上っている。

(利子補給金の交付について)

 風水害、冷害等の天災により損害を受けた農林漁業者に対し、その経営や施設の災害復旧のため低利で融通される災害融資金に関しては、昭和31年に引き続き667融資機関の融資総額32億8千2百余万円について実地に検査したところ、融資機関において資金を貸し付けないで運用していたり、融資の目的に反して使用しているなどの事例が多く、融資金の貸付または使用当を得ず、これに対する国庫利子補給の必要がなかったと認められるものが検査の結果判明したものだけでも313融資機関で融資総額3億3千1百余万円これに対する国庫利子補給済額3千余万円に上っている。また、有畜農家創設計画に基いて乳牛、役肉用牛、馬またはめん羊を導入する農家に対し、農業協同組合が貸し付ける有畜農家創設資金に関しても、414組合の融資総額4億8千2百余万円について検査したところ、資金の貸付または利子補給金の使用当を得ず国庫利子補給の目的を達していないと認められるものが、128組合で融資総額1千4百余万円国庫利子補給済額3百余万円となっている。