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  • 昭和31年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第6 農林省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの


(352)−(745) 公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの

(組織)農林本省 (項)農業施設災害復旧事業費 ほか12科目
(組織)林野庁 (項)山林施設災害復旧事業費 ほか6科目
(組織)水産庁 (項)漁港施設災害復旧事業費 ほか2科目

 地方公共団体および土地改良区等が施行した土地改良、地盤変動対策、林道開設、漁港修築および災害復旧等の工事に対する国庫補助金または国庫負担金(以下「国庫補助金」という。)は、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等の根拠法規に基いて交付されるものであるが、本院において、昭和32年中、その経理および工事施行の状況について、全国の工事現場41,056箇所のうち北海道ほか39府県につきその9%に相当する3,720箇所を実地に検査したところ、関係当局の指導監督の強化および事業主体の自覚等により漸次改善の跡が認められ道府県のしゅん功検査の結果6千余の工事について約6億円相当の手直しおよび減額等の処置を講じている状況で、不当事項は前年度に比べて相当減少したが、なお、設計に対し工事の出来高が不足しているもの、設計が過大なもの、工事の施行が粗漏で補助の目的を達していないもの、災害復旧とは認められない改良工事を施行しているものなどがあり、国庫補助金を除外すべきことの判明したものが、北海道ほか33府県において、除外すべき額1工事10万円以上のものをあげると733工事265,634,182円あり、これを事項別に分類して示すと次表(折込)のとおりである。

類別
道府県名
改良その他国庫負担の対象としてはならない工事 工事の施工が粗漏で目的を達していないもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの 事業主体が正当な自己負担をしていないもの 合計
類別
道府県名
工事の施工が粗漏で目的を達していないもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの その他
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

北海道

1
千円
990

4
千円
2,332

9
千円
2,418

3
千円
867

千円

8
千円
2,936

13
千円
5,454

18
千円
7,649

39
千円
16,041

56
千円
22,651

北海道
青森県



1 107 1 437 3 6,150 5 956 2 1,573 4 499 14 9,181 16 9,725 青森県
宮城〃 1 311 1 160 1 130



4 748 1 464 1 247 6 1,459 9 2,062 宮城〃
秋田〃



4 844

3 1,910 10 1,881 5 958 10 2,712 28 7,463 32 8,307 秋田〃
福島〃 1 3,773

1 136

2 1,795 5 786

4 4,610 11 7,192 13 11,102 福島〃
茨城〃 1 1,530

3 911



3 391 4 3,470

7 3,861 11 6,303 茨城〃
栃木〃







1 124 5 706 4 830 9 2,071 19 3,733 19 3,733 栃木〃
神奈川〃

1 115 3 486

1 141 1 200



2 341 6 943 神奈川〃
新潟〃

2 570





2 273 1 227 14 8,802 17 9,303 19 9,873 新潟〃
富山〃

1 568













1 568 富山〃
石川〃



4 733

4 1,213 3 465 6 991 3 784 16 3,455 20 4,189 石川〃
福井〃

2 2,137





8 1,982 2 269 1 864 11 3,116 13 5,254 福井〃
山梨〃 1 5,435

1 246



10 2,903 2 271 5 1,212 17 4,386 19 10,069 山梨〃
岐阜〃









8 1,989

5 1,189 13 3,179 13 3,179 岐阜〃
静岡〃

1 836 1 113

1 834 1 652 1 390 3 1,067 6 2,946 8 3,895 静岡〃
愛知〃



8 1,347

1 956 5 2,734 5 3,658 11 3,838 22 11,188 30 12,536 愛知〃
三重〃

1 175 6 1,019 7 1,433 3 1,251 14 3,005 13 6,745 10 1,926 40 12,929 54 15,557 三重〃
滋賀〃









9 1,501 5 2,014 10 2,193 24 5,709 24 5,709 滋賀〃
京都府

2 1,209 8 1,604

1 376 15 4,693 14 10,956 13 4,417 43 20,443 53 23,258 京都府
大阪〃



3 336



1 119 1 160 1 376 3 656 6 993 大阪〃
兵庫県

1 333 2 335



3 2,436

7 1,677 10 4,113 13 4,781 兵庫県
奈良〃



2 293

2 335 2 407

2 319 6 1,062 8 1,355 奈良〃
和歌山〃



9 1,763 1 306 1 708 21 7,939 6 2,769 26 5,925 54 17,343 64 19,412 和歌山〃
鳥取〃



1 272



3 491 6 1,478 3 588 12 2,558 13 2,831 鳥取〃
島根〃

2 851 3 574



13 3,249 8 3,045 6 2,334 27 8,629 32 10,055 島根〃
広島〃

1 384 7 1,632

1 575 2 723



3 1,298 11 3,315 広島〃
山口〃

2 873 4 758



2 1,631



2 1,631 8 3,264 山口〃
愛媛〃 2 2,846 1 310 6 1,177

2 505 12 2,747 1 263 10 1,653 25 5,168 34 9,502 愛媛〃
高知〃

2 409 2 698



4 684 4 1,922 2 686 10 3,293 14 4,401 高知〃
福岡〃

1 298 3 688 1 648 2 987 3 1,292 4 2,347 13 5,169 22 9,796 27 11,431 福岡〃
佐賀〃 3 2,697 1 450 3 626



7 1,997 15 8,157

22 10,155 29 13,929 佐賀〃
大分〃 1 4,800 2 1,976 4 612



4 742 2 506 5 1,799 11 3,048 18 10,437 大分〃
宮崎〃

7 2,287 7 1,398 1 120

3 1,394 1 130 7 2,084 11 3,609 26 7,414 宮崎〃
鹿児島〃

3 761 2 220



1 107 2 447 6 2,047 9 2,602 14 3,584 鹿児島〃
合計 11 22,385 38 17,041 108 21,492 14 3,813 28 17,866 197 54,775 128 59,506 209 68,752 562 200,901 733 265,634 合計

 しかして、従来検査報告において指摘したと同様正当な自己負担をしていないものが、右733工事のうち76.6%に相当する562工事200,901,143円あり、そのうちには国庫補助金相当額を下回る金額で工事を施行し国庫補助金に剰余を生じたこととなっているものも見受けられる状況である。

 検査の結果明らかとなった不当事項のうち国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のもの394件217,811,446円を農業施設、山林施設および漁港施設に分類してあげると別表第3のとおりで、このように発見される不当工事の発生原因はすでに毎年度の検査報告に掲記したとおりであるが、とくに土地改良区等が施行した区画整理、客土、暗きょ排水等の土地改良事業において、直営人夫出役の実績が明確を欠いているものが多く、また、一部の事業主体においては工事の施行について技術および監督の能力が十分でないのに大規模の事業を施行しているため、不誠実な業者により工事を手抜きされているものなどがあるから一層指導監督の徹底を期する要があると認められる。

(1) 農業施設

(352)−(688)  農業施設について地方公共団体、土地改良区および農業協同組合等が施行する土地改良、地盤変動対策、災害復旧工事等に対する実地検査は、全国都道府県の工事現場32,762箇所のうち北海道ほか39府県の8.2%に相当する2,688箇所、工事費13,230,977,265円(国庫補助金7,188,233,584円)について実施したが、その結果は、水路、堤とう、農道等の石垣工事における胴込、裏込量が設計に比べ不足していたり、ため池のはがね土のつき固めが不十分なものがあり、また、頭首工工事におけるコンクリートの配合もしくは打設量または農地復旧工事における排土量、客土量もしくはその運般距離が設計と相違していたり、工事の手抜きがはなはだしく完成後間もないのに崩壊していて補助の目的を達していないものなどがあったため、国庫補助金を除外すべき額1工事10万円以上のものが検査済工事数の23.4%に相当する628箇所に上り、その額220,712,485円に達した。しかも、そのうちには、事業主体において工事費の経理に関し事実に合致しない書類を作成して正当な自己負担を免かれていることの判明したものが、82%に相当する515箇所185,154,625円の多額に上っている状況である。
 いま、農業施設関係の不当工事のうち国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると、別表第3(1)のとおり337件179,513,356円になっており、その代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第3(1)に掲記した番号を示す。)。

〔1〕 青森県北津軽郡金木町で受益者の共同施行により8,480,000円(国庫補助金5,512,000円)で施行した安次郎溜池26年災害復旧は、堤とう46メートルを復旧するもので、堤体および側壁はコンクリート1,118立米で施行したこととしているが、実際は配合の粗悪な玉石コンクリートで施行し、つき固めも不十分なため、すでに堤体の一部から漏水し、水たたきの一部も破損しているなど工事の施行が著しく粗漏となっている。なお、工事は6,882,127円で施行されていて事業主体はその負担したとしている2,968,000円のうち1,597,873円を負担していない。(粗漏工事、事業主体負担不足)(384)

〔2〕 福島県が7,276,266円(国庫補助金4,730,000円)で施行した保原町東根川水路31年災害復旧は、31年7月の水害により被災した排水路延長556メートルの土工および護岸コンクリート擁壁を施行したものであるが、右水路は別途同県が県営かんがい排水補助事業として28年度以降施行中のもので、本件箇所は災害前に土工工事が完了し31年度以降においてコンクリート擁壁を施行する予定のものであるから、災害復旧は土工工事だけを対象とすべきものである。(改良工事その他補助の対象としてはならないもの)(406)

〔3〕 愛知県西尾市(旧福地村)福地土地改良区が52,652,000円(国庫補助金15,795,600円)で施行した福地地区区画整理は、農地948町の道路12,055メートル、水路板さく護岸28,326メートル、整地125町等を施行するもので、工事に使用した資材のうち砂利281立米、木材167石、ヒューム管280本は新規に購入したこととしているが、実際は既往年度補助工事で精算済の残材を使用しているものであるから本件工事費にことさら積算する要はなかったものであり、また、板さく護岸のくい木1,578石を使用したこととしているが、実際は517石を使用したにすぎないなどのため工事は43,983,000円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている36,856,400円のうち8,669,000円を負担していない。(設計過大、事業主体負担不足)(471)

〔4〕 三重県上野市が7,786,000円(国庫補助金7,007,400円)で施行した服部農地28年災害復旧は、農地11町を復旧するもので、排土29,345立米、客土14,384立米を施行したこととしているが、実際は排土19,641立米、客土12,888立米を施行しただけで足り、工事は国庫補助金を下回る5,721,000円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている778,600円を全く負担していないばかりでなく1,286,400円の剰余を生じたこととなっている。
 右のほか、同市が施行した水路、ため池等28年災害復旧8工事15,370,000円(国庫補助金13,833,000円)においても正当な自己負担をしないで12,353,000円で施行し、工事の出来高が不足していたなどのため減額を要する国庫補助金が総額2,715,300円に上っている。(設計過大、出来高不足、事業主体負担不足)(485−490)

〔5〕 京都府宇治市巨椋池土地改良区が58,000,000円(国庫補助金52,200,000円)で施行した大黒農地28年災害復旧は、農地115町1反を復旧するもので、客土14,780立米は1,500メートルから4,000メートル運搬したこととしているが、実際は700メートルから1,200メートル運搬すれば足りたため工事は54,530,000円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている5,800,000円のうち3,470,000円を負担していない。
 右のほか、同土地改良区が施行した28年災害水路復旧5工事78,131,000円(国庫補助金70,317,900円)においても正当な自己負担をしないで73,117,000円で施行し、工事の出来高が不足していたなどのため減額を要する国庫補助金が総額4,512,600円に上っている。(設計過大、出来高不足、事業主体負担不足)(522−524)

〔6〕 兵庫県川西市川西農業協同組合が13,679,000円(国庫補助金12,310,900円)で施行した高木頭首工28年災害復旧は、井ぜき130メートルを復旧するもので、えん体続わく131組および水たたき等木工沈床159組の中詰は玉石コンクリートブロック865立米を施行したこととしているが、実際は中詰は配合の粗悪なもので施行しているにすぎないなどのため2,350,000円が出来高不足となっている。なお、工事は13,185,000円で施行されていて事業主体はその負担したとしている1,368,100円のうち494,000円を負担していない。(出来高不足、事業主体負担不足)(554)

(2) 山林施設

(689)−(708)  山林施設について、地方公共団体および森林組合が施行する林道の開設および災害復旧ならびに崩壊地復旧の治山工事に対する実地検査は、全国都道府県の工事現場6,345箇所のうち9%に相当する566箇所工事費1,964,736,772円(国庫補助金1,214,307,867円)について実施したが、その結果は、林道工事において、土砂の切盛量、石垣の面積、胴込量、裏込量が設計に比べて不足していたり、岩石等の切盛量を過大に見込んでいたものがあり、また、治山のえん堤工事においてコンクリートの配合比または打設量が設計と相違しているなどのため、国庫補助金を除外すべき額1工事10万円以上のものが検査済工事数の9.6%に相当する54箇所に上り、その額23,335,555円に達した。しかも、事業主体において工事費の経理に関し事実に合致しない書類を作成して正当な自己負担を免かれていることの判明したものが、右のうち37%に相当する20箇所4,420,969円になっている状況である。
 いま、山林施設関係の不当工事のうち、国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第3(2)のとおり20件18,678,189円になっており、その代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第3(2)に掲記した番号を示す。)。

〔1〕 福井県が2,530,000円(国庫補助金1,897,500円)で施行した高浜町九頭竜川流域関屋川崩壊地復旧は、砂防えん堤41メートルを施行するもので、えん体は玉石コンクリートで施行したこととしているが、実際は粗石を中詰としこれを厚さ25センチメートル程度のコンクリートで被覆したにすぎないため数箇所から漏水している状況で工事の施行が著しく粗漏である。(粗漏工事)(692)

〔2〕 鳥取県が24,150,030円(国庫補助金12,793,022円)で施行した海岸砂地造林および崩壊地復旧6工事は、海岸砂地造林80町およびえん堤1箇所を築造するもので、鳥取市森林組合ほか2町村1組合に請け負わせ施行したものであるが、組合等は工事を設計額を下回る20,583,545円で施行し、剰余を生じた3,566,485円のうちから県負担金の一部に充てるため工事前に県から寄付させられた2,912,000円を回収していた。
 なお、右のほか、同県が施行した崩壊地復旧15工事21,108,550円(国庫補助金15,831,411円)においても前項と同様な方法により工事を請け負った組合では18,448,305円で施行していた。(設計過大、事業主体負担不足)(697−700)

(3) 漁港施設

(709−745)  漁港施設について、地方公共団体および漁業協同組合が施行する災害復旧、漁港修築工事等に対する実地検査は、北海道ほか38都府県の工事現場1,949箇所のうち24%に相当する466箇所工事費1,940,155,778円(国庫補助金1,272,615,103円)について実施したが、その結果は、防波堤の張石、捨石等の規格または船揚場、護岸のコンクリート量が設計に比べて相違していたり、在石の使用量を過少に見込んでいたり、石材の単価を過大に見積っていたり、または工事の施行が粗漏で、補助の目的を達していないものなどがあったため、国庫補助金を除外すべき額1工事10万円以上のものが検査済工事数の10.9%に相当する51箇所に上り、その額21,586,142円に達した。しかも、事業主体において、工事費の経理に関し事実に合致しない書類を作成して正当な自己負担を免かれていることの判明したものが、右のうち52.9%に相当する27箇所11,325,549円になっている。
 いま、漁港施設関係の不当工事のうち、国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると、別表第3(3)のとおり37件19,619,901円になっており、その代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第3(3)に掲記した番号を示す。)。

〔1〕 北海道檜山郡上の国村が1,666,000円(国庫負担金1,332,800円)で施行した石崎漁港30年災害復旧は、船揚場27メートルを復旧するもので、から石張288平米は控35センチメートルの雑石を使用し裏込ぐり石121立米、基礎根掘457立米を施行したこととしているが、実際は控10センチメートル程度の雑石を在来地盤に敷き並べたにすぎず、基礎根掘はほとんど施行していないなど工事の施行が粗漏で災害復旧の目的を達していない。(粗漏工事)(709)

〔2〕 佐賀県伊万里市(旧波多津村)が5,793,000円(国庫負担金5,294,800円)で施行した波多津漁港28年災害復旧は、護岸105メートルを復旧するもので、護岸の裏込ぐり石380立米は4キロメートル、盛土1,699立米は200メートルの地点から運搬し、また、被覆捨石1,063立米は海上運搬のほかに40メートルの小運搬を要したこととしているが、実際は裏込ぐり石および盛土は現場付近のもので施行しており、また、捨石は小運搬の必要がなかったなどのため工事は国庫負担金を下回る4,874,800円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている498,200円を全く負担していないばかりでなく420,000円の剰余を生じたこととなっている。(設計過大、事業主体負担不足)(738)