(1128) 農林漁業資金の貸付後の管理が不十分なもの
農林漁業金融公庫(農林漁業資金融通特別会計から承継した分を含む。)が直接または業務委託金融機関を通じて貸し付けた農林漁業資金のうち、本院においては、昭和32年3月から9月までの間に、4070件126億9千余万円の貸付金について実地に調査した結果、前年度調査未了であったものを含め、管理が不十分で繰上償還等の処理を要するものが797件834,439,554円あり、このうち同公庫では32年9月末日までに650件671,467,783円について是正の処置を済ませている。
このような事態が発生しているおもな原因は、同公庫の貸付対象事業に補助金の交付があったときは一定額を繰上償還させることとなっているのに、委託金融機関と補助金を交付する地方公共団体との連絡が緊密を欠いているものがあり、同公庫はこれが是正について農林省と協力して努力しているが、まだその効果があがっていないこと、内部監査および貸付先に対する指導が必ずしも十分でないこと、委託金融機関の事実の確認についての努力が十分でなく、いまだに貸付先の実査が励行されていないことによるものと認められる。
なお、右のほか本院の調査したところによると、貸付先における貸付対象事業についての経理が全く不明であったり、または事実と相違した経理が行われていたりして事業の実態の確認が困難であるものが多く、なお本院において調査中のものもあるが、このような傾向を是正するため今後十分の指導が望ましい。
いま、前記の農林漁業資金の貸付後の管理が不十分と認められたもののうちまだ是正の処置が済んでいないおもなものをあげると、次のとおりである。
(1) 受領済補助金相当額の繰上償還をさせていないもの
農林中央金庫ほか5箇所扱で、27年4月から31年8月までの間に、福井県敦賀市粟野農業協同組合ほか59箇所に対し耕地災害復旧事業等の資金として73件226,700,000円を貸し付けているが、右は、別途国または地方公共団体等から補助金の交付を受けたときはこの補助金相当額を期日前に償還することを条件として貸し付けているのに、すでに補助金が交付済となってもその償還の処理をしないでそのままになっていたものが80,757,274円ある。
(2) 農林漁業金融公庫の業務方法書に規定する貸付の限度をこえる結果となっているもの
農林中央金庫ほか15箇所扱で、26年10月から32年1月までの間に、秋田県北秋田郡矢立農業協同組合ほか46箇所に対し水路災害復旧事業等の資金として60件308,300,000円を貸し付けているが、このうち借受人が当初申請どおりの工事を施行しなかったりまたは実際の工事費が申請額より少額で完成したなどのため、同公庫の業務方法書に規定する貸付の限度をこえる結果となっていたものが64,298,721円ある。
(3) 貸付の目的以外に使用されているもの
農林中央金庫扱で、27年2月および30年5月、愛媛県川之江市川之江漁業協同組合ほか1箇所に対し水産その他施設災害復旧事業等の資金として2件12,380,000円を貸し付けているが、いわし加工場等の災害復旧資金として貸し付けたのに運輸会社の設備資金に使用されるなど貸付の目的以外の資金に使用されていたものが3,834,825円ある。