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  • 昭和33年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項|
  • 第11 建設省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 工事

砂防えん堤の築造にあたり施行方法が適切でなかったため工事の目的を達していないもの


(333) 砂防えん堤の築造にあたり施行方法が適切でなかったため工事の目的を達していないもの

 (組織)建設本省 (項)砂防事業費

 北陸地方建設局で、昭和28年度から33年度までの間に、直営により砂防えん堤工事を工事費46,724,265円(うち32年度以前の分38,338,123円)で富山県上新川郡大山町本宮字瀬戸蔵地先に施行しているが、施行の方法が適切を欠いたため出水により本えん堤の大部分が倒壊または傾斜するにいたっている。

 右は、常願寺川と支川称名川との合流点に170,000立米を貯砂する計画で、まず本えん堤(堤長212メートル、堤高7メートル、築立立積8,892立米)を28年度に着工し、副えん堤(堤長205.5メートル、堤高5メートル、築立立積5,382立米)についてはその床掘量を少なくするため本えん堤水通し部の流水により直下流部の河床が低下するのを待って施行することとして32年度に着工し、本えん堤は33年度に完成し、副えん堤は同年度までに右岸取付部30.5メートル、1,101立米の築立を施行したところ、34年7月11日毎秒1,300立米の出水により本えん堤中央部において急激に河床が低下し、延長92メートルが倒壊または傾斜し、その後同月24日の出水によりさらに被害が増加し、結局、延長115メートルが倒壊または傾斜したものである。

 しかして、本えん堤の施行箇所は岩盤が深いためえん堤の基礎が岩盤に達しない設計となっており、しかも、本川と支川とが合流し水流が激突する所でその川幅は200メートルをこえ計画流量も毎秒1,800立米となっている状況であるから、えん堤の築造にあたっては河床の洗掘についてとくに注意を要する箇所であり、現に、当局の調査によれば一部立ち上った本えん堤の直下流部における河床は中程度の出水によっても変動が激しく、32年には堤敷から90センチメートルまで洗掘された箇所を生じており、また、本えん堤の立上りに伴い落差が大となればそれだけ洗掘も増大する危険があるから副えん堤を併行的に施行して本えん堤の安全をはかることが必要であったと認められるのに、本えん堤の築立を終了してから2年後に副えん堤を完成することとして工事を施行したため、結局、出水により本えん堤の大部分が倒壊または傾斜し復旧費見込額約5900万円を要するにいたったものである。