(工事勘定) (項)電化設備費
日本国有鉄道盛岡工事局で、昭和34年2月、指名競争入札後の随意契約により仙建工業株式会社に東北本線久田野、福島間小継電器室その他工事を10,700,000円(ほかに支給材料136,800円)で請け負わせ施行しているが、工期を失し継電器室の設計を特殊構造としたため、工事費約440万円が不経済となっていると認められる。
右工事は、東京電気工事局の委託により、東北本線の電化に伴い必要となった自動信号機用の継電器類を収容するための建物61むね、延154.5平米(2.5平米のもの59むね、3.5平米のもの2むね)とその付帯設備を施設するものであり、建物構造をブロック基礎、鉄骨造り、インシュライト壁、石綿波型スレートぶきの特殊組立式構造とし、また、積算にあたり所要材料を過大に見込んでいるなどのため、その建物の工事費は10,611,581円で平米当り68,683円となっているが、本件工事と同一目的の小継電器室で高崎鉄道管理局が東京電気工事局の委託により33年12月から34年3月までの間に本件工事区間に隣接する黒磯、久田野間に20むね延56平米を施行したものは、コンクリートブロック造りで平米当り33,474円となっており、工事費において著しく開差を生じている。
しかして、両工事とも東京電気工事局が委託したのは33年10月で、施行期限は34年3月、構造はブロック造りとする条件となっており、また、本施設は1むね2.5平米または3.5平米の画一的な建物であって、構造も間仕切のない簡易な小屋程度であるから設計にさほど手数を要するものとも認められないのに、盛岡工事局では受託後12月中旬、現地の実測調査を完了しただけで34年1月中旬になってようやく設計に着手したため工期を失し、ブロック造りに比べて断熱性、壁強度等において格別すぐれているとも認められない高価な特殊組立式構造とし、その積算にあたっても所要材料を過大に見込んでいることにより、工事費において、高崎鉄道管理局が施行した工事に比べて前記のように著しい開差を生じている。
いま、仮に本件建物を高崎鉄道管理局と同程度のブロック造りにより施行したとすれば、その工事費は約578万円で足りる計算となり、支給セメントの増加額約40万円を差し引いても約440万円は節減することができたものである。